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異世界にやってきたらズッ友は犬でした。  作者: 貼りマグロ


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第86話

 私の名前はシノブと申します。


 孤児になってからブラウン様の前当主マエダ様に拾われて幾十年、恩に報いる為に(あるじ)の為と(おのれ)を捨て、姉妹のハツネと共に汚れ仕事もいとわず頑張ってきました。


 その後、マエダ様と同じく日本からきたというテツ様という方と出会ったのです、最初はブラウン様に失礼な態度をとる無礼者と思っていましたし、ハツネの言う通り土葬してやろうとも思っていましたが、ガイア教の胡散臭い司祭との闘いの時に見せた闇魔法をカッコイイと言われて心が傾いたのは事実です、何故ならマエダ様とブラウン様以外にそのように言われた事はなく、他の方には敬遠されていたからです。


 そしてその後、何故だが自分とアイル様と普通に生きていては一生着る事はないであろう可愛い服を着て踊る事となりました。


 最初は恥ずかしいと思っており、練習が終やった後にいつものメイド服に着替えると安心していたのですが、いつからかあの格好が好きになって着たままで給仕の仕事したいと思ってしまいました。


 そして、本番が始まり舞台の幕が開けた時、見た事の無い世界が広がっていたのです。


 いつもなら、汚れ仕事で向けられる眼差しは怨み、絶望等の込めた瞳なのですが、今回は羨望、輝きのこもった瞳だったのです。


 それのなんと気持ちの良い事か、フワフワして仕事の時とはまた違った感覚で身体が勝手に動く忘れ得難い感覚だったのです。


 そしてありえないくらいの一体感、怖いものがないというのはこういう事なのでしょうか、それはとても言葉には表せない体験でした。


 それは舞台が終わった後も続き、私を突き動かそうとします、しかし私はふと思ってしまったのです私は私自身はどうしたいのでしょう?


 ブラウン様に仕える一方で、このような素晴らしい体験もしていきたいと願う思いが混在して今にも崩れ落ちそうな気持ちになってしまいます、私は本当にどうすれば良いのでしょうか?


 「・・・ふう」


 シノブはそこで筆を止め、誰に見せるまでもない(ひつ)を机にしまいこみ窓から空を見上げ呟くのであった。


 「私は本当にどうしたいのでしょうか」

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