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退屈部は退屈しない  作者: 似純濁
2/11

2 扉を開けるとき 後編 open the door

「退屈部……?」

怪しい……。怠けているイメージしか浮かばない。

「活動内容は……本を読んだり、事件を待ったり……しています……はい」

三つ編みの人が悩みながら答える。

とりあえず活動内容が不明瞭な怪しい団体ということは解った。

「森浜中って……部活動必修だよね」

「そうだが……その中でも俺たちは生きているんだ……孤高の退屈部さ……」

碧眼が言う。うわー。引くわー。こいつこんなにうざかったのか。

「まあ全然わかんないけどー。とりあえず自己紹介してよー」

こっちも名前が解らないとやりづらい。

「なにがとりあえず、だ……。はあ……僕は水里柚みずさとゆず。三年生。趣味は…………読書、だけか。好きなのは名作・古典系のミステリー」

別に柚兄はいらなかったけどな……。知っとるし。

私と同じように柚兄も推理小説が好きだ。好きな系統はだいぶ違うのでよく衝突しているが。

「俺は花貴氷かきこおり、二年生。フランスのクォーターさ……。英語やフランス語のミステリーは原書でよく読んでいる。ささやかな自慢だ……」

あ、こいつもミステリー好きなのか!?かき氷……今あだ名を勝手に決定した……の評価が0.1上がる。

「二年の武蔵山千代むさしやまちよです。趣味は剣道です。敬語は癖なので気にしないでください。好きな推理小説は……割と幅広いですね……基本、何でも好きです。よろしくお願い致します」

深々と頭を下げた。千代さん……この人はさん付けで呼ぶべきだと判断した……も推理小説好きらしい。

「僕は庭戸尊にわとそん、一年生です。推理小説―――特にホームズが好きで、ワトソンさんは本当に尊敬しています!」

えっ、こいつも一年生!?うっわ先越された……。

しかしワトソン好きって珍しすぎる。マニアックだな。

「ここにいる人ってみんな推理小説好きなんですか、千代さん?」

「はい、そうです。そういう部活です」

と、にっこり笑った。

「はいはいはい!私も推理小説大大大好きです!特に青春ミステリとかラノベ系・キャラクターもののやつが!!だからアニメ化漫画化してお金がグッズに消えて原作につぎ込むお金がない(笑)!でも昔に映像化されたものが多いから、逃げられまくってるんですよー巻数も多いし。いやー私森浜小出身で同志に飢えてたんですよー柚兄と、その上の姉と両親しかミステリー好きいなくて。昔先輩でいたけどどっか行ったし!司書の先生も趣味悪かったし!森浜中きたら誰かいるかなーって思ってたら大当たりでした!あ、ちなみに私の推しはですね……」

「杏……わかったから……」

柚兄が額を押さえている。

退屈部、思ったより良い部活じゃないか!

特に入りたい部活もないし……自分自身、素行も元々よろしくないし……。

「あの、私、この部に入っても……」

「やめろぉぉぉぉぉぉ!」

血相を変えた柚兄が立ち上がる。

「えーだって私同志欲しかったんだよー。ねー入ってもいいでしょー」

同志……何年か前に忘れてしまっていた気がする。

ああ……そうか。

私は、寂しかったんだ。

「良いんじゃないですか、柚さん」

千代さんが呟いた。

「駄目な理由、ありませんよね」

庭戸尊も後押しする。

「兄妹探偵……。フッ……。実に良い……」

まあこいつは意味わかんないけど。

「決まりだね!じゃあこれからよろしくお願いします!」

少し高揚してにっと笑った。

ここから私の、中学生ライフが今、始まる!

……というようなベタな締めの言葉を思い浮かべていた。

少なくとも、そんなキラキラした青春っぽい部では、ないと思うが……。

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