第149話
「うぷっ」
下水道の中、罠用のお酒を入れた樽の隙間から極めて濃いアルコールの匂いと下水の臭いが混じり合いまるで死霊などの実体を持たないモンスターのようにまとわりつく。
「下水か、酒のどちらかのにおいであればまだ我慢できるが、二つがあわさるとこうもヒドイとは」
ルブラはそう言いながら樽を積んだ荷台をひく部隊の先頭を、吐き気をおさえながら歩く。
「私もでございます、ルブラ様」
一緒に同行しているシノブもその匂いを堪えながら歩く、油断しているとそれこそ死霊みたいに、口や鼻から侵入して意識を刈り取っていきそうであった。
そうしてしばらく歩くとクマネズミ達と戦闘になった場所にたどり着く、倒したネズミ達はオーガが回収したのだろうか綺麗になくなっており、クマネズミの血の臭いだけがただよっていた。
「うむ、ここらへんでいいだろう、みんな樽の蓋を割って気配を消してかくれるぞ」
ルブラが号令をかけると、部隊は荷台を止めて樽の蓋を叩き割ってそばを離れて隠れる。
すると酒の濃厚な匂いが地面を這いながら瞬く間にひろがっていく。
「これは予想以上にヒドイ臭いになったな、はやくきてくれよ」
ルブラがそう言いながら吐き気をこらえていると願いが通じたのかオーガがすぐに姿を現す、しかもその手には最初の殺鼠剤で駆除したネズミが握られていた。
「ナンダァ? サケノニオイガスルナァ?」
そういいながら周りを一応警戒しながらも樽に気を取られている様子だったが、我慢できずにネズミをひとかじりするしながら樽に顔をつっこみ音をたててすすりはじめる。
「うぇっ」
その様子に隠れていた部隊の1人が吐きそうになるが慌ててこらえる。
「•••キノセイガァ」
そういうとオーガは荷台を引っ張りはじめ奥に運んでいくき、それを確認すると同時に"ぷはっ"とはりつめていた気を緩めるてその場にへたりこむ。
「しかし、殺鼠剤で駆除したネズミをなんというかその、かじっていたが大丈夫なのか、、、?」
ルブラはなんとなく疑問にも思ったが頭を振ると次の号令をかける。
「テツ殿によれば、そのまま時間がたてば酔いつぶれるだろうから、様子を見つつ戦闘にはいり討伐するものとする、ゆえに備えて少し休憩してから前に進むものとする!」
そして、少し休憩しながらも気をはりつめて辺りを警戒しているシノブにルブラが近づきそっと肩に手をおき、「シノブ殿も力を貸してくれて本当にありがとう」と一言礼をいうとシノブが慌てて、いえいえと手を振る。
「いやいや、実際その通りだ、ネズミの駆除にしたってあんな効率的な方法があったとは知らなかったし」
「確かにテツ様は私達が知らない事を沢山知っておられるみたいです、ダンスのときも、、、」
といいかけたその時、奥から地鳴りのような物凄い音が響いてくる、しかしそれはよく聞くと先ほどのオーガが酔いつぶれて、かいたイビキのようであった。
「ふふ、シノブ殿ダンスの話はまた後で、どうやらテツ殿の作戦が功をそうしたようだ、皆のもの前に進み、目標を見つけしだい戦闘に入りそれを討伐するものとする!!」
ルブラがそう号令をかけると部隊の空気が一瞬で張りつめるのであった。