第161話
「さてと、どこからどう探したら良いものでしょうか」
お腹が満たされ、店をでるとシノブが街をぐるりと見回すと、そこは賑やかに多種多様の人種がごったがえしており、大きな魚の群れのようでもあった。
「今までの街より人が多いな」
港街のカハタに近いせいもあってか、今まで立ちよった街よりも人は多く賑やかで、熱気にむせ返っており圧倒されてしまう。
「これは聞き込みするのも一苦労だな」
「どうする旦那?」
みんなで思案にくれているとどこからか、女性の声が聞こえてくる。
「おや? そこの色男から不思議な匂いがするねぇ? 匂いは犬のそれなのに見た目は完全に人間じゃないかい?」
ちょっとダル絡みしてきそうな声の方向を見ると何もいない、左右見回してもいない。
「どっち見てるのさ、下、下」
その声に反応して下を見ると1匹のパグ犬がこちらを見上げていた。
「お、今しゃべったのおまえか?」
テツがしゃがんでヨシヨシしようと手を伸ばしたところを華麗にパリィされる。
「ちょっとこのマダムに気安くさわらないでくれる?」
パグ犬がそういうと軽くフンというとスカーに歩み寄みよる。
「ほんと不思議だねぇアンタ、興味わくねぇ」
スカーに興味津々なマダムと名乗るパグ犬は何か閃いた顔をする。
「そこのアンタ、1日この色男貸してくれたら何か手伝ってあげるわよ、こう見えても街で顔がきくのさ」
マダムはそう言うとテツの顔をじっとのぞいてくる、街で顔が広いということは、それなりに経験もあるのだろう、犬は思えない迫力を感じる。
「ううむ、この街で人探しは下手すれば1日どころじゃなく、1ヶ月かかることもあり得る、色々天秤にかけて考えた結果ー」
スカーの肩を優しくポンっと叩く。
「旦那!?」
「頼んだぞ!」
ということで、スカーは今マダムと街にきている、肩から大きなバッグをぶら下げてそこに
マダムをのせているのであった。
「ぬん、、、」
当事者のスカーはちょっと恥ずかしそうにしていた、顔を上にむけてマダムの顔をあまり見ないようにしていたのだ。
「スカーだっけ? デートは初めて? 意外と可愛いのね強面なのに気に入ったわ」
そうやって街中をデートしているとかけてくる声がある。
「おや? マダム今日は人間とデートかい? めずらしいねぇ」
その声の方向には1匹の茶色毛並みの一匹の犬がいた。
「アンタかい? よく嗅いでみなこの色男は犬だよ、どういう原理かわからないけど人間の格好してんのさ、さてちょうどいいところだよちょっと聞きたい事があってね」
そういうとマダムは事情を話はじめる。
「なるほどねぇ、暗緑色のショート髪の女の子ねぇ、いやいや人の流れ多いからなぁおれじゃちょっとわからんなぁ」
「そうかい、ありがとね、だったら門の方にいってみようかしらねぇ」
「というとカハタ行きの門のところかい?」
スカーがそうたずねるとマダムはうなずく。
「確かアンタ達ロッシャーの方からきたんだっけね、そしたら人を探すならカハタ行きのほうが良いねぇ」
そういうとスカーとマダムはカハタ行きの馬車がでる門のところに向かうのであった。