第157話
ロッシャーの市場の賑わいを感じながら歩いていると、数人の子どもが駆け寄ってくる。
「あー、ハツネのおねーちゃんだ、帰ってきたんだ!」
「用事はすんだの? ならアソボー」
唐突に投げかけられた言葉に、詰め寄ろうとするシノブだが、腕を組んで隣を歩いていたテツにとめられる。
「落ち着けってシノブ」
「•••すいません、ハツネの名前がでたものですからつい」
その2人の様子をみて、不思議がる子どもたちだったが、少し考えてテツが口をひらく。
「あー、お兄ちゃんたちはそのハツネのお姉さんをさがしているんだ、こちらは双子の姉妹のシノブお姉さんなんだけど、よかったら今どこにいるか教えてくれるかい?」
テツのその言葉に子ども達は納得して、市場の外側にある門をさして口を揃える。
「ハツネのおねーちゃんだったら"さがしものがあるから"ってあそこの門からでていったよ」
「ボク達それはどんなモノかわかりますか?」
シノブがそうたずねると子ども達は首をかしげて口をそろえるのであった。
「ボク達も聞いてみたんだけど、自分でもわからないって言ってた、お兄ちゃん達はわかる?」
そう聞かれてテツは頭をグルグルと回転しはじめる、オレを刺した事をなかった事にするなら時間そのモノを、巻き戻すか過去に戻ってやり直したりできるモノか魔法が妥当なところだろう、しかし前に何気に聞いた話ではそんなモノはおとぎ話でのシロモノで、あったとしても探して手に入るようなモノではない。
「•••となると」
テツはひとつ頭に浮かんだ事がある、それはまだ現代にいた頃に見たドラマで、似たようなシーンで刺した人物が、自分を許せなくて自責の念にかられ姿をくらまし、刺したことを許せる自分探しをしながら、ヒッソリと暮らしていくというものである、そのドラマの最後は主人公が探しだし和解してハッピーエンドというものであった。
「ひょっとしたら、俺を刺した自分を赦せる自分を探しているのかもな、俺は別にいいんだけどなぁ、、、」
頭に浮かんだ事を要約してそうつぶやくとシノブが子どもの頭を優しく撫でながらテツのほうを振り向く。
「テツがそうでも、ハツネはその自分が赦せないのでしょう、私だって立場がおなじならはうしたと思います」
そういうと子ども達にお礼を言うと、後ろをコッソリつけていた一行に声をかける。
「だそうです、あの門の向こうはどこに続いているんでしょうか?」
そう声をかけられてバツが悪そうに頭を搔きながらでてくる皆と、それを見て"ええぇー!!!"と声をあげるテツなのであった。