第162話
「おや? マダムその男は誰だい? やけるねぇ俺とのデートは断ったのに」
門までの道のりで、ふと頭の上のほうから皮肉のこもった声が聞こえてくるので見上げると、1匹の犬が家の窓から顔を覗かせてこちらを見ていた。
「おや、あんたいかい? だってアンタ前にデートしてやった時、小鳥追いかけてそのまま行方知れずになっちまっただろ? またああいう目にあうのはごめんだよ」
「ああ、それはなんというかその、俺をにらんできてケンカうってきたからよお、そのほらそういうのはオスとして威厳にかかわるだろ? な? な?」
「だったら、レディをほうっておくのは良いっていうのかい? そこのアンタ同じ男ならわかるだろ?」
過去にマダムとなにかあったらしい、スカーに同意を求めてくる犬、どうやらマダムに好印象を植え付けようと必死なのはわかるがあまり効果はないようだった。
「、、、まあ俺から言えることは、何もない、、かな、生きてりゃそのうち良い事もあるさ」
スカーは少しフォローをいれようとおもったが何も思い浮かばすありきたりの言葉しか浮かばなかった。
「そんなぁ」犬が情けない声をあげるとマダムがフォローをいれてくる。
「まぁ、アンタは顔は良いんだからさ、あとは落ち着いた性格になればモテるんじゃないのかい? そうなったらまたデートしてやるさね」
「ほんとか? やったぜ、ありがとうマダム」
犬はそういうと尻尾をフリフリさせて室内に入るとそのまま走り回り、家の中をめちゃめちゃにしてしまったのだろう、飼い主らしき怒鳴り声が聞こえる。
「コラー! またアンタはそうやって部屋の中をメチャメチャにする、罰として今日のご飯は抜きだからねっ!!!」
「クゥーン」
カオフクの街の空に情けない犬の遠吠えが響くのであった。