第98話
「はぁ、どうも鉄平といいます」
その奇妙な人物に一礼すると静寂にしばしつつまれた後、ハウンドが口を開く。
「まぁ立ち話もなんだし、座って話そう」
ハウンドがそういうといつの間にか二人はテーブルに向かい合わせになって座っおり、LEDの明かりが煌々と照らす。
「まずは最初に謝っておこう、すまない」
そう言って唐突に頭を下げはじめるハウンドにキョトンとして、慌ててそれを制止する鉄平だが、ハウンドは頭を横に振る。
「いやいや、本当にそうなんだ、どこから話そうか」
ハウンドはそう言うとアゴに手を当て、しばし思案に明け暮れると、うむそれがいいと呟き口を開く。
「君の世界に鯉の滝登りというものがあるだろう?」
ハウンドがそういうと鉄平は、ええと短く答える。
「それとにたようなもので、こちらの世界にも人間から上位の存在になる為の儀式というものがあってね」
そういうとハウンドは更に続ける。
「この度は人間が神になる為の儀式でその名を"神の戸渡り"という、私は元々は人間でそれなりの地位にある魔導師だったのさ」
ハウンドのその話があまりにも突拍子もなくてポカンとしているとハウンドが更に続ける。
「なんで君と関係があるのかというとね、要因は二つあるんだ」
「二っ?」
鉄平が問いかえすとハウンドが更にかえす。
「そう二つ、まずは君と僕の魂の波長がとても似ていた事、そして二つ目は君と私が同時に儀式をおこなってしまった事だ」
「儀式?」
鉄平がそういうとハウンドが説明をはじめる。
「先程もいった通り、神の戸渡りという儀式は神の次元に到達するために概念の扉を開けるのだけれど、君が扉を開けたタイミングで儀式をやっちゃってね、なんの因果か波長が同じ君が開けた扉と繋がってがってね、こちらの世界に引き込まれたしまったわけなんだ」
唐突の話に思い当たる節はあるなと思い、あの日部屋の戸を開けた時森に唐突にでてしまったのはその為だったのかと納得するのであった。
「あ、それじゃあ一つ質問」
それを聞いてハウンドがどうぞと促す。
「儀式に巻き込まれたのなら、なんで俺もハウンドさんみたいならなかったんだい?」
それを聞いてハウンドがすまなさそうに頭を掻く。
「それなんだけどね、儀式を無事おえて神の次元に達した時に新しい扉が開いて君がでてきた時はビックリしたよ」
そして引き続き説明を続ける。
「修行も天性的な力もない君が同じ次元に突然現れたなら、身体と魂が保てず消滅してしまっていた事だろう、だから慌てて君をえぇっとこの場合は現世でいいのかな? に移したんだ、私がその時神として熟達していれば冷静になって元の世界にも返してあげれたのかもしれない、本当にすまない」
ハウンドはそういうと改めて頭を下げる。
「いやいや、いいですよ今はそんなに怒っていないですよ、確かに元の世界の事も心配ですけど、こっちの世界での暮らしも悪くないし、祭りもやってて祭り・・・」
自分でそこまで言ってボヤけた記憶が甦る、確か俺はハツネに刺されて・・・!
鉄平はそこまで思い出してハウンドに詰め寄る。
「ハウンドさん、すぐに戻してくれ! できるんだろ?」
ハウンドが詰め寄る鉄平を落ち着かせる。
「戻せるとも、だが今なら君を元の世界にも戻せる、何故なら今は君は死にかけて魂と身体が離れやすい状態からね、魂だけなら転生させてあげられる」
それを聞いて鉄平はハッとするが、考え込む。
「どうしたんだい」
ハウンドが尋ねると鉄平が答える。
「いや、止めとくよ、その言い方だと元の世界に戻っても赤ん坊からやり直しだろ? それにこちらの世界も悪くないしな」
鉄平はそういうと意識を失う前に泣きじゃくっていたシノブの顔を思い出す。
その答えを聞いてハウンドがすまなそうにする。
「本当にすまなかったね、私が未熟だったばっかりに」
「だから、いいってそれよか早く戻って安心させてやらねえとな」
鉄平はそういうとハウンドにうながす。
「ありがとう、ならかえずついでに一つ私からプレゼント、君の犬と話せる能力は一瞬でも私と同じ次元に到達した時に君自身が開花させた能力、これをもう一つ強化してあげよう」
ハウンドとはそういうと鉄平の額に手を押し当て呪文を唱えるとまばゆい光につつまれる。
「よし、そのまま君を身体に戻そうか、いくよ!」
ハウンドはそういうと鉄平の身体を押すと、身体が押され感覚的に沈んでいくのがわかる。
「ハウンドさん、それはどういうー」
鉄平が能力について聞こうとするも急速に視界が暗くなり途端に身体が重くなり始め、ハツネに刺された所が痛みだす。
「痛ててて、ちゃんと説明欲しいよなまったく」
そう言いながら目を開けるとそこはベッドの上で、身体中包帯でグルグル巻きにされていた。
「いやいや、大袈裟なっ」
って言ったところで自分の脇で寝ているシノブがいるのに気づく、おそらくはずっと看病していてくれていたのだろう、そう思うとむず痒くもあり嬉しくもあり、シノブの頭をそっと撫でるのであった。




