第109話
キシッ・・・
扉に手をかけるとなんの抵抗もなしにスッと開く、長い間放置されている割には扉自体雨風にさらされて傷んでいるものの、歪みもあまりなくどちらかといえば状態は良いほうであった。
「これを造った職人の方はなかなかの腕の方のようですね」
シノブは感心しながらも気配を殺し中に潜入すると停滞していた空気が開かれた扉から流れだす、すると微かに刺激臭が鼻をつく。
「これは・・・」
その臭いは幾度もなく嗅いだ事のある臭いである。
「動物の糞尿の臭い、なるほど物音、白い人影もその動物の仕業という事ですか」
シノブはそういうと全身の警戒レベルを最大限にひきあげる、動物の類いなら先ほど扉を開けて別荘の空気の流れが変わった次点ですでに感づかれているだろうと考えたからである。
「影衣」
シノブはそういうと自らの影を全身に纏い、暗闇に溶け込む、見た目はゲーム等でもよくでてくるような特殊部隊のスーツのそれであった。
「久々ですね、この緊張感」
シノブはそういうと慎重に進む、建物内での戦闘になるのであれば有利なのはここを巣にしている向こうが圧倒的に有利である。
「どこか広い場所にでないと・・・」
そういって前に進んでいくと、周りを走る音が聞こえてくる、それも何匹もである、そして鳴いて威嚇してくるのであったが、その鳴き声には聞き覚えがある、何回も討伐した事のある鳴き声であり、闘い方も心得ている。
「なるほど、ジャイアントラットですか、確かに建物に住み着く定番の中型の動物、魔物よりかは易いけれど」
そうなれば白い人影の正体が気になる、ジャイアントラットは灰色の毛並みだからである。
「けど、今は目の前のあなた達に集中しましょう!」
そういうとシノブは影で作った棍を加工すると三節棍に変形させて構えるのであった。