第113話
「ええと、後は血痕で読み取り不可ですが、ざっとこんな感じですね」
シノブが日記をペラペラとめくりながら頷くと、日記からはかすかに臭いがする。
「なるほど、意識の共有実験、よくわからないけど難しいのそれ?」
鼻をつまみながらたずねるテツ。
「そうですね、精神を支配して操るのではなく共有するものですから、意識の相互が不可欠になってきます、しかしそれではお互いの意識の境目がなくなってしまって・・・」
「こうなってしまうのか」
そういいながら日記の最後の一行に目をおとす。
「そうみたいですね、そして安全装置とやら発動させたみたいですね、それについてはスイッチらしきものがありましたが、それがどのようなモノだったのかまではわかりかねますが」
そこまで聞いて店主が思い出したように口を開く。
「なるほど、大体事情はわかった、だったら気になる事がひとつあるのぉ、確か屋敷の周りが一年ほど氷っておっての、まぁ一週間前くらいには溶けて無くなっておったが」
その話を聞いてシノブがうなずく。
「なるほど、おそらくは氷漬けにしてネズミを凍死させようとしていたのが」
「思ったより耐性があって効果が切れるまでのりきってしまったってところか」
テツがそういうと屋敷に向かって手を会わせると、どうか安らかに眠ってくれと祈るのであった。
それに合わせてシノブも手を合わせると、店主に向き直ってたずねる。
「では、店主教えていただけませんか屋敷にいた人間の事を」
「うむ、よかろうではワシの店でゆっくりと話そうかの」
そういうと店主はシノブに向かって頷くのだったが、テツが少し困った顔になる。
「あのー、俺はどうれば?」
苦笑いを浮かべるテツを見てシノブはハッとして恥ずかしそうな顔をする。
「す、すいませんテツ様、色んな事が起こりすぎてついつい仕事モードになっておりました、そのあの、、、少しお時間がかかりそうなので、スカーと一緒にお待ちいただけませんか?」
シノブが申し訳なさそうなさそうに言うと、テツがそういう事ならとスカーの頭を撫でながら、だったら村を見て回ってくると手を振るのであった。