第73話
「ここがいいのテツ」
「ああ、そこの硬くなっているところを頼む」
「ここだね、ほんとにコリコリだね、いくよ」
「ふぁぅぁ~、ああ腰がほぐれるぅ」
レッスンを終えたテツはアイルのマッサージを受けて気持ち良さそうな声をあげていた。
「ほんと、気持ち良さそうに声をだすよね、マッサージしがいがあるよ」
アイルがニコニコしながら腰を的確に指圧していく。
「さすがだぜ、薪割りで鍛えた力はだではないな」
テツが目を細めて口元を緩めるとそれを見て幸せそうに目を細めるアイル。
「失礼します、飲み物持ってきました」
そこに水を持ってシノブが入ってくる、彼女も普段から鍛えているからであろう、一日中レッスンしていても疲れた素振りはなかった。
「いやぁ、シノブさんもすごいなあれだけ踊っていて疲れた素振りがない、さすがだな感心するぜ」
テツがニッコリ笑って親指を立ててみせると、アイルが少し笑ってかえす。
「いえいえ、こちらも普段使わない筋肉を使っていたので少し新鮮でした」
シノブも少し恥ずかしそうに答えると、それを見て少し強めに指圧をして少し頬をふくらませる。
「まぁーたっく、調子がいいんだから、教える側が教えられる側よりへばってどーするの、少しは鍛えてよね」
「アタタタタ。わかったわかった、だから少しはゆ"る"め"て"」
テツが少しおどけて悲鳴をあげると、2人は軽く笑うのであった。
─その夜シノブは孤児院のお風呂に入っていた、火の魔力を蓄えている石を利用さる事により、沸いたお湯はちょうどいい加減である。
「・・・ふう」
レッスンでかいた汗をお湯を流してお風呂に浸かっていると色々考えていた。
"私はこのような事をしていていいのだろうかと"
「あら、シノブさん入っていらしたんですね」
ミュウがそこへ入ってくると、シノブがペコリと頭を下げる。
「すみません、入らせていただいております」
「いえいえ、いいんですよよかったらもっと使ってください」
「ありがとうございます、何から何まで」
「いいんですよ、皆さん楽しそうですし、特にシノブさんとか」
ミュウがそういうとシノブが少し表情が曇る。
「シノブさん・・・?」
その様子を見てミュウがたずねる。
「ええ、私がこのような事をしていいのかと思いまして・・・」
シノブがポツリと呟きはじめる。
「ミュウ様、ご存じだと思いますが私はブラウン家の諜報として必要とあらば暗殺もおこなってきました、ほとんど実行した事はありませんがそれでも何人かは手にかけております」
それを聞いてミュウがハイと小さくうなずく。
「なのに私は今すごく楽しいのです、それが怖くて・・・ふと見ると手が血が濡れているのではいかと見つめてしまうのです」
「それをテツさんに知られるのが怖いのですか?」
ミュウの問いかけに小さくうなずく。
「なら、知られないままで良いではありませんか、それでも知られてしまうのであればそれで良いではありませんか」
ミュウがそういうとシノブがミュウのほうを見つめる。
「それでも知られてしまうのでは良いではありませんか、聞いたところによるとテツさんはシノブさんの力を敬遠しないどころか誉めたとか、なら大丈夫ですよ」
ミュウがシノブの手を掴んでニッコリ微笑む。
「だから、ね」
ミュウはそういうともう一度シノブの手を掴むとシノブもニッコリ微笑むのであった。
そして夜はふけていくのであった。




