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第3話 森に囚われた魔導士 その3

 「ありがとう、それじゃあ私たちは集落に戻るから、お疲れ様」


 「、、、、、、、、、、、、、、、、、」


 「、、、、、、、、なんだ人間の娘よ、じろじろ見るな」



 何故かはわからなかったが不意に顔を見たら懐かしく感じてしまい、どうやらじろじろ見てしまっていたようだ。


 彼とは初めて、しかも滅多にエルフなど見ることはできないので顔を見たのならわかるはずなのに、微妙なところで思い出せない。



 「い、いえ、ごめんさない、、、、、、、どこかで見たことがあるような顔だったから」


 「エルフは似た顔の者が多い、ただの見間違いだ」



 エルフは美男美女が多いので、たまに顔やその部位が似通ってしまうことがあるらしい。彼は種族の中でも身長は高めで私よりは高い。私は168㎝ぐらいで彼に至っては179㎝はあるように見えるし、普通より髪は少し短めではあるけど。



 「そ、そうですよね、、、、、、、」


 「ほらほら、さっさと行くよ」



 パルスィに腕を掴まれて引っ張られる、しかも見かけによらず意外と力があって少し痛い。



 「ああ!!わかりましたから、あまり引っ張らないでください!!」


 (どうしてかしら、彼の顔を知っている気がするわ、でもいったいどこで、、、、、、)



 そんなことを思いながら彼らを置いてパルスィに引っ張られながら集落に向かった。


 そういえばさっきの集団のリーダーのエルフ、名前を聞き忘れてしまいましたが、まあ今の状況で重要でもなそうですし、このままでいいでしょう。




 私たちが立ち去った後、隊長のエルフは何かが気になったのか黙って考えていた。



 「、、、、、、、」


 「隊長?どうかしましたか?ぼぅっとして」


 「、、、、、、、いや、これは勘なのだが、私は彼女を知っている気がするのだ」



 どうやら隊長の部下のエルフも同じことを考えていたようで驚いていた。



 「え?隊長もですか!!自分もそう思います!!」


 「お前もか?んん、しかしなぜ知っている気がするのかがわからん」


 「そうですよねー、不思議なこともあるもんですね」



  彼らが考え込んでいることを知らないまま、私とパルスィは森の集落へと再び歩き出していった。







 やっと集落に着いたのは良かったが、夜中の時間になっているため誰も出歩いていなかった。そこへ自慢の集落の感想を聞きたいらしく少し興奮気味になって聞いてきた。



 「はい、ここが私たちの集落です、感想は?」


 「か、感想?そうね、、、、、、、、とても発展していて穏やかな場所で素敵ですね、見た感じでは」


 「ふ、ふ、ふ、そうでしょう、もっと言ってもいいよ」

 

 「もう思い浮かばないわよ」


 

 さすがに集落を見ただけでそこまでお世辞は出てこなかったので若干ツッコミ気味で返してみた。満足したのかパルスィは歩きだして家まで案内してくれる。


 集落の規模のせいかあまり周囲の明かりが少ないのでよく見えない。



 「それじゃあ予定通り私の家に行こ、それで話は明日ってことで」


 「ええ、それでいいわ、ありがとう」



 気になることは明日という事でパルスィの家に向かっているのだが、二人暮らししている母親について尋ねてみることにした。



 「、、、、、、、、ところでなんだけど、いいかしら」


 「ん?なに?」



 パルスィは振り返ることなく自身の母親について歩きながら答えてくれた。



 「えーと、、、、、あなたのお母さんってどんな人?怖い人?」


 「基本穏やかな人だよ、怒らなければ」


 「そ、そう、、、、怒らなければね、ならよかったわ、、、」


 「でも人間のあなたを連れてきたから怒られるかも」



 全然よくなかった。


 よく考えればこの森には人間がいないわけなのに、私が入ってきたから実際どうなるのか見当もつかない。だが、これから会うパルスィの親は私についてパルスィを怒るかも知れない。こうなったらもう当たって砕けろ精神で挑んでみせます。


 なんてことを思っているとパルスィの家の玄関まで来ていた。



 「ただいまー、今帰ったよー」


 「あ!!やっと帰ってきた!!いつもより帰りが遅いから心配してたのよ、まったく」



 そこにはエルフの女性が椅子に座って自分の娘のパルスィが帰ってくるのを待っていたみたい。すぐに立ち上がって心配そうにしていた。


 私も早くうちに帰ってお母さまやみんなに会いたくなってしまったわ。



 「ごめんなさい、ちょっと出会いがありまして」


 「出会い?この森で?」


 「入ってきていいよー」



 パルスィがそういうと私は意を決して玄関の扉を開けて挨拶した。



 「お邪魔いたします」


 「あら!!人間の女の子じゃない!!いったいどうしたのその娘」


 「悪い人に追われて森に入って迷子になってた」



 彼女の母親は私の身なりを見て納得してくれてみたい。正直人間だからと攻撃されると思って内心ひやひやしていた。



 「あらあらどうやらそうみたいね、でも追われて森に入ったとしても普通は入れないわ」


 「私もそれについてはわかっていません」


 「それであなたのお名前は?」


 「私はイリス・アルフオンと申します」


 「イリスちゃんね、私はパルスィの母親でヴィネッタっていうの、どうぞよろしく」



 差し出された手を握って握手した、最初はかなり怖いイメージをしていたがそんな人ではなく、寛大な心の持ち主だというのを直感で感じた。



 「ところでパルスィ、訳ありイリスちゃんをうちに泊めるために連れてきたんでしょ?」


 「そういうことです、もしかしてダメ?」


 「そんなことないわよ?一応聞いてみただけ☆、それじゃあイリスちゃん、まずはお風呂に入ってから代わりの服を着て、そしてご飯を食べて就寝っていう感じでいいかしら?」


 「はい、ありがとうございます、なにからなにまで」



 いろいろ身の回りのことをしてくれるらしいヴィネッタさんに感謝してお辞儀した。するとヴィネッタさんがクスクスとほほ笑んだ。



 「いいのよいいのよ、困った人はほっとけないから」


 「と、うちの母が申しております」


 「あははは、、、、」



 気が抜けたせいか顔が緩んで笑った。今まで監禁されて魔道具を作らせられたり、前世の記憶が蘇っていろんな感情が湧き出てきて今日は散々な目にあって疲れた。







 風呂に入って遅い夕食をいただいた後は夕涼みで外に出ていた。


 周囲に樹木がないお陰で星がよく見える、なぜかこれまで見たことのあるはずの空の星たちが今日は違って見える。


 それはきっと過去を思い出したからだ。


 前世で私は何も守れなかった、誰も救えなかった。たくさんの見知った人たちが、歩むはずだった人生を見ることなく死んでいった、無慈悲に、無意味に。



 (償いになるかわからない、でも、、、、)



 ならば転生した私は決断するしかない。



 (私がみんなの歩むはずだった人生を生きる、愛する人達のため命を懸けて守ることを錬金術師イリス・アルフオン、そして最強魔導兵エルギン・ファンスとしてここに誓う)



 かつての思い出を胸に秘め、断固としてここに静かに、かつての英雄は誓いを立てた。

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