第158話
場所は先程より変わって、市場の端に建っている食堂である。
中は石造りになっており、壁には光を取り込むための穴が空いており、強すぎる光を布で遮光して室温を快適に保っており、例の冷却の魔方陣が描かれた布が更に快適さを後押ししていた。
「しかし、この椅子は軋み具合といい、ふかふか具合といい、ちょうど食堂の椅子って感じがして良いなこれ」
そういいながらテツは運ばれてきたスパイシーな匂いのする鶏肉の料理に、ゴクリと思わずツバをのみこむ。
「フフフ、良いだろう? ここの料理は匂いはもちろん味も一級品だからな、ドンドン食べてくれ」
ロッシャーはそう言うと手近にあったブロック状の牛肉を串にさして、照り焼きで仕上げた料理を口にする。
「お、店長また腕をあげたようだ、さらに美味しくなっている」
そうして食事の時間がすぎてゆき、全員がお腹を満たした頃にアクロスが、先程の門について話す。
「そういえば、あそこの門だったわね、あそこから真っ直ぐでるとカオフクの街につくわ」
「カオフク?」テツがそうだずねるとルブラがさらに答える。
「ああ、実はそのさらに進んだところにカハタという海に面した港街があってな、そこで生産されている塩を、カオフクの街経由で輸入しているんだ」
「はかた?」
「違うわよぉ、カハタよ、カハタ、なんでかテツみたいに間違える人結構いるのよねぇ」
ラクロスとテツのそんなやりとりを聞きながらシノブが頭を下げてお礼をのべる。
「ルブラ様、貴重な情報ありがとうございます、ではさっそく支度を整えてカオフクの街に向かいたいと思います」
「ああ、明日ちょうどカオフクから塩を運ぶ定期便がやってくるからな、それに乗せてもらうがいい」
「ルブラ様、よろしいのですか?」
「かまわないさ、私の夫の親友の為ならこれくらい安いものさ」
そのやりとりを聞いてルブラに抱きつくアイルなのであった。
「ルブラ~ありがとね~」
するとスカーがそんなやりとりを聞いて「じゃあ、明日に備えて英気を養わないとな」といいつつ串焼きを頬張るのであった。
そして食事を終えて、宮殿に戻り身支度を整えるテツ一行たち。
「よし、杖もピカピカに磨いたし、忘れ物もなし!」
テツが指差し確認して、忘れ物もチェックをしていると、シノブが不安な表情をしているのに気づいて、肩にそっと手をおく。
「シノブ大丈夫だよ、ハツネも笑って俺たちを迎えてくれるさ」
「テツ、、、そうですね、、、そうですよね」
そういうと身体をテツに預けるシノブであった。