流れ星のリレー
「今年こそ、素敵な彼とめぐり会えますように」
雨上がりのビル街で、若い女性が願いをささげました。流れ星はその願いを受けとって、南の空へ飛んでいきます。
「明日は大漁にしてくれよ!」
漁船の上で寝そべっていた、真っ黒に日焼けした若者が願いをささげました。流れ星はその願いを受けとって、今度は東の空へ飛んでいきます。
「元気な赤ちゃんが授かりますように……!」
大草原にポツンとある家の窓から、大きなお腹に手を当てて、妊婦さんが願いをささげました。流れ星はその願いを受けとって、今度は西の空へ飛んでいきます。
「さつきちゃんと、仲直りできますように」
泣きはらした目をした女の子が、塾の帰り道に願いをささげました。流れ星はその願いを受けとって、今度は北の空へ飛んでいきます。
「……死にたく……ない……」
戦場で血だらけになり、もうろうとしている兵士が、願いをささげました。流れ星はその願いを受けとって、地平線のはしへ消えていきました。そして兵士の意識もだんだんと消えていきました。
「……流れ星なんかに祈ったところで、どうにもなりゃしねぇよ。おれの人生なんか」
中身が空になったお酒のビンを片手に持って、よろよろとおじいさんが雪の町を歩いていきます。手がふるえて、ゴホゴホとせきこみ、口から血が飛び散ります。流れ星はただただ静かに、雪の町を通り過ぎていきました。
「あっ、流れ星だ!」
小さな女の子の声がして、流れ星のスピードがわずかにゆるやかになりました。
「本当ね、ミナちゃん、お祈りしないと」
お母さんらしき人の声も聞こえてきます。小さな女の子は、元気な声で空に向かってお願いごとをいいました。
「流れ星さん、元気でねー!」
小さな女の子の願いを受けとり、流れ星はきらきらと輝きを増しました。そしてそのまま、ゆっくりと夜空のはしへ消えていきました。
今日もまた、流れ星は飛んでいきます。たくさんの人の願いを受けとり、たくさんの流れ星たちがバトンをつないでいくのです。お願いごとがかなうように、流れ星も祈りながら。
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