7 万引き? What you stole? 前編
私と萌花と日和と紫音は、本屋に来ている。
本屋は本屋でも、私のお得意先の大型書店!
この前、ポイントが貯まりすぎてびびったくらい、この本屋さんに貢いでいる。
今日は短縮授業だったので、「そうだ、本屋に行こう!」ってことで来た。
「あ、あれ、かおりなちゃんじゃない?」
「ほんとだ~!なんか意外!」
誰それ。
「誰?」
「一年F組の、ほら、あそこにいるちっちゃい子。陸上部で、長距離も短距離も超やばいんだよー!」
日和が指差した先には、本屋に入っていく一つ結びの小柄な子の姿があった。……陸上部なのにうなじの肌が白い。
なんとなく尾行していくと、文庫本のコーナーで立ち読みを始めた。
「……何読んでんだろねーふふふ」
萌花が人の悪い笑みを浮かべた。
「んー見えないー。気になるなー。あとで声かけてみよう」
……さすがコミュ力の日和。
すると、かおりなさんは周囲をうかがうようにして、なにかをトートバッグの中にしまった。
バッグをかばいながらこちらに歩いてくる。
「やっほー!かおりなちゃん、何読んでた?もしかして本読むの、好きだったりする?」
「あっ……ひ、日和ちゃん。紫音ちゃんも。ひさしぶりだね……」
「ひさしぶり、かおりなちゃん」
チラチラと周囲を伺っている。
「あの……ご、ごめん……私、用事があって……」
「あーオッケーオッケー!じゃーねー!」
……なにが『あぁー』なのだろう。
「うん……じゃ、じゃあね!」
かおりなさんは足早に立ち去った。
「あのさ、ちょっと二人には申し訳ないけど……」
萌花が声をひそめて言う。
「あの子、万引きじゃない?」
「「「えっ!?」」」
万引きぃ?
「だってさ……紙袋の中に何か入れてたし、こそこそしてたし」
「だからって……」
万引き、か……。確かに、ちょっと挙動不審だったかもしれない。
「じゃあさ、確かめてみようよ!あそこでかおりなちゃんは何かをしまってたんでしょ?」
私たちは、かおりなさんがいた棚に移動した。
「うーん……ぎっしり、だね」
その棚には、上から下まで寸分の隙間もなかった。
平積みしてあったり、表紙をこちら向きにして立ててある本もない。
「じゃあ、かおりなちゃんは……」
本ではなく……。
何を盗ったの……?