第4章 第103話 初めての村の事
朝、退院してしばらく旅の準備でドタバタしていたが当日、テツは孤児院の部屋で旅支度を終えて窓から差し込む光を浴びながら色々な考えを巡らせていた、その中で一番考えていたのは無論ハツネの事である、後に彼女の部屋から見つかった手紙の内容を推考すると、どうやらハツネはシノブがガイア教の一件あたりから俺に惚れていたらしくて、その時ハツネはシノブに対してモヤモヤとした気持ちがあったのだろう、それがアイドルの一件でハッキリと嫉妬になって、俺に奪われまいとあの行動に至ったのだ。
「まぁ、一緒にいつもいたんだもんな、それが盗られるかもと思ったならそうなるか・・・」
テツがそう呟きながら足をさする、リハビリしても少し動くのは不自由をようする感じであった。
「テツ様おまたせしました」
そこへシノブがやってくる、シノブもテツと同じく旅をするための装いである、本心でいえばどこぞのラノベやアニメみたいにメイド服のまま一緒に旅したかったけれどもそうはいくまい、その他諸々の感情を堪えて、"似合ってんじゃん"とニッコリ笑うとシノブはちょっと恥ずかしそうにソワソワするのであった。
それを見て心の中でこれはこれでいいかもと、思いながら心の中で親指をたてるのであった。
「二人とも準備は出来ているようだな」
そう言いながら二人を呼びにきたのはブラウンであった。
「ほう、なかなか似合っているなシノブ」
「ブ、ブラウン様、お、お恥ずかしいところを」
ブラウンに言われてワタワタしたシノブを見て、テツが準備は整ったぜと振り返と、「ほほう、これはこれは、確か日本語で馬子にも衣装というやつか」ブラウンがそういうと、うるせーと照れながら返すテツなのであった。
さて、いきますかテツはそういうと松葉杖を手に取りあるきだすとシノブが支えにはいる。
「ああ、すまないシノブさん」
「いえ」
などとやり取りしながら馬車の待つ玄関まで向かうと、ミュウがニッコリしながら包みを渡す。
「気をつけてくださいね、これお弁当つくっておきましたお腹空いたら食べてください」
「ありがとう、ミュウさん」
そういうと一礼をして頭をあげると、アイルの姿がやはりないのを確認すると寂しく笑う。
「やっぱり、アイルがいないのは寂しか?」
ブラウンに言われて"まぁそうだな"とかえす。
「まぁ、また会える時もあるだろう」
テツがうだといいなと呟きながら馬車にのりこむと、シノブがスカーを抱えて馬車に乗り込む。
「これからよろしくお願いしますね、スカーさん、それとゼウさんいままでありがとうございました」
シノブがそういうとゼウとスカーが同時にワンっと吠える。
するとそれを合図にしたかのように、御者が鞭を打ち馬車を走らせると、こども二人が泣きじゃくりながら手をふるのであった。
「いや、まさか俺がこんな感動的な別れを体験するとはね、世の中わからないもんだな」
テツがそういいながら鼻をズビっとすいあげると、シノブがそっと布を差し出す。
「ああ、ありがとシノブさん、ところでスカー、ハツネさんが逃げていったのはこっちの方角であってるんだよな?」
「ああ、あの時間1人メイド服の女性が走って逃げていくのを仲間が見ている、しかもおそろしく速いスピードでな」
「間違いない、ハツネさんは能力向上の魔法が使えるからな、この先の街にまだいるからわからないけれどまっててくれよ・・・」
テツがそういいながら先に続く空を見上げるのであった。