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退屈部は退屈しない  作者: 似純濁
1/11

1 扉を開けるとき 前編 open the door

私の名前は水里杏みずさとあんず。森浜市立森浜中学校の中学一年生。言えないくらい背が低くて、ショートボブ(おかっぱではない!)。

そして一番重要なこと。推理小説マニアだということ。

オタクの領域だと自負している。

勉強は……まだよくわかんないかな。運動能力が壊滅的だということは、昔からよく知っている。

私は学区的な問題で、皆とは違う中学校に行くことになってしまった。知ってる同級生が一人もいないという悲しい状況。森浜中はかなり問題のある学校。制服ダサい、校舎ボロい、校則キツい、個人的には遠い、部活動が強制、等々。

だから中学生になったらどっかの部の幽霊部員になって、放課後、図書室でゆっくり本を読む……。

はずだったんだけどね。


四月。

今は放課後の部活動体験の時間である。

で、私が向かっているのは学校の図書室。別に文芸部とか、そこで活動している部があるわけでもない。

率直に言えば、さぼっている。

同級生の誰よりも先に図書室に足を踏み入れたいという欲望に、されるがままにしてやってきた。

……あと、興味のある部活がなかった。

森浜中は教室棟と特別棟が九十度に交わっている構造。図書室は特別棟の一番端の最上階にあるので、すごい不便。どうしてこんな設計にしたのだろう。

図書室に到着した。

そろりと戸を開けたつもりが、グギュイイイイと断末魔の叫びが聞こえた。

「失礼しまーす……」

中には若い(のかなぁ……)司書の先生がいたが、私には気づかなかった。熱心に本を読んでいる。完全なる職務怠慢だ。こんなんで良いのか?森浜中。

図書室は結構広い。凸形になっていて、奥の方はなんだか暗くて見えない。

ほわぁ……。はわぁ……。恍惚の表情を浮かべ、にやにやしながら五十音順に物色する。うわぁ……やっぱ小学校とは違うわ……。

そうしているうちに奥の方に来てしまった。もう小説のコーナーではないのでテキトーに流し見る。失礼だが、誰が借りるんだろう。

すると、一カ所、不自然に本棚がないところを見つけた。

ん?

まさか、ここに死体が隠してあるとか!なんてねー。

と、思ってしまったのも無理はないだろう。(いや、無理がある)

なんとなく押してみる気分になった。その時は軽い気持ちで押しただけだった。あの時扉を開けなかったら、私の中学校生活、どうなっていただろう。

壁を押すと、向こう側へ引きずり込まれた。


???????

六畳くらいの部屋がある。机と椅子が置いてある。うん。何故壁の奥に部屋があるかはおいておくとして……。

人がいる。それも四人。生きてる。

「杏……ああ」

今、うめき声をあげたのは私の兄。水里柚みずさとゆず、三年生だ。天パの髪の毛をわしゃわしゃとかき乱している。

「柚兄……?なんで?」

「それはこっちが聞きたいわ!」

「こっ……こっちも聞きたいわ!」

逆ギレされたのでキレ返してみた。

すると、ちょっと鼻にかかった声が聞こえた。

「柚さん……こいつ、誰です?」

こいつとは失礼な。威嚇しながらそっちを睨むと、碧眼の背が高い男子が立っていた。

柚兄が仕方なさそうに答える。

「……僕の、妹。水里杏。一年生」

「妹さんですか」

凜とした声の主は、三つ編みで眼鏡の女子。

「おお、一年生なんですねー」

最後の一人は、ニコニコしている黒縁眼鏡の男子。

「そ、そうです!水里杏です!柚兄がいつもお世話になっております……」

一応自己紹介してみた。

変人だらけだなぁ。自分が言えることじゃないけど。

「それより何ここ!?」

そうだったそうだった。忘れるとこだった。

柚兄がはぁ、と息をついて髪をかきあげた。

「退屈部だよ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] はやみね先生みたいです!すごいです! [気になる点] ないですね! [一言] すごいです!すごすぎます!あっという間に物語に引き込まれて行きました!
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