3 古書の消失 前編 old book
前回―――私は退屈部という名の怪しい団体に入部したわけだが……。
ほんっっとうに活動内容がわからない!
『新入生歓迎会』というのをやったりするのかとちょっとだけ期待していたけど、次の日、部室(壁の裏ね)に行っても、好きなミステリーを読んでいるだけ。しかも皆、集中力がすごいから話しかけても生返事。柚兄は神経質なので話しかけたら怒られるけどね。
つまんなー。私の青春どこいったー。
「えー……事件に出会って解決する、とかないの?」と聞いたらにやりと笑って「そのうちわかるよ」と言われた。
これは……期待しても良いのでは!?
私は開き直って待つことにした。
ちょっと不謹慎だけど……事件なんて、そのうちやってくるさ!
最終下校時刻になり、帰ろうとした時。
奥の方の本棚を見ていてふと思った。
「ここら辺の本……すごい古いね」
「そうですね……埃がとても積もっていますし」
もう売っちまえ。で、ミステリーを入れろ。
庭戸尊がふと気づいたように声をあげた。
「あれ?これ、おかしくない?」
「何何何!?」
ぐっと詰め寄る。
「ここだよ。題名は読めないけど、七番目の本がない」
ほんとだ……題名が見えないほど古い本だ。
氷がキラーンと目を光らせたふりをして言った。
「七番目だけか……事件の匂いがする!」
いつも思うけど、そんなことしててよく恥ずかしくならないですよねー。かっこつけんな。
「他の巻は埃が積もっている……七巻だけが借りられたんだな」
「おおお!これは!なんかあるぞ!」
千代先輩が少し微笑んだ。
「気になるというのなら、司書の先生に聞いてみますか?」
「……何?とっとと帰れよ」
深窓の令嬢風の清楚美人が言った。
…………司書の先生のいきなりのキャラ崩壊におののく。
「柚兄……司書の先生っていつもこんなんなの?」
「ああ、もとからこういう感じだ。あの、とある本が誰に貸し出されているか、貸し出し履歴を見たいんですが」
「そういうのはプライバシーに関わるから見せられないよ。ほら、帰った帰った」
「じゃあ、ちゃんと貸し出しされているかだけは見たいのですが」
ちゃんと貸し出しされているか、って……。
「はあ……仕方ないね。何ていうやつだい?」
「題名はわかりませんが、一番奥の棚に二十冊くらい並んでいる青くて古い本の、七番目です」
「ああ、あれか……あたしもわかんないんだけどな、題名は」
わからんのかい。
司書の先生は「ん?」と画面に顔を近づけた。
「ん?貸し出されていないな……」
「たぶん無断貸し出しですね。確認しておいてください。あと、インターネットを貸していただけませんか」
「あ?いいよ、好きに使え。何ぃ、無断貸し出しだとぉ……」
司書の先生は肩をいからせて奥にずんずん歩いていった。
「なんでインターネット?」
「いや……ちょっと調べてみようと思って」
図書室のパソコンで本の題名を入れて検索している。柚兄はわかったみたいだったけど、相変わらず読めない。
「あれ、何の本なの?」
「……昔に書かれた英語の小説以外の本だ」
なんと適当な。
「よし、でた」
「げっ」
オークションのサイトがトップに出てきた。
「五万円……」
ゴマンエン……ゴマンエン……。
あんな古めかしい本が、五万円……。
「歴史的に価値のある古書のようだ……それに落丁本らしい」
古書か……。私の管轄外だな……。
「……もしかしたら」
柚兄は吐き出すように囁いた。
「盗難かもしれない」