第六話
予約投稿の設定を忘れるという蛮行
投稿の確認を怠るという怠慢
全ての短パンニーソに謝罪するんで許しでください orz
――異世界上空3000m地点――
さて、全異世界の短パンニーソ好きの諸君。俺だ。
俺が現在落下中である経緯に関してはおおよそ理解していただけただろうか。まあ、短パンニーソの素晴らしさが少しでも伝わっていれば幸いだ。
問題は現在進行形で進んでいる現実だ。
パラシュートはなし。あるのはデカいリュックに入った回復薬やら予備の装備やらだけだ。重くはなっても軽くはならない。
とはいえ絶望するにはまだ早い!
「短パンニーソ以外を作るのは甚だ遺憾ではるが――服創造!!」
ポンッ
そして素早くキャッチ!
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【名称】普通の呪われたTシャツ
【能力】落下速度操作:5
【解説】普通に呪われたTシャツ。それは望まれずこのように生み出された。誰にも望まれず、ただ使い捨てにされ、忘れ去られるために生み出された。創造主の身勝手に振り回された哀れな存在。
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「まあ、短パンニーソ以外真面目に作る必要もなし。それでは、強制装着!!」
ポンッ
「おおう。呪いのTシャツがいきなり消えたと思ったら代わりに着ていたTシャツが現れたぞ。これ、使用できる距離によってはなかなかえげつないのでは?」
離れているところからでも短パンニーソを履かせられる。街で一瞬すれ違ったあの人にもちゃんと着せることができる。あの子も、あの人も、あのおっさんにも。
有効的に使えるようにしておかねば。
「だが、まずはわが身が第一。うまくいってくれよ。落下速度操作!!」
しばらくすると次第に落下速度が下がっていく。まあ、とりあえずエレベーターくらいでいいか。
「にしても、ほんと、異世界に来たんだなー」
眼下に広がるは広大な密林。空には二つの月があって、地平線の彼方には訳が分からないほどの巨大樹がある。
ついでに言えばなんかトカゲに羽が生えたようなのが空飛んでたり、時折森の木々が押し倒されてたり、ギャースギャースと魔物の声も聞こえてくる。
「さて、この後どうしたもんかなー」
見える範囲に仲間はいなさそうだし。現在位置不明だし。戦闘はできないし。
「なんかないかなーっと」
とりあえずぐるっと見渡してみる。高度もかなり下がってきてはいるが、それでもまだ十分に高い。
で、見渡してみると少し離れたところからうっすらと煙が上がっている。
「煮炊きか、戦闘か、野営の跡か。いずれにせよ当てもない。向かってみるか」
――迷いの森、中腹部、夕方――
「……、あーあ、まずった。どうしようもないわねー」
世界中のイケメン、イケオジのみんなー。迷いの森の中からこんにちわ。
わたしの名前はメイリア。花も恥じらう18歳。Bランク冒険者にして期待の新星です。
わたしは今、東大陸最大の密林であり天然のダンジョン“迷いの森”の中腹に来てます。
お供は二人と一匹がいたんだけど、途中でグリズリーキラーベアーっていうAランクのモンスターとばったり会ってしまって、おやつになっちゃいました。
今は木の洞に逃げ込んだ私を物欲しそうに見つめてきております。わたしってやっぱり罪な女なのね。熊さえも魅了してしまう美しさがあるなんて。
はい、現実逃避です。
だってねぇ。手持ちには低級の回復薬が数本に真っ二つになった愛剣、予備のナイフが一本だけ。どうしろっていうのやら。
「まあ、簡単には死んでやらないわよ。目玉の一個くらいはやってやる」
まあ、腐っても冒険者だしね。いつかはミスって死ぬかもって覚悟はあったし、犬死する気もない。食い下がってやろうじゃないの!
「私の冒険はここからだーーーーー!!!!」
――迷いの森、中腹部、少し離れたところ――
「ふむ、いい死亡フラグだ。80点といったところか」
眼下の森に降り立った後、煙の見えたほうに移動していると盛大な戦闘音が聞こえてきていた。気になって向かってみるとちょうど男二人がでっかい熊のおやつになっている光景に遭遇したわけだ。
まあ、視界の隅にこっそり逃げ出そうとしている女冒険者?がいたわけで、熊がお代わりを求めて襲い掛かった後をゆっくりとついてきて、今に至る。
「にしても、すごいな。この森、上から見た限り地平線の彼方まで続いていたからてっきり現地の部族とかに合うかと思ったら、割としっかりと武装しているな」
てっきり半裸の男と出会うのかと思ったんだが、まあいい意味で裏切られた。
いや、未開の部族に短パンニーソの素晴らしさを教えていくのも面白そうではあったんだがな。短パンニーソの神殿とか作ってくれそうだし。
「鉄製の装備ってことはそれなりに製鉄技術があるんだろう。街は見えなかったんだが、村の鍛冶屋で揃えられるもんなのか?」
今隠れている木陰の向こうでは少し開けたところで女冒険者と熊が文字道理の死闘を繰り広げている。とはいえ女冒険者のほうが劣勢のようで焦っているように見える。
「ここであの女冒険者に死なれると貴重な情報源を失うことになる。この世界で生きるにせよ、地球に帰るにせよ、街に向かい、クラスメイトと合流しないとな」
仕方ない。助けよう。
なーに、短パンニーソは偉大で寛容だ。このくらいの事態なら短パンニーソで切り抜けられるだろう。
――迷いの森、中腹部、熊との戯れ――
「おりゃあああ。クロススラッシュ!!」
でも手ごたえがなー。毛皮のせいで真面にダメージが入ってないんだよねー。そもそもグリズリーキラーベアーの毛皮って末端価格で金貨10枚、状態次第ではその数倍になるほど希少で有用なのよ。その毛皮で出来た防具はなんと金貨50枚。魔鉄製の防具とおんなじくらい固いらしいわ。
わたしはそんなお金ないから着たことないけど。
「せえええいいいい。ピアッシングアッタク!!」
そんな熊相手に金属製のナイフで対抗ってのが土台無理な話よ。っていうかいまだに生きているのが奇跡ね。流石わたし。伊達に期待の新星って呼ばれているわけじゃないのよ!
「しいいいいねえええええ!必殺!!ライトニングラッシュ!!!」
おりゃおりゃおりゃ!!!
死ぬまで攻撃してれば必殺技なんだ!わたしに絡んできた己の不運をあの世で後悔するがいいわ!!
「おーい」
はっはっは、だんだん毛皮が削れてきたわ。この調子なら一週間くらいで倒せるかなー?
はあ、マジかよー。
「おーいってばー」
「なによ!こっちだって忙しいんだけ・・・ど・・・?」
ん?今人の声が聞こえたような?
「おーい、大丈夫か―?」
「大丈夫なわけないでしょーーー!!って、あっぶなーーーー!」
一瞬きを抜いた瞬間に頭上をベアークロ―が通り過ぎていく。ついでに髪の毛が何本か舞っている。うん、当たったら首がもげて頭だけ吹っ飛んでいくわね。
「助けようか―?」
「マジで!?」
「おうよ。強力な装備があるんだが俺じゃ使いこなせない。そっちに渡すから使ってくれー」
はぁ?強力な装備なら自分で使えばいいじゃない。なんでわたしに渡すの。
もしかして訳ありの品とか。
可能性では呪われた武器とかかしら。でも今は手段を選んでいる暇はなし!!
「まっかせなさい。ここで死なないなら何でもするわ!!」
「了解だ。奴の気を30秒ひいてくれ。それで勝てる!」
「30秒ね。やってやろうじゃないの!」
――迷いの森、中腹部――
はじめは俺が短パンニーソに身を包み助けることも考えた。しかしこれには欠点があったんだよな。
俺はいつか真の短パンニーソを作り上げ、それを履いてみたいという野望がある。それはこの異世界に着てからも変わっていない。いや、むしろより強くなっている。
しかし今、俺が短パンニーソを履いてしまうと、真の短パンニーソを作り上げても履くことができなくなってしまう。
短パンニーソを自ら破壊することは許されない。しかし呪われた装備のギフトレベルが10のせいで誰も解呪ができない。
だから俺は真の短パンニーソが出来上がるまで短パンニーソを履く事ができない。
呪いとはかくも恐ろしいものだったのかと実感しているとこなのだ。
さて、彼女からの協力も得られたし、なんでもするって言質も得た。
さあ、短パンニーソの素晴らしさをもってこの窮地を脱しようじゃないか。
「服創造!!」
ポンッ
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【名称】閃光の呪われた短パンニーソ+10
【能力】敏捷性極上昇:9 / 身体強化:8 / 武器強化:6 / 清潔:10
【解説】神をも浄化する執念と執着により創造された呪われし短パンニーソ。履いたら最後、脱げなくなる。しかし最早脱ぐ必要などないのだろう。身にまとう下半身は常に清潔であり、その身は音よりも早く、振るわれた刃は切られたことすら知覚させないのだから
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うっぐうううううおおおおお・・・・
体の芯のほうから何かが抜け落ちていくような感覚だ。ぎぼぢわるい・・・
一日に二回も創造したせいか?
「だが、創ったぞ、必勝の短パンニーソ!受け取れぇい!!強制装着!!」
「は、え、強制? って、なによこれえええええええぇぇぇぇ!」
「なにって、見ての通り短パンニーソだが?さあ、戦ってくれ!君に短パンニーソの加護のあらんことを!!」
「こんなんで戦えるわけ・・・なにこれ、力が湧いてくる!これなら、行けるかもしれない!よし、いいじゃないの、やってやろうじゃないの!あんたがやってくれたのなら今度はわたしの番だ!覚悟しやがれ熊野郎め!!」
うおぉぉぉと雄たけびを上げながら熊に突貫する女冒険者。ふむふむ、これならもう大丈夫そうだ。それにしても距離10mくらい離れてるんだけど、問題なく着せられたな。
手元にあるズボンはポイーってしておいてっと。
「今度こそ必殺!!ライトニングラッシュ!!!」
おお、すげぇ。動きが速すぎて分身しているみたいに残像が残っているぞ。熊のほうも全身から血を流している。もうすぐ終わるかな。
「Gyaaaaaaaaaaaa」
「っしゃああああ!勝ったぞおおおお!!」
地響きを立てて倒れこむ熊。その死体を背に片手をあげて雄たけびを上げる女冒険者。
なんだか人生に一片の悔いも残っていないかのような威風堂々たる姿だ。
「あ、やば……」
ドサリ、鈍い音を立てて女冒険者が倒れる。
「ん?これ、だれが面倒を見るんだ?」
少し残念な美少女が登場
ヒロインとは言っていない。