第92話
「ひぃぃぃ、だんなぁたぁすけてぇー」
ステージの妨害に失敗した世紀末的な格好の連中がこれはたまらないと逃げ帰っていく、投石を避けられるどころか投げた石が的確に反ってくるのだ、たまったものではない。
「・・・なるほどあそこが連中の拠点ですか」
舞台の上からずっと監視していたハツネが後を追いかけて一軒の小屋に駆け込んでいくのを見つける、それは路地裏にヒッソリ建っている目立たない地味な小屋であった。
「いかにもって感じの小屋かしら・・・さてと」
そういうとハツネは小屋の前に立つ。
「私はシノブのように隠密行動は苦手なので正面から行かしてもらうのかしら」
そういうと肩をコキコキとならして足をあげると一気に小屋の扉を蹴り抜く。
「ごめんあそばせかしら」
轟音とともに吹き飛ばした扉が小屋の誰かを巻き込んで止まる。
「何者だっ! 誰だ!」
二束三文のセリフを吐いて振り向く先程の悪党達。
「やれやれですね、演劇等でよく使い回されたセリフかしら、ならこちらもお決まりのセリフでも言うのかしら」
ハツネはそういうと一息ついて正面を見据えると刀をスラっと抜いてセリフをきめる。
「観念するのかしら悪党ども、ここが年貢の納めどきなのかしら」
「なんだこの女やっちまえ!」
「それもお決まりかしら」
ハツネがそういうと群がってくる悪党達を端から打ち倒していく、振り下ろす武器をかわしつつ峰打ちで刀を打ち込んでいく度に、ハツネの黒い髪が揺れる。
「なんだこいつ、そんな裾の長い服でなんていう動きしやがる」
「鍛え方が違うのかしら」
そういうとハツネは群がってきた悪党の最後の1人を峰打ちで打ち倒すと、奥から低く響く声が聞こえる。
「フフフやるじゃねぇか姉ちゃんよぉ」
そういうとこれまたお決まりのように身の丈は大人の倍くらいある体格の良い悪党が棍棒を担いで現れる。
「どこまでお決まりなのかしら」
ハツネがそういうと悪党が棍棒を肩にのせる。
「ああ!? お決まりねぇ、だったら姉ちゃんがここでやられるのもお決まりだぁだ!」
そういうと棍棒を物凄い勢いで振り下ろす。
"ドゴォォン"
小屋の床が勢いよく穴を開ける、それを見てハツネは少し身構える。
「少しはやるのかしら」
「少し? 俺はもっとやれるぜぇ?」
今度は棍棒を連続で振り下ろす、かわす度に風を切る音が聞こえる。
振り下ろす度に小屋に置かれた小物が吹き飛んでいくがその先に。
「まずいかしら、先程倒した悪党達が」
振り下ろした先に先程倒した悪党達が折り重なっていた。
「もらったあっ!」
悪党をかばおうとして刀で棍棒を受け止めるが、踏みとどまった足から鈍い音がする。
「んんん」
鈍い悲鳴をあげる、"受け方がまずかったかしら、足が・・・"
「おや? まったく自分で倒した連中をかばうのか? そのおかげで足をやったんだからなお笑いだな」
「なんの事かしら?」
「はん、平気な面しててもお見通しだぜ、さっきのは少し手応えあったからな」
そういうと悪党は棍棒を身構えてさらに振り下ろす。
「んんん!?」
苦痛に顔を歪ませる。
「やっぱりな、そらそらそらっ!」
さらに足に衝撃が走りとうとう膝をついてしまう。
「最近少し甘くなってたのかしら、これしきの事で」
悔しそうに見上げるハツネと見下ろす悪党。
「さて、年貢の納め時はそっちだったな、これで終わりだ女ぁ」
そういうとハツネの頭めざして棍棒が振り下ろされ轟音が鳴り響くのであった。




