幕間その3 眼鏡
ある日の放課後。
私は面白い推理小説をちょうど読み終え、めちゃめちゃ機嫌が良かった。
窓から校庭に向かって叫びたい気分だ。
部室に入ってからもずっとニコニコしてたら、千代さんに怪訝そうに見られた。
「あ、千代さん。眼鏡に水滴が……」
完璧で隙のないイメージの千代さんにしては珍しい。
「ご指摘ありがとうございます」
と言って眼鏡を外そうとする。
あ……良いこと思いついたっ!
「ちょっと待ったぁ!千代さん、三つ編みほどいてから眼鏡外して!」
「何故ですか?」
「いいからいいから!」
氷が「あっ……」と呟いて赤面した。こちらの真意がわかったようだ。というか、なんだその反応は
そう!これは二次元を愛する者の夢!
「よくわかりませんが……こうですか?」
千代さんが髪をほどいて眼鏡を躊躇うように外す。
うわ……外し方がもう萌える……。わ、私、やばい人じゃ、ないからね!
「千代さん……可愛いです……ごちそうさまです……」
私は、ほくほく顔で合掌した。
「あぁ、そういうことか!何だっけ、眼鏡っ娘ってやつかな?」
庭戸尊は一人納得顔。
「そーそー。柚兄は眼鏡属性あったよね?」
「……なっ!おい、杏!違う!」
「眼鏡属性って、眼鏡かけてる人が好き、みたいな人のことだよね?おお、初めて見た!」
柚兄はまだ全力で否定している。
「えーだって柚兄の初恋の○○って人も、小学校の保健室の○○先生も眼鏡だったじゃん?」
「おい!言うな!何で知ってる!やめろ!」
いやぁ……おもろいなぁ。
「保健室……ぶっ……すいません……」
氷が吹き出した。
「すいません……もうつけても良いですか?」
若干顔を赤らめて千代さんが言った。
「あ、もちろん、どうぞどうぞ」
「ありがとうございます……よくわからないのですが……なんだか、とても恥ずかしいです……!」
隙のない印象が強いのに、何ですかこのうろたえ方!あらあらまあまあ。
「千代さん、眼鏡外したら、すごい美人ですね!」
おい庭戸ー。そういうことを言うではないぞ。
「いや、眼鏡外さなくても……別に……」
氷は何やらボソボソ言っている。
でもこれで、私の夢の一つ(眼鏡外したら美人の人を見ること)が叶った!
ありがとうございます……千代さん。