やっぱり面倒事?
‥‥‥不定期投稿とは言え、ひと月近くも空けたことをお詫び申し上げます。
少々期間が開いただけに、ちょっとばかり違和感も…‥‥申し訳ございません。
SIDEフレイ
‥‥‥謎の空間の一軒家が消えうせ、出て来た宝箱から手に入れたのは一冊の日記のような物。
真っ赤な瓶もセットであり、中には何やら液体が詰まっている。
「‥‥‥どう考えても怪しさ満点と言うか、瓶が赤いせいで中身が分からないな」
「飲まないほうがいいとは思うが‥‥‥」
フレイとリールは手に取ってよく見てみるが、まったくわからない。
もしかすると、この日記らしい物の方が、この瓶の中身についての説明書ではなかろうか?
試しに開いてみると、案の情というべき内容が色々と書かれていた。
「『コア分身液?』」
「何やら説明があるが…‥‥なんか難しいな」
―――――――――――――
『コア分身液』
ダンジョンコアの一部であり、自立活動が可能である。
ただし、活動には制限が欠けられており、ダンジョンコア自身が見極めつつ、その渡す相手の影響をある程度受けなければ不活性となり、腐ってしまう。
意思を持ったダンジョンの一部とでもいうべきものではあるが、コアと同一であるかは成長によって異なる。
―――――――――――――
要はこの瓶の中にある液体は、どうやらダンジョンコアの一部とも言うべき液体らしく、成長するらしい。
ただ、この液体が活性化とやらをするまでは原則近付くことができず、それまでに触れたりしてしまうとその時点でもうだめになり、ただの腐臭を放つ汚水へと変貌するようだ。
…‥‥そして詳細を読み進めていくと、この空間自体についての説明も書かれていた。
どうもあの今はもうない家とかは、このダンジョンが生み出した待機室というべき場所。
コア自身が液体を渡す意思を持って招き入れ、その活性化の時まで入れた人‥‥‥この場合はフレイが滞在できるようになっていたようだ。
リールが全裸で入った原因もなぜかきちんと書かれており‥‥‥
「‥‥‥コアを殴ろうとしたって‥‥‥その罰でひん剥いたってあるんだけど」
「‥‥‥」
リールの方を見れば、ふぃっとフレイから目を背けた。
この日記帳というか説明書、どうもコア自身が説明を省くためにわざわざ用意したもののようで、外の様子もしっかりと書かれている。
ボルド、フラウ、ユキカゼも現在待っているようで、ゾンバルに至ってはうろたえても仕方がないという事で、その場で寝ているらしい。
「あの糞爺、心配もせずに眠りこけるとか‥‥‥‥」
「落ち着けリール」
ゾンバルの動きに対して、リールがいら立ったが何とかなだめる。
ただ、ナビリンに関しては記されていないようだが…‥‥うーむ、ナビリンはスキル扱いで、この空間にいる間はそのスキルが封印されるとかいう仕掛けもあるようだし、その影響があるのかな?
何にしても、最後まで読み進めて見ると、脱出方法が記されていた。
この空間は、元々このダンジョン分身液が活性化するまでの待機室のようなものであり、活性化した今はもう間もなく出られる頃合いになるようだ。
そして、その出るための最終的な段階を越せば、すぐにあのコアの部屋へ戻れるようだが‥‥‥
「最後は瓶を空ければいいのかな?」
「いや、違うみたいだな。ほら、ここ」
リールが指をさしたところを見ると、小さく分身液についての注意書きがあった。
活性化した今は、この瓶から出せばいい。
だがしかし、出た後は液状ではなくなり、きちんとした固形状の姿を取る。
「でも、瓶を開けた人の所有物になるようだけど‥‥‥‥その姿は完全にランダムなのか」
「おぞましい姿とかになったら最悪だろうが‥‥‥‥どうなるのか気になるな」
何にしても、どの様な姿であるとは言え、このダンジョンのコアの分身のような物。
成長すれば違う者としても扱えるそうだが、ダンジョンコアの分身というだけあってただものでは無いのは間違いないだろう。
「何が出るのかはわからないけど…‥‥開けてみるか」
「ああ、そうだな」
とりあえず、フレイがここに元々呼ばれたので、フレイ自身がその瓶のふたを開けることにした。
内容を読むと、開け方としては中身をきちんと出すようにひっくり返して、そこから蓋を開ければあとは良いらしいが…‥‥
「それじゃ、オープンっと」
瓶をさかさまにして、蓋をキュッと開ける。
案外簡単に開放し、中身の液体が地面に流れ出す。
すべてが落ちると、グニュグニュと動き始め、形を形成していく。
「さてさて、どんな形になる事やら‥‥‥」
「量的には、流石に大型の物にはなら無さそうだが‥‥‥」
なんというか、変わっていく様子にドキドキと期待と不安が入り混じる。
リールも同じ気持ちのようで液体から目を離さない。
そうこうしていくうちに、液体自身の動きがだんだん定まっていき、しっかりとした姿を形成し、その全貌がしっかりと生み出された。
色も変わり、瓶の赤色同様赤かった液体は今、目の前で色が肌色へと変化していき、人の手足のような物を形成していく。
髪が生え、色は液体時の赤さとは変わらず、真紅を思わせる色合い。
どうやら人型になりそうだが‥‥‥‥ここでふと、フレイはある不味い事態に気が付いた。
「あれ?これってもしかして…‥‥衣服は形成しないやつか?」
‥‥‥見れば見るほど肌が増していき、全裸感が強くなる。
しかも気のせいか、ちょっとずつ女の子のような体になっていき、このまま見るのは流石に不味い。
とはいえ、リールの服代わりにした布もあの家が無くなった今ではもうないし、代わりになるものは‥‥‥
「上着ぐらいか…‥‥」
「それしかないな」
いや、それしかないなというけど、目がちょっとずつ怖いものになっている。
何にしても、あの目つぶしが再度訪れるのは恐ろしいので、上着を脱いでリールに渡し、彼女が液体からきちんとした姿を取り始めてきた分身液とやらに着せるのであった。
そして数分後、姿の形成が完了した。
身長的にはまだ幼い少女だが、それでもはっきりとした赤い目に、赤い髪色はここのコアの色を思い出させ、意志の強さを見せる。
目をしっかりと見開き、自身の体の状態を見て様子を確認し…‥‥フレイの方へ顔を向けた。
「‥‥‥形成完了を確認。ダンジョンコア『バルブルリア』分身体、意思成立」
そうつぶやき、つかつかとフレイの前に歩み寄ると、跪いた。
「開封者確認、貴方を当方の所有者と認定。どうぞ、ご自由にお使いください」
「ご自由にって…‥‥いや、そもそも色々と尋ねたいこともあるけど…‥‥」
喋り方が結構まともというか、硬い。
というか、あの液体がこんな少女の姿を取るとは思わなかった。
「また、コア自身の記憶も引き継ぎ、そちらの貴女は『凶悪怪力女』とも認定しました」
「…‥‥何でそんな認定の仕方をするんだぁぁぁっ!!」
訂正、硬くなかった。
むしろ余計な一言を言って、場を混乱させるやつだこれ。
自業自得な事だと思いつつも、この先が物凄く面倒そうな予感に、フレイは襲われるのであった…‥‥
瓶から出て来た液体は、いらぬ一言毒舌少女となった。
いや、ダンジョンコアの分身という割には、人間味あるな(悪い意味で)。
何にしても、この空間から出た後の面倒事も予感させられ、フレイは盛大な溜息を吐くのであった。
次回に続く!!
‥‥‥次回、久しぶりのユキカゼ、フラウ、ボルド。あ、ゾンバルさんは放置したいけどたぶんできないな。




