第13話
りんご売りの店、お酒をオープンテラスで飲んでいる人達、そして行き交う人々の喧騒と色々な食べ物の良い匂い。
それらをみながら言葉がわからなければただ不安にあけくれて、心身ともにやられて衰弱して死んでいたのではないかと考えてしまう。
「どうかしたのテツ?」
不安そうな顔していたのを心配してアイルが顔を覗き込む、すると完全に気のせいなのだがフワッと良い匂いがしてくる気がするのである、あれ、ホントに男だったよな?
「いやいや、なんでもねぇって心配するなよ」
「ほんと? ならよかった」
そういってにっこり微笑むアイルの笑顔があんまりにもかわいくてやられそうになる俺、いかんいかん。
そんな事をしていると向こうからいかにもといったガラの悪い男が1人やってくる。
「よぉ、お二人さんなかなか見せつけてくれるねぇ、どおよこの俺様もまぜてくれねぇかな?」
ありきたりの台詞とお酒の匂いをはきながら近づいてくる男、体格はそう強そうもないし頭はツルツルで服は何かの皮でこしらえたものでテカテカと光っているのが三流感をいっそう引き立てていた。
よし、ここはいっちょ俺が役にたつというところを見せてやろうじゃないかと、この相手なら大丈夫かなと値踏みしつつ前にでようとすると、スッとアイルが前にでて男の顔を片手でミシミシと掴む。
「んんんっ!?」
俺があっけにとられているとアイルが丁重に、さかし気迫を込めて言葉を返す。
「あの、私達忙しいのでご遠慮ねがえませんでしょうか?」
そうすると男は驚いた顔で情けない声をあげて、それはもう見事に逃げていく。
「いやあ、困っちゃいますよねぇああいう人達って」
といいながらハッとした顔をして俺の服の袖を掴む。
「あの、それでもこわかったです・・・」
そう言いながらしおらしい表情をするアイルだけれども君も色々すごいよ?
などど思い立つも頭をポンポンっと撫でてやる、すると嬉しそうな顔するのでまんざらでもないなと思ってしまう自分がいるのであった。
後日、男の顔掴んだ握力は日々薪割りを頑張った成果だという事が判明する、俺もがんばろうかな・・・。




