第96話
1日目の舞台と祭が終わり結果が発表がされる時刻。
唐突にラッパが鳴り響き大広間のさっきまで演劇が催されていた舞台に立派な髭を生やした恰幅の良い男がノッソリと現れる、後ろには沢山の紙を持った従者を従えていた。
"うっおっほんっっ!"
偉そうに咳払いをすると一言大きな声で市長である!と宣言する。
「なるほどわかりやすいな、あれが市長か」
テツがなるほどと納得してうなずく。
「うむ、見た目わかりやすいだろう?」
ブラウンが軽く笑う。
「お、市長のやつまーた太ったんじゃねぇの?」
マエダが細めになりながらうなずく。
そんな中次々と下の順位から発表されて従者の男が紙を張り付けていく。
そんな中1位の発表になって。
「人気投票1日目の1位シノブ&アイルのコンビ!!」
その声が聞こえた瞬間、わぁっ、て歓声が聞こえて2人が舞台の上に免れる。
「シノブちゃーん! すごくよかったよぉー」
「アイルちゃーん、めっちゃ気に入ったぁー!」
上がると歓声で舞台がつつまれる、とシノブの身体が足から不思議な感覚につつまれる。
「ああ、この感覚にはなんなでしょうか」
シノブはそういうと新しい感覚に戸惑いながらも喜びの笑みを浮かべていた。
「やったね! シノブちゃん」
アイルが喜びながらシノブに抱きつくと更に歓声があがり、シノブも自分でもしたことのない輝く笑顔を見せる。
「おおっ」
その笑顔を見て思わず感極まって、テツも思わず感動して笑顔になる。
"チクリ"
シノブとテツのその笑顔を見て胸に違和感を覚えるハツネであった。
"なんでございましょうこれは気のせいかしら?"
そして次の日の発表の時、"1位アイル&シノブ" その発表がなされたときまた歓声があがり、昨日と同じとびきりの笑顔をみせる。
"チクリ"
昨日と同じ、いや、それ以上の違和感となってハツネの胸に刺さる、それは昨日初めて感じた時から様々な場面でシノブの笑顔をみかける度にハツネの胸をチクリと刺して心のモヤモヤを大きくしていった。
"なんなんなかしら、この胸の苦しさは呪いの類いではないのは確かかしら"
その心を押し込めようとして1つ深い深呼吸をおいて茶菓子の準備を始める。
「皆様茶菓子の準備ができたのかしら」
そう言ってハツネはワゴンを運んできてお茶とお菓子を配膳していくのだが、テツだけ少しガチャリ乱暴に配膳をすます、ブラウンは少しククッと少し笑うが当の本人のテツは頭にハテナマークをつける。
「まったくなんで俺だけ!?」
そんな事をいいながらお茶を飲むテツなのであった、そして3日目の祭が終わり更に投票の結果が発表される。
「ウォッホン、3日目、本日で祭も最後ですがその栄えあるラストを飾るのはやはりこのペア、アイル&シノブだぁぁーっ!」
市長もノリノリで発表すると、またもや歓声があがる。
「テツー、やったよぉー!」
アイルがその発表を聞いてテツに抱きつく、それを見てシノブも少しためらう様子を見せるがテツに遠慮しながらも抱きつくと最高の笑顔を見せるとテツが少し顔を赤くして恥ずかしそうに顔をそむける。
"パキン"
その様子を見てシノブの心の中で何か壊れる音がする。
"ああっわかったこの気持ちの正体が、私はシノブを失いたくなかったのだ、ずっと一緒に暮らしていたシノブ、楽しい時もツラい時もはげましあってきたのに、今は今は今は・・・"
そう考えた瞬間幻聴が聞こえる、聞こえるハズのない声、今まで始末してきた者の声。
"あの男にとられそうか? なら俺たちにしてきたように始末すれば良いではないか? 簡単ではないか!?"
「なら簡単・・・」
ハツネはそういうとフラッとしのびよりテツをー。
「おお、ハツネさんちょうど良かった2人に言って離れるようにー!?」
「ええ離してあげるのかしら、永遠に」
ハツネはそういうとテツの脇腹にサクっと刃物を滑り込ませる、刃渡りは短いナイフであったが十分であった。
一瞬何が起こったかわからず空気が凍ったが、最初に悲鳴をあげたのはシノブであった。
「テツさん、テツさん、いやぁいやぁ血が血が」
その悲痛な声にハツネが我にかえる、手元のナイフとヌルリとした血の感覚。
「あああ」
顔がひきつり後ろに後ずさると自分のしたことから逃げるように逃げる。
後ろから悲鳴や怒号が飛び交うが、逃げることに徹したハツネを追いかけて捕まえる事はできなかった。
「・・・」
テツは薄れいく意識の中シノブが涙でグシャグシャにした顔がみえる。
"ばかだなぁ、死なないから"
そういうと意識がプツリときれるのであった。




