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退屈部は退屈しない  作者: 似純濁
5/11

4 古書の消失 後編 old book

盗難!?

「確かに……五万円だからな……」

何気に同意してもらったら困りますよー氷さーん。

しかし……うちの図書室に、そんなお宝が眠っていたとは。

「げっ!?七巻も、落丁本だったのか!?売っとけば良かったぁー」

司書の先生が後ろからのぞき込んできた。

少なくとも司書のセリフじゃないです、それ。

で……七巻も、ってことは……。

ニヤリと笑って本を掲げた。

「ほれ。十六巻も落丁してたぞ」

おおー!(?)

どうなってるんだ、うちの図書室。

やっぱり売っといたほうが良かったのでは……。

「じゃあ……これを囮にしよう。学校の掲示板に書き込んでおく」

ということは……?

「犯人を呼び寄せる。つまり……罠を仕掛ける」


翌日。

私たちは昼休みの図書室で、奥の方に立ち、犯人を待っていた。

うう……図書室にいるのに本が読めないなんて、なんという暴挙。

庭戸尊は、少し禁断症状が出てきている。

「ちっ……さっさとでてこいよ」

おお、キャラ崩壊だ。怖い怖い。

「すいません……そこ、どいてほしいんですけど」

小柄な……えっと二年生か……の男子が私たちの方に胡散臭そうな視線を向けている。

氷がにこりと笑って十六巻の本を掲げた。

「あっ、それ」

ふっふっふ……お前だな!

「これが欲しいならこっちについてきてもらおうか」

これが任意同行かぁ。たぶん違うな。

「……わかりましたよ」

彼は吐き捨てるようにに呟いた。


「君が、このシリーズの七巻を持っているんだね?」

尋問が始まった。

「……はい。持ってますよ。それが何か?」

二年生の男子は、ずっと俯いてふてくされている。

「貸し出し手続きをせずに、図書室から消えていたんだ。これってどういうことかな?」

「……偶然です。偶然、貸し出し手続きを忘れてしまっていたんです」

柚兄が眉間にしわを寄せてじっと見つめる。

「盗んだんだね?」

彼は少し目を泳がせた。

「……違います。そんなたてついて……証拠でもあるんですか?」

『証拠でもあるのか?』はミステリーでは自白と同義語です。みんなも気をつけようね~。

「まあ……証拠はないのだが……」

はあ、と柚兄が溜め息をついた。

彼に悪びれた様子はない。どちらかというと焦っている感じだ。

本を、お金目的で盗難する。

私には……信じられない。

ずっとうつむいている彼を蹴り飛ばしたい衝動にかられた。

何故、信じられないのか。

たぶん、お小遣いをほぼ全部、本にまわしているからだと思う。

本が……一番、大切だから。

作家さんが、出版社の編集者さんが、本屋の書店員さんが、大切だから。

本は、盗んだ瞬間に、本じゃなくなってしまう気がするから。

私は、複雑な思いで彼を見つめていた。

まあ、なんと言ったって、証拠はない。ないものはない。

「今後はこんなことがあってはならない。それは理解したね?」

「…………はい」

「次はこうはいかないよ……僕ら」

柚兄は、ふっと笑った。

「退屈部がいるかぎりは」

その時私は、どうとも言えない充実感を感じた。

そうか……私、入ったんだ。

たぶん、私にとってこの世界で一番素敵な組織。

退屈部に。


……本当にそうだったかは、今となってはわからないかな。

ーFINー

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