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第38話 運命の日(6)

『いやー、まさかサリエルがあっという間に解決してくれるとは思いもしなかったよ! 無事だった? 無事だったよねえ! 私はモニターでずっと見ていたからねえ!』


 ……相変わらず、ガラムドの調子は良いようだった。


「……ガラムド様。少しは落ち着かれては如何ですか? 量子コンピュータに管理を任せているのです。別段、あなたが動くこともないでしょうに」

『いや、でもね! あなたが思っている以上に神の役割って色々と大変なのよ。分かる? いやあ、あなたには分からないでしょうねえ』

「……分かりませんけれど。で? これからどうするおつもりですか。一応、エリザは殺しました。後は、臥煙美耶子……いえ、正確な名前は、ミカエルでしたか。そいつはどうなさいます?」

『ミカエルは何とかするしかないでしょうね。しかしながら、テロリズムの活動が認められないのよ。何せ、その世界での出来事でしょう? 別段、こちらの世界で何かした訳じゃないから。……それに、私ってそんな権限ないし』

「そうでしたね……。神といえど、権限がある訳ではありませんでした。特に権限を持っているのは、影神でしたか」

『そうそう。影神にはムーンリット・アートが居る訳だけれど、彼女、どんくさい性格でしょう? だから、案外動くこともないのよ。まあ、それにかこつけた今回のテロリズムというのは理解している訳だけれど』

「ええと……? 話がまったくついていけないのだが?」

「関係ない話だ。今は放っておいて良い」

『そうそう。神の世界のことなんて知らなくて良いの。あなたはあなたの世界のことだけを考えていれば良いんだから』

「……さて、こうなると世界の運命は彼に握られた訳ですが」

『あ、そうね。ねえねえ、結局どっちを選ぶか決めたの?』


 そう言われて。



 ――僕は、物語の本質を思い出した。




  ※


 とどのつまりが、どちらを選ぶか。

 或いは、どちらも選ばないか。

 その選択肢に立たされた訳である。簡単に言えばそれで解決してしまうのだけれど、それで解決出来てしまう程世界は単純じゃない。ガラムドの言った話によれば、量子コンピュータが世界を管理していて、その量子コンピュータが僕の考えを認めてくれない限り、話が進まないというのだ。いったい全体、どういうことだ、と言いたいのだが、それはそれとして。

 ひかりとのぞみ。

 僕はどちらを選べば良い?

 どちらを選んだところで、どちらかは不幸になる。

 どちらを選ばないところで、もしかしたら世界そのものが消えてしまうかもしれない。

 だとしたら、どちらかを選ぶのが正解だというのだろうか?

 今の、三人仲良く過ごしていく空間が悪いことだというのか?

 世界を選ぶか、ひかりかのぞみのどちらかを選ぶか。

 世界は、まさに僕の選択に任されていた。

 ……こういうのをセカイ系って言うんだろうなあ。と思いながら、僕は考える。

 考える。考える。考える。

 考えるだけ考えて、何も思いつかなくて。

 結局は一つの結論に導かれてしまう。

 じゃあ、どうすれば良い?

 僕は何を選べば良い?

 僕はどう選択すれば良い?

 答えは、たった一つだ。

 どう選んでも、そう収束するのだ。

 だとしたら。

 僕は選べば良い。

 力むことなく選べば良い。

 緊張することなく選べば良い。

 そうすれば、結論を導けるのだから。


「さあ、隼人。……君は、どうする?」

「僕は――」


 僕は――。

 一つの選択を導いた。



  ※



「……ごめん、佳久。そして、ガラムド。僕は、僕には、選べないよ」

『……あなたならそう言うと思っていました。……とどのつまり、それは世界にとっても、あなたにとっても、良い選択かどうかは分かりません。あなたが良い未来を切り拓くことが出来るのかも分かりません。それでも、運命を変えようというのですね?』

「あんたに決められる未来なんてまっぴらだ」


 僕はLINEではっきりと言い放った。

 神様が決める未来? そんなの知ったことか。

 僕の選択で世界が滅びる? そんなの知ったことか。

 そんな世界など滅んでしまえば良い。

 そんな世界など――消えてしまえば良い。

 僕はそう思いながら、その選択を噛み締めていくのだった。


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