第123話
四人は空を見上げて休憩しているとヤタガラスが思い出したように口を開く。
「おおっ、あまりの出来事にスッカリ忘れておりましたがこの周辺はなかなか危ないので注意が必要でござる」
「そうなの? やっぱり何かでるの?」
テツがそう聞き返すとうなずくヤタガラス。
「はい、この辺りはロックコヨーテという猛獣が生息しておりまして、普段はおとなしいでござるがお腹を空かしている時は狂暴になりますゆえ注意が必要でござる、カラスの時は拙者もよく襲われかけたでござる」
「へぇ、そうなんですねヤタガラスさん、特徴はどのような格好をしているのですか?」
シノブがそうたずねると大型の犬くらいの岩を指差して答える。
「大きさはあのくらいで、色もあんな感じでござるな、毛皮の色が岩と同化して気づきにくくなっているのでござるよ」
そう解説するとテツがなるほどとうなずく。
「それと、後もう1つ身体中から染みでている油が毛皮を固めてまるで岩のように硬いので、そう意味でもロックコヨーテと呼ばれております」
「なるほどそれはやっかいね、柔らかすぎるのは嫌いだけれど硬いのもいやだわ」
シノブがそういうと、ヤタガラスが指した岩を見つめて小石を投げる。
「まさか、あの岩ロックコヨーテだったりして」
「シノブさん、まさかそんな事さすがにあるわけー」
ないと言おうとした瞬間岩が動きこちらを見つめて吠えてくる、それはまさしくロックコヨーテだったのである。
次の瞬間周りに気配を感じたので見回してみると案の定十匹程のロックコヨーテにかこまれていたのであった。
「そんなお約束なっ!」
テツが誰に入れるでもないツッコミを入れるとシノブとヤタガラスがそれぞれ武器を抜き身構える。
「テツ殿と、スカ―殿は真ん中にいてくだされ!」
ヤタガラスがそう叫ぶと、テツとスカ―が抱き合って"お、おう"と応えるのであった。
「全部で十匹、五匹はまかせましたよ、ヤタガラス」
「了解でござる、シノブ殿」
二人はそういうと深く腰を落とし構えて、間合いをはかる、緊張とひりついた空気が漂う中最初に動いたのはシノブであった。
"真閃一刀 雷鎚"そう叫ぶと自らの影で作った棍で穿ちを連続で放ち、ロックコヨーテの頭に正確に当てていくとその音がまるで雷が落ちような音が轟くのであった。
"ドゴォーン"
そんな音とともにロックコヨーテがぶっ飛んでいくとヤタガラスが腰の刀に手をかける。
「やるでござるな、では拙者も」
ヤタガラスはそういうとロックコヨーテの喉元に刀を突いて見せる、鮮やかなその突きは五回放たれて正確に貫く。
「露払い」
ヤタガラスがそういうとロックコヨーテの喉元から鮮血が噴き出して絶命する。
「お見事です、ヤタガラス」
「イヤイヤ、シノブ殿もたいしたものでござるよ」
こうして二人はお互いをたたえるのであった。