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恋愛というものは多くの媒体で美化されたり、特別に扱われている事が多い代物だ。
でも、俺に言わせてもらえば、それは冷める事が約束されているただのカイロでしかない。
当然、自分が今抱えているこの感情だって同様で、例えば「これは他の有象無象の偽物とは違う本物だから、けして冷める事はないんだ」なんて幻想を抱く気には到底なれない。
きっと一年後には今ほどの熱は失っているだろうし、五年後にはどこかに捨ててしまっているだろう。
お互い生きてさえいれば五年後もミーアと変わらず友人でいる自信はあるけれど、まだ彼女に恋をしていられる自信はまるでない。
だから、そんな脆弱なものは要らないし、出来る事なら今すぐ自分の中から消してしまいたいとすら願っている。
……ただ、それが出来るなら苦労はしないわけで、それに翻弄されていないのなら、そもそもこんな事を考えてもいないのだ。
迷っているという事は、つまり、心のどこかでこの機会を利用したいと思っているという事。
実際、これは俺にとってかなり都合のいい状況だった。なにせリスクが殆どない。この胸にある感情をどう吐き出したとしても、演技の一言で片付ける事が出来るからだ。
「あ、あの、私はその、即興などは思いつかないので、出来ればレニさまにお任せしたいのですが……」
目の前に佇んでいるミーアが、少し恥ずかしそうにそんな事を言ってくる。今、このタイミングで、悩ましさに拍車をかけてくる。
知られると不味いのに、知って欲しいというジレンマ。
……俺は、本当のところ彼女とどうなりたいんだろう? もう一度、自身の内に問いかけてみる。
恋人になりたい? それとも今のまま友人を続けていきたい?
頭の中で出した答えに、変化はない。むしろ、ミーアの嫌悪を見たことで、それはより強固になったと言ってもいいだろう。
でも、その理性に反発するように、リスクがない今だからこそ――これが、きっと最初で最後の機会になるかもしれないと判っているからこそ、せめて一度くらいは伝えておきたいという気持ちが、それを上回った。上回ってしまった。
なら、グダグダ考えるのは、もう止めだ。これ以上黙っていてもミーアが不安になるだけだし、リッセの案に乗る事にする。
迫真の演技にしか見えない、告白をしよう。
どうせ最後に嘘になる自己満足だけど、それでも彼女がどんな反応をするのか、それをどう受け取ってくれるのかを、知りたいから。
「……わかった。私に任せて」
そう、ミーアの言葉に頷いてから、俺は深呼吸を一つして――
次回は四日後に投稿予定です。よろしければ、また読んでやってください。




