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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

TSしたんだが、女の子に恋しないと元に戻れない!?~ならばと幼馴染が色々とアタックしてくるが?~

TS百合……受けるか?

 拝啓、天国の父さん。

 お元気ですか? 僕は元気に学校生活を送っています。青春というものは楽しいばかりではない。

 苦難もあります。

 そして、そんな苦難が突如として僕を襲いました。

 え? どんな苦難かって? それは。


「女になってる……」


 そう、よく漫画やアニメである起きたら何かが起きていたパターンです。

 正直驚きはしましたが、この世界だったらありえない話ではないですよね? 昔ならありえない!! と叫んで居るでしょうが、現在の地球は違う。


 今の地球には、普通に魔法がある。

 今から七十五年前。

 突如として地球に降り注いだ光の雨。それは世界中に降り注ぎ、世界の終わりだとか、神々のお恵みだ! とか色々言われていたけど、どうやら後者の考えが当たっていた。


 光の雨が降ってからというもの、世界中で異変が立て続けに起きた。所謂超常現象。

 手から炎や水など出せたり、体にオーラのようなもの纏うことができたりと。創作の世界でしかでありえないことばかりが起きたのだ。


 世界は、光の雨が降った日を【魔法開花の日】と名付け、以来学校の教科書にも載るほどの世界最大の日となった。

 というわけで、この現象もおそらく魔法によるもの。変身魔法も存在しているため、誰かが僕に悪戯でかけたんだろう。

 まあ、その誰かには思い当たる人物がすぐ頭に上がったが。


「わーはっはっはっ! ドッキリだよー!」

「やっぱりお前かぁ!」


 笑顔で部屋に侵入してくる桃毛の少女。

 愛くるしい顔に、くりっとした瞳。

 誰が見ても美少女というである容姿。しかし、胸がない。寄せてもせいぜいBだろう。

 

「ふふん。いやぁ、中々の美少女っぷりですな! 遊馬(あすま)くん!! いや今は遊馬ちゃんか!」

「どうでもいいから、この変身を解いてくれないか? ピリカ!」


 僕の幼馴染である新代(しんだい)ピリカ。

 父が日本人、母がアメリカ人のハーフで、子供の頃から付き合いがある。魔法は変身。

 自分はもちろん、相手、物をも変えてしまう。


 そんな魔法を使えるから、ピリカは小さい頃からよく僕に変身魔法をかけてくる。

 変な服装にしたり、動物に変えたり……そして、今回は女ときた。

 人の寝込みを襲いやがって。


「わかってるよー。でも、勿体無いなぁ。せっかくの美少女なのに」


 確かに、一瞬自分だってことを忘れるほどの美少女だった。

 白く柔らかい肌は、ぶにぷにしており。

 長い髪の毛は、美しい水色。

 その水色に、赤い瞳がよく映える。まあ、身長はやや低めで、胸も小さいのが不満なところだが。


「いいから。ほら」

「はいな!」


 去らば、美少女。

 

「……ん?」


 戻ったのか? いや、まだ美少女のままだ。


「ピリカ。何やってるんだ?」


 ピリカを見ると、時間が停止したかのように固まっていた。


「お、おい。冗談はやめてくれよ」

「……ちょっと待って」


 ん? なんだ、なにか本を読み始めたぞ。

 あっ、固まった。

 何が書いているのか気になった僕は、そっと本を確認する。そこに書かれていたのは。


「……この魔法をかけられた者は、かけた相手に恋しないと解けない」


 はあ!? なんだこの解除方法は!? いったい誰だよ、こんな変な解除方法考えた奴は!


「というか、この本はなんだよ?」


 本の題名を確認すると、恋する魔法使いの面白魔法本! と書かれていた。

 著者は……アンジェラ・ミトナスだって!?


 アンジェラ・ミトナスとはこの世界に魔法が誕生した時代から有名な魔法使いの一人。

 その美貌で男達を魅了し、あらゆる魔法で人々を熱狂させた。

 新時代の魔女。

 そう呼ばれている。そんなアンジェラの本。でも、こんな本出ているなんて聞いたことがない。しかも、それをどうしてピリカが持っているんだ?


「おい、どうするんだ? これ」

「……私を好きになれー! ……えへ」


 あぁ……これ、どうすればいいんだ? 正直に言おう。僕は、ピリカに恋するのは不可能に近いだろう。

 つまり、僕は一生このままということだ。


「一発、殴っていいか?」


 ぐっと、拳を握り締め、僕は笑顔を向ける。


「や、やだなぁ。遊馬くんは。女の子のことを殴ろうだなんて」

「僕は、男女平等主義者なんで」


 魔法と言う超常の力がある現代では、男だろうと、女だろうと、子供、老人だろうと……力があるから昔の思想なんてもう意味がないんだ。それに、僕は殴らなくちゃならない。

 解き方がとんでもない魔法を、寝ている者に面白半分でかけるこの馬鹿な幼馴染を。


「や、やめ」

「大丈夫だ。顔はやめるから」

「ボディもだめ!」

「じゃあ、頭だぁ!!」


 と、怖がるピリカの頭に拳を振り下ろした。


「いったぁ!?」

「反省しろ、馬鹿」


 はあ……どうしよう、本当に。この馬鹿に恋しろだって?

 僕の理想は、清楚な黒髪ロングで、胸は大きく背は僕より小さいが、抱擁力のある年上の女性だ。

 つまり、ピリカとは何もかも違うってこと。

 こいつは、昔から人を実験台のように扱っては、反省する素振りもなく、体は小さいが胸も小さい。

 その天真爛漫な笑顔で、人気はあるが性格に難あり。無理だ……本当に無理だ。



・・・・



 僕が女になってからというもの、生活は大きく変わった。まず男にすぐ戻れないということで、名前はそのままで学校に通うが制服は女子。

 最初は大いに笑われたよ。

 クラスメイトからも、他の生徒達にも。そして、笑いが終わったらセクハラ発言の連発。


 おっぱいを揉ませろだの、パンツを見せろだの。

 特殊な趣味を持った奴は、罵ってくれとか言ってくる始末。

 ちなみに戻り方は誰にも伝えていない。

 なぜって? そりゃあ、完全にからかわれるからだよ。確かに、多くの人に戻り方を知ってもらえば協力してくれる者達は出てくる。


 しかし、中にはそのままでいろ! とか言って阻止しようとする奴等も出てくる可能性がある。

 色んなことを考慮しての判断だ。まあ、そのことを教えなくても普通にそのままで居ろとか言ってくる奴等は居るんだけど。


 ともかくだ。

 僕が元の姿に戻るには、魔法をかけたピリカに恋しなくちゃならない。そのため、ピリカは全力で僕にアタックしてくるのだが。

 その全てが空振り。

 元々、恋愛なんてものから程遠い生活をしていたからな。漫画やゲームで勉強をしてきたらしいが……。


「ね、ねぇ……キス、する?」


 うーむ。普通に可愛いと思うが、無理をしている。

 それに。


「わかった」

「へ?」


 こいつは。


「じゃあ、いくぞ」

「あ、ああああの!」

「今は女の子同士だからノーカウントだよ。だから、ほら」

「ひゃ」


 こうやってからかうと。


「ひゃわあー!!!」


 羞恥に堪えれず、逃げ出してしまう。

 毎回こんな感じだ。

 本当に僕を落とす気があるのか……。


「相変わらずですね。君は」

「アンジェラさん。今日も暇そうですね」

「あら? 私が暇ってことは、良いことなんですよ? だって、私はいつもこの国の未来のために働いているんですから」


 そうそう。こんなことが起こってからというもの、原因となる魔法を生み出したアンジェラ・ミトナスさんと出会い、こうして交流をもっている。

 最初は、偶然の出会いだった。

 ピリカが持っていた本を探していたらしく、無くしたのですぐ回収しなくちゃならないという理由で。


 アンジェラさんは、魔女と言われるほどの実力者だ。色んな意味ですごい人なので、最初こそ憧れのような感情がが湧いたけど、関わっていく内徐々にそれは変化していく。

 国のために働いているらしいけど、毎日のように僕のところに遊びに来ている。ただの暇人でぐーたらな人。面白いことに首を突っ込む癖があり、色々と問題が起きる。


「本当に働いているんですか?」

「本当ですよ」

「じゃあ、そのたい焼きは何ですか? 他にも大量の食べ物も」


 見た目は、抜群のプロポーションを持った大人のお姉さん。黒髪ロングで、左目に眼帯をし、開いている右には獣のような鋭い瞳がはまっている。

 

「これもお仕事です。今、この世界でどんな食べ物があるのか。そして、どれぐらい美味しいのか、と」

「それで成果は出たんですか?」

「全部美味しいですね!」


 わかっていたが、これはただの食べ歩きだ。


「私はいいのです。成果といえば、あなたです。さっきも言いましたが、本当に相変わらずですね。戻る気はあるんですか?」

「ありますよ。ありまくりです。でも、うまくいかないんですよ。僕とピリカの関係は幼馴染ってところでずっと留まってますから」

「ふふ。これはピリカちゃんも大変ね……」


 あいつは、僕にとって恩人だ。

 魔法が一般常識となった現代では、力ある者達は、称えられるが、同時に恐れられることもある。

 強すぎる力は、それだけリスクがある。僕の場合は、強すぎる力と人を寄せ付けない性格だったゆえに小さい頃から友達の一人もいなかった。


 怖くないとばかりに、石を投げたり、魔法で攻撃してくる連中も居たけど、反撃をしたらすぐ泣き、親を頼る。

 僕から攻撃したわけではないのに、怪我は僕の方が酷いのに、全て僕のせいにされる。そんな日常を僕は受け入れていた。

 しかし、そんな日常をピリカが壊したんだ。今と替わらない無邪気な笑顔で僕を変身させた。咄嗟に攻撃をし怪我を負わせたというのに、頻繁に僕を変身魔法の実験台してくる。


 痺れを切らした僕は、なんでここまで僕に関わるんだと。

 そしたら、擦り傷だらけの顔で、こう言ったんだ。


『だって、私は笑顔が大好きだから!』


 正直、意味がわからなかった。

 わからなかったけど……僕は、その時体が、心が軽くなったような気がした。

 今までは家族だけが僕の心の支えだった。それが、たった一人増えただけだ。けど、家族以外に心を許せる友人ができた。それが僕にとって嬉しいことだったんだ。

 まあ、そんなことが遭ったからか、ピリカのことは幼馴染であり友人って感じにしか見られないんだ。


「こ、今度こそ惚れさせてやるぞぉ! え、えっと……」

「あら? 戻ってきましたね。顔を真っ赤にしたまま」

「……よし。デートにでも行こうか」

「で、デート!?」

「ほら、手を繋ごう」

「そそそ、そんにゃ! 手なんて……まだ早すぎるよ!」

「何を今さら。普段からあんなに密着してくるくせに」

「あれは、意識してなかったから平気だっただけで……そ、その」


 普段の感じは出せない、か。こいつもこいつなりに頑張っているみたいだけど。

 恋愛初心者には、荷が重いか。僕もだけど……。


「やっぱ、今日は無理ー!!!」


 今日も、ピリカは逃走。

 この調子じゃ、いつ男に戻れるのやら……。


「じゃあ、お姉さんとデートをしましょうか」

「パス」

「あら、残念」



・・・・



 ピリカは意外と、と言えばあれだが。人気がある。容姿だけなら普通にアイドルでもやっていけそうなほどに。

 なので、昔からラブレターや告白などを幾度なく受け取っている。しかし、ピリカはその全てを断っている。まるで恋愛など興味がないかのように、僕に付きまとっているのだ。

 昔のこともあるため、僕は色々と目の敵にされる。


「いやー、あはは。捕まっちゃったよ」

「捕まっちゃったよじゃないだろ……」


 ピリカは、自分に変身魔法をかけて遊ぶことを日課としている。例えば、猫になって日向ぼっこをしたり、鳥になって空を飛んだりと。

 その過程で、ピリカは捕まってしまったらしい。

 

「けっけっけっ! てめぇ、本当に遊馬か?」

「そうだけど?」

「てことは、本当に女になったのか……けっけっ! これは傑作だ! なあ? 覚えてるか? 七年前、俺がてめぇに負けたことを!」


 ……七年前? うーむ、七年前ってことはまだ僕が荒れていた時か。

 ということは、その時の被害者ってことだな。

 こういうことはよくある。荒れていた時は、本当に周りが全て敵だと思っていたからな。だから、知らない内に誰かを傷つけていたってことが多々ある。


「俺は、他の連中と手を組んで大暴れしていたんだ! この腐った世の中をぶっ壊すためにな! だが、それをてめぇがぶっ壊した! 突然現れて、俺達を簡単にぶっ倒して……仲間達は刑務所行きよ! くそがっ!!」


 それって僕のせいじゃないような。


「それって遊馬くんのせいじゃないよね? 自業自得だよね?」


 あっ、僕が言おうとしたことを。

 捕まっているって言うのに、度胸あるよなピリカって。


「う、うるせえ! ともかくだ! 俺は、ずっと逃亡生活を送りながら復讐心を燃やしていた! 力をつけててめぇをぶっ殺してやるってな!」

「それで、なんでピリカを?」

「こいつは、てめえの恋人なんだろ?」

「いえ、違いますけど?」

「……はあ? お、おいおい! 嘘をつくんじゃねぇよ! 俺は見たんだ! 聞いたんだ! てめぇらが人目を記にせずイチャイチャしていたのをよぉ!!」


 確かに、元の姿に戻るため、デートや恋人っぽいことをしてきたけど……。


「今は、女同士だぞ? 普通に考えて恋人っていうよりは友達同士じゃないか?」

「……う、うるせぇ! ともかくだ! この女を傷つけられたくなかったら大人しく俺の指示に」


 と、ピリカの首にナイフを突きつけようとした刹那。

 僕は、ずっと握っていたものを男へと投げつける。

 投げつけたのは、おもちゃのパイ。ガチャで取れるおもちゃで当たっても少し痛い程度だ。

 けど、僕の魔法にかかれば。


「へぶっ!?」


 本物にすることができる。僕の魔法は、実物化。

 実際にあるものなら何でも実物化することができる。

 当然、食べ物のおもちゃだって、本物の食べ物にすることができる。

 ただ命を吹き込むことはできない。できたとしても体だけ。己の意思で動くことはない。


「はい。救助」


 不意討ちを食らい怯んでいる間に、捕まったピリカを助けた。


「さすが遊馬くん! いや、遊馬ちゃん!!」

「少しは緊張感を持ちなさい」

「く、くそぉ! ふざけやがって!」


 クリームを取り払い、ナイフに魔力を込めて、刃を伸ばした。

 刀ほどの長さとなった得物を構え、怒りのままに突撃してくる。

 僕は、ピリカに視線で指示を出す。

 その意図を理解したピリカは。


「ほいさ!!」

「なっ!? 俺の武器が!?」


 変身魔法でナイフをネギに変身させた。

 そして、男が驚いている内に、僕は距離を詰める。ポケットから小さなバットのキーホルダーを取り出し、魔力込める。

 

「ぶっ飛べ!」


 本物の木製バットへと変化させ、腰が入った強烈な一撃を腹部へと叩きつける。


「ぎゃあっ!?」

「うわー、痛そう」

「自業自得だ。ピリカ? 警察に通報。僕はこの人を拘束しておくから」

「はーい」


 そんなこんなで、ひとつの事件は解決。

 これが僕の日常。

 女にされてからというもの、ピリカが僕を惚れさせるために奮闘し、その間に何かしらの事件が起きる。

 けど、それを楽しんでいる。主にピリカが。まあ、僕も楽しんでいる節があるけど。


「通報したよ!」 

「ご苦労様。こっちも拘束した」

「よし! じゃあ警察が来るまでハグしよう! 勝利のハグだぁ!」

「おっと」


 こういう時は、意識してないから恥ずかしくないってことか?

 本当……わからない子だ。

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