第七話
謝罪の二話投稿
――迷いの森、中腹部――
焚火を囲みながらこんばんは。全世界の短パンニーソ好きの諸君。俺だ。
熊を倒した後、気を失った女冒険者を引きずって何とか見つけた洞窟に逃げ込んで、焚火の準備をしていたらあっという間に日が暮れた。
水や保存食、火打石とかがデカいリュックの中に入っていて助かった。そうじゃなかったら今頃真っ暗な中でひもじい思いをしていただろう。
「さてと。この後はどうしたものかねぇ」
洞窟の外には満天の星空。空気が澄んでいるのか、空が明るく見える。
短パンニーソ座はどこにあるのだろうか。
「うーん…………、んぁぁ、ここは……?」
「やっと目を覚ましたか。もう夜中だぜ」
「――――ッ!」
しばらくぼうっと周りを見渡していた女冒険者だったが、俺が居ると分かると急に飛び起きる。
「落ち着いていこうぜ。こっちは非力な一般人で武器もないんだ」
「……説明くらいあるんでしょうね」
「もちろん」
・・・少年説明中・・・
「……へー異世界から転移してきたと」
「そうそう。で、初めての実戦で杖持ったゴブリンにしてやられた」
「ゴブリンメイジね。ゴブリンの上位種よ。転移ってことは空間魔法か。運がないわね」
お互いに少し距離を取りながら焚火を囲む。ついでに水と非常食も少し分けてやった。
今の俺にはこの森を単独で移動するには少し酷だ。彼女の協力がいる。
「俺のほうの経緯はこんなところだ。あんたは?」
「あんたじゃないわ。メイリアよ。Bランク冒険者。依頼で来た」
「そうか。じゃあ、メイリア、説明したように俺は異邦人だ。このあたりのことがさっぱりでな。教えてくれないか?」
「質問がざっくりしすぎ。何が聞きたいのよ」
「じゃあまずは地理に関して。ここってどこ?」
「Sランクダンジョン”迷いの森”中腹部。迷いの森は東大陸最大のダンジョンよ。大陸のほぼ中央部に位置するわ」
大陸の中央部か。良くも悪くもないってところだな。
「そんなことも知らないの? まあ、いいか。それで、この短パンニーソなんだけど、どういうことよ」
「今度はそっちがざっくりしすぎだな。でも、履き心地はいいだろ。自慢の一品なんだぜ」
短時間で生み出したにしてはいい出来だと自慢できる。履き心地だけではなく高い伸縮性と通気性、それでいて破れにくさも両立しているんだ。
やはり冒険者、それも戦闘となれば運動を阻害するなんてことはあってはならないし、運動すれば汗もかく。通気性が悪くてじめっとするなんて許さない。
ついでに言えばギフトもレベルは下がるが4つ付与できたのも初めてだ。
「そうじゃないわよ。この装備、呪われているでしょ!」
「短パンニーソが脱げないだけだろう。些細な問題じゃないか。清潔のギフトもあるんだし、脱がなくても支障はないだろ」
「お風呂とかどうしろっていうのよ!!」
「短パンニーソは常にお前とともにあり続ける。それだけだ」
「こんのっ――ふぅ、落ちつけわたし。こいつはマッドだ。言葉は通じても話は通じない。オーケー、落ち着こう」
「おい、聞こえているぞ」
人の目の前でなんてことを言うのやら。だけど、ここでいきなりキレだすほど馬鹿でもないようだし、まだ話を続ける気もあるだろう。
「聞こえるように言ってんのよ、マッド野郎。はあ、ステータスオープン」
人の前で堂々と言うなぁ。まあそれくらいの性格でないと一人で熊と戦いはしないか。
「あーあ、やっぱり呪われてる。最悪。解呪って高いのよね。それで、呪いの程はっと。オプション―イクイップメント。…………はぁ?」
ステータス確認か?だが、イクイップメント、装備品?
「おい、スタータ表示って装備品も見れるのか。って、おい、おーい」
焚火の向こう側でメイリアが固まっている。正確にはステータスを表示しているであろう虚空と短パンニーソを見比べるように首だけ動かしている。
ふむ、ステータス画面を見て短パンニーソの凄さに気が付いたのか?
「な、なによコレ……プラス装備……しかも10なんて、神話レベルの伝説の装備じゃないの。しかもそれが呪われてるって。解呪できない……?清潔:10ってどういうことよ。え、マジで風呂に入らなくてもいいレベルなの?いや、でも女としてそれはアウトよ……」
「なぁ、素晴らしいだろう。高レベルのギフト、最高峰の着心地。やはり短パンニーソこそ至高にして正義なのだ」
「この野郎……だけど冒険者としてこのギフトは喉から手が出るほどなのも事実……」
「解呪なんて必要あるまい。脱ぐ必要がないのだから」
「……確かに……って、落ちつけわたし!一生このままだぞ。ババアになってまで短パンニーソなんだぞ!これは呪いによる精神汚染だ。気をしっかり持てわたし!」
「汚染だなんて心外な。メイリアは今、短パンニーソの素晴らしさに気が付き、短パンニーソの扉を開いただけだ。忌避するものではない。受け入れよ。心を開放するのだ」
「ええい、この話はここまでよ! ほかに聞きたいことは」
ずいぶんと強引な話題転換だな。まあ、短パンニーソの道は険しい。急かすものではない。
「じゃあ、このダンジョンからの脱出方法を教えてくれ」
「そうね、あんたまともな方法で入ったんじゃないんだっけ。このダンジョンにはいくつかの転移門があるの。そこで自分の魔力を登録すると使えるようになる。ダンジョンの入り口にも同じ門があるからどっかで転移門を見つければ出られるわ」
「俺は、どこの転移門も触っていないけど?」
「体が触れ合っていれば同行できるわ」
「了解した。とりあえず知っておきたいことは以上だ」
「そう。で、あんたどうするのよ」
「メイリアも流石にダンジョンを出るんだろう。ついて行くさ」
「あんたには助けられた恩がある。出口までは案内するわ」
「ありがとうな」
メイリアは返事をせずに俺に背を向けて横になる。
異世界三日目にして迷子か。異世界に来た時点で似たようなものだけど。
「やるしかないか。……で、見張りとか火の番って誰がやるの?」
良く言えばしぶとい
悪く言えば遠慮がない
それがメイリアという女性。良くも悪くも冒険者。