オレンジと月
ろうそくの揺れる炎に照らされたよう。
今夜の月は、柑橘の味。
待ちきれないから囓られて、私の理想が滴っている。
待ちきれないから囓られて、あなたの真実が垣間見える。
ゆっくりと進む時間、それは囚われの時間。
有り得ない目覚めと計り知れない眠り。
どちらの顔か、どちらの不安か。
確かめようのない夜の中。
いらない迷惑、迷うだけの冒険譚。
声は掛けられない、眠るあなた。
いらない親切、飢えるだけの幸福論。
声も掛けられない、目覚めを待つ私。
揺れるような明かりは感じてる。
もう待ちきれないから噛らせて、あなたの破綻した予想。
もう待ちきれないから囓られて、私の能天気な不安。
今夜の夜食は、隠しておいたオレンジでも。
酸っぱい味強すぎて、まるで喉元搾られる。
酸っぱいオレンジから沁みてくる、目覚まし時計の身代わり。
やっぱり柑橘の味は、朝がいい。