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第6話 神の面談(前編)

 さて。

 宿題を片付けた僕達は、雨の中普通に帰って行った。その間の会話は特に盛り上がることもなかったので、語るべき内容でもないだろう。

 そして、家に帰り夕飯を食べ風呂に入り自分の部屋に入る。

 それがちょうど午後八時ぐらいだったか。僕は部屋にテレビがあるので、一人でテレビを見たかったのだ。

 別に隠すことがあった訳じゃない。

 テレビのチャンネル権の奪い合いをする必要がない、ということだ。

 バラエティーだろうが、ドラマだろうが、好きな番組を見れば良い、ということだ。


「……うーん、今日は野球中継か」


 野球が終わるのは、大体午後九時ぐらいだったか。それまでは暇を潰すしかなさそうだな……。そう思いながら、僕はスマートフォンを手に取った。

 そのときだった。スマートフォンがぶるる、と震えたのは。

 電話の主は、またしても神ガラムドからだった。


「……もしもし?」

『もしもーし。その様子だと順調みたいですね。ラブコメな世界になっていますか?』

「……茶化すつもりなら切るぞ」

『わー! ちょっと待って切らないで!! 切るなら私の話を聞いてからにして!!』

「……話って何だよ。聞く価値がないものだったら直ぐに切るぞ」

『あんた、私が神様だってことをさては忘れているな?』

「忘れていねーけれど。で? その神様が何だって僕に電話をして来たんだ。事情があるんだろ? 電話したからには」

『そりゃもう当然! ……あのさ、今日の行動をじっと監視していたんだけれど、あんた、ラブコメな世界にする気ある?』

「はっ? 今日の行動を監視とかストーカーかよ、キモいぞ流石に」

『神様は何でも監視出来るんだし! ストーカーとか言わないで欲しいかも!』


 それはそれとして。


「……で、何が言いたいんだ?」

『そうそう! 言いたいことは……はっきりと言わせて貰うが、あんた、ラブコメな世界にするつもりはあるのかないのか聞いているんだ』

「あるかないかと言われると微妙なところだな」

『むきー! せっかくこっちがお膳立てしているっていうのに! やる気がないならないとはっきり言って欲しいものだね!』

「言ったら?」

『即この世界をバックアップとして作り替える。是非は言わせない』


 ひどい。


『とにかく。あなたにはこの世界をラブコメな世界にするという使命があるんです。それを忘れて貰っては困りますよ!』

「忘れたつもりはないんだけれどな……。で? その『ラブコメな世界』とやらにするにはどうすれば良いんだ? 誰かにテキトーに告白すれば良い訳?」

『あんたがそれで良いなら良いけれど。でも、一生を決めることなんだから少し丁寧にしておくべきじゃないかしら。それに、相手は既に二人まで絞れているじゃない。その中から決めなさい』

「二人って……やっぱり嘉神シスターズのことか?」

『あなた達はそう呼んでいるのよね……。そう、その嘉神シスターズのこと。その二人からあなたがどちらかを選ぶの。どちらを選ぶか選ばないかによっては世界が滅亡する、なんてことはないから安心しなさい。ただ、どちらも選ばないとこの世界がバックアップの世界として修正されることになるゾ☆』

「具体的にはいつ頃?」

『七月ぐらい?』

「随分と急だなオイ!」


 七月といったら――体育祭が終わった辺りのシーズンになるんだろうか。

 この学校は体育祭を、何故か暑さの極まる七月にやることになっている。突っ込みどころは多いのだけれど、それがこの学校のシステムだから仕方ないと言えばそれまでだ。それ以上のことを僕に決めることは出来やしない。


「……僕が七月までに何をしないといけないんだ?」

『勿論、どちらかを選ぶこと。或いはこの世界がラブコメたりえる世界であると認識されるかどうか。それは、神である私にも分かりません。どういう基準であるのかどうか決めるのはこのスーパーコンピュータ「X34000」くんが決めて……げふんげふん、何でもありません、何でもありませんよ! 私は何も言っていませんから! この世界がスーパーコンピュータが構築した理想の世界であるということなんて一言も!!』

「いや、言っているし。お前が言っているから。……ってか、何だよそれ!? シミュレーテッド・リアリティって奴?」

『げえっ!? 言ってしまってましたか。ならば致し方あるまい! そうです、そうですよ! この世界はコンピュータグラフィックスによって描かれた理想の世界なのです! もっとも、生きている人間は、そのまま魂を電子化している訳ですけれど☆』

「……何かとんでもないことを聞いちまったような気がするけれど。ちょっと待てよ。それじゃ、もしこの世界がリセットされたらそこに居る魂はどうなるんだ? また再生されるのか?」

『さあ、どうでしょう? それを決めるのは私ではなく、スーパーコンピュータ「X34000」なので』

「……もう良い。あんたに聞いた僕が馬鹿だった」

『ばっ!? 馬鹿とはどういうことですか、馬鹿とは』

「落ち着け、あんたのことを馬鹿だと行ったつもりはない。……ってことはあんたは、ただの管理者ってことかよ? 神というよりかは」

『まー、そういうことになりますかね。世界がどうなろうとも、私の給料に関わってくる話ではないのですが。でも、一つでも多くの世界を救いたいですよね。いくつかの世界が既に崩壊の危機に陥っている現状、それだけは見捨てる訳にはいきませんから』

「……一応聞いておくけれど、あんたの住んでいる世界については」

『その質問は御法度です。あなたが「外の世界」を認識してしまうこと自体異例中の異例なのですから。それなのに、あなたが外の世界についての知識を仕入れてはいけないのです。残念ですが、それは理解して欲しいものですね』

「……そうかい。分かったよ」

『話を戻しても良いですか?』


 ガラムドの言葉を聞いて、僕は頷く。

 これから先は、僕達の世界の話だ。

 


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