ダンジョンの中は面倒である
少々時間的に不定期
SIDEフレイ
「ダンジョンの中と言っても、案外明るいな‥‥」
「なぜか明かりもないはずなのに、明るいのがダンジョンの不思議なんだよね」
フレイのつぶやきに、サブローがそう答えた。
現在、フレイたちはダンジョン『ジャコーウヤ』に入っているのだが‥‥‥下層へ浮かうタイプのものであり、階段を目指して進んでいた。
まだ若いダンジョンであり、そこまで深くないそうだが中に出るモンスターはそれなりのものばかりである。
ゴブリン、ウルフ、スライム、と言う序盤にでそうなモンスターは言わずもがな、中にはそれらの上位種とか進化種とかいうハイウルフやレッドゴブリン、中にはまったく関係の無さそうなデブロックとかいうモンスターまでいたのだ。
「と言っても、弱いなこいつら‥‥」
先ほどから殴る、蹴る、投げる、叩きつけるなどの攻撃を行っているが‥‥‥それもこれも一撃で逝ってしまった。
【いえ、一応この世界の常人にとってはてこずるレベルのものが多いようです。単にフレイが無茶苦茶なだけです】
つぶやきに対して、ナビリンが呆れたような声を出す。
酷いな、そこまで無茶苦茶なわけではない‥‥よね?
ふと疑問に思って振り返ってみれば、サブローやジョン、リアなどが苦笑いを浮かべており、ケンタに至ってはもはや暗黒物質になり果てていた。
「‥‥ケンタさん、ものすごい落ち込んでいますか?」
「いや、別に‥‥そう、ただ単に、こう、暗くなっておきたいだけなんだ‥‥」
「ああ、ケンタの奴がついに暗闇と同化し始めたやねん」
「よっぽど落ち込んでいるというか、格闘家としてのプライドが折れまくっているんだろうな‥‥」
ケンタの様子に、ジョンとサブローが同情のまなざしを送る。
「仕方がないわよケンタ。あんたよりもあの子の方が才能があり過ぎるだけで、人は人、自分は自分で違うだけよ」
リアがそう言ったが…‥‥トドメとなった。
「ぐふぅ!!」
血反吐のような物を吐き、膝をつくケンタ。
「才能……それがここまでのものとは‥‥‥ぐふっつ」
「ちょっとケンタ!?」
ケンタのその状態に対して、リアは慌ててフォローをしようと試みる。
「大丈夫だってば!!この件が終われば後はあの子を学園の方に出せばいいし、一度別れれば早々出会うような事もないでしょう?そうすれば貴方はプライドが傷つくこともないし、徐々に実力を伸ばせばいいのよ!!たった一人でハイウルフの群れを殲滅するような人と、今の貴方の実力を一緒にしたら、それこそ天と地ほどの差があるからダメなのよ!!」
「がはっつ!」
「‥‥‥あ、今の言葉で完全に倒れた」
「今のはひどいな‥‥‥トドメを刺したぞ」
哀れケンタ、仲間からの援護のつもりの言葉に、逆に傷をえぐられるような事をされて動けなくなったか。
まぁ、なんにせよ、どうにもならないのは事実かもしれないが‥‥‥それは別として、何とか現kウィ御取り戻してくれないと、空気が重い。
「そ、そうだケンタさん。格闘家と言うからには、何かこう、己だけの必殺技とかあるんですか!」
空気を換えようと俺はそう質問した。
某7玉集めての奴だと、なんとか波みたいなのがあるけれども、この世界の格闘家にはそんな技を扱えるような人がいないだろうか?
「ん?‥‥あるぞ」
「じゃあ見せてください!俺にはできないようなすごい奴を!」
「見たいのか?」
「見たいです!」
「‥‥‥よし、見せてやるぞ!」
何とかモチベーションが戻ったようで、機嫌を直すケンタ。
他人だけど、今はこうしてともに行動しているわけだし、空気が重いままだと居心地が悪いからね。
「ちょうど良いところに、獲物がいるな」
そう言いながら、ケンタが見たのは正面から攻撃を仕掛けようと駆け寄ってくるゴブリンたち。
「行くぞ!!必殺!!」
びしっつと構え、ケンタは拳を前に突き出す。
「『正拳突き砲』!!」
ドォン!!っと音が聞こえ、何かがゴブリンたちへ向かって飛んでいく。
どがぁっつ!!
「ごぎゃ!?」
「ごぶぁぁぁ!?」
その何かにぶつかり、ゴブリンたちは倒れていった。
「‥‥すごい。何ですかあれ?」
「ふははは、あれは格闘を極めると放てるようになる技でな、正拳突きの衝撃波のみを飛ばす、格闘主体の奴らにはほしい遠距離攻撃手段だ!」
自慢げにそう言いうケンタ。
遠距離手段を己の拳のみで下すとは、これは中々すご、
「あ、でもそれやったらあのハイウルフにフレイがかましたあの爆発のほうがすごいやん」
「いわれてみれば、ケンタの奴に似た技でも、あっちの方が威力が高かったな」
「爆発したし、今ケンタはゴブリン相手で倒していたけど、フレイの方はハイウルフを倒すほどだったわね」
……サブローたちの言葉に、ケンタが固まる。
「‥‥‥そうだよね、そっちの方がすごいよね。実力的にも、技的にも‥‥」
再び落ち込み、暗くなっていくケンタ。
「何をやっているんですかサブローさんたちはぁぁぁ!!」
【上げて落とすとは、まさにこのこと】
なにやらひどい光景を、フレイは見たような気がしたのであった‥‥‥‥大丈夫かこのパーティ。すでにガタガタになりそうなんだけど。
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SIDEパーティ「春風が吹く」:ケンタ
我が名はケンタ、パーティ「春風が吹く」の格闘家である。
今日、いよいよ友たちと共にダンジョンへ挑むのだが…‥‥ああ、どうしたことか。
このダンジョンへ向かう途中、偶然出会ったフレイと言う少年によって、居場所を無くしかけている。
魔法をまだ扱えておらず、武器も持って居ないので体術中心だが、その力は既に己を超えているんだが。
何あのハイウルフを爆殺したり、集団できても殲滅したり、魔法でないと倒しにくいスライムを楽々と倒したり…‥‥もはや実力が桁違いすぎるんだが!?
ダンジョン内でも同様で、あやつ一人で己よりも多く倒していくとは‥‥‥なんだ、このみじめになる気持ちは。
そう思いつつ、ダンジョン内で一旦休憩し、フレイとリアが用を足すために書すよう離れた間に、リーダーのサブローに己は声をかけた。
「なぁ、サブロー……己はもはや、このパーティには必要ないだろうか?」
「何を言い出すんだよケンタ!?」
ぎょっとした目で、サブローが答えた。
「いやだって、己よりもあのフレイと言う少年の方が、圧倒的に実力があるではないか。彼はまだ冒険者に登録していないとはいえ、その実力は明白。ゆえに、己よりもあやつを入れたほうが‥‥」
「なーにを馬鹿なことゆーてるねん、ケンタ」
と、話を聞いていたらしいジョンが口を開いた。
「ケンタ、わいらはな、このパーティで一旗揚げようと、このパーティ結成時に誓い合ったやん。それなのに、己の実力不足とかって・・・・・そんなんで抜けるほど、わいらが信用できんのか!!」
「じょ、ジョン‥‥」
「そうだな、ジョンの言う通りだ。わたしたちはこのパーティを組み、互いに信用を築いてきた。今さら実力不足だというのか?実力がないならば、鍛え上げればいい。この卒業試験を終えれば正式に活動し、世界をめぐるんだ。そこで、お前の実力を徐々に伸ばせばいいのだ」
ジョンとサブローの言葉に、ケンタは胸が熱くなった。
「そこまで己を想ってくれるとは‥‥‥‥嬉しいぞ」
「ああ、仲間だからな」
「大切な仲間だからこそ、失いたくないやねん」
ケンタの言葉に、うんうんと頷きながらサブローとジョンはそう言った。
「とはいえ、仮にあのフレイがこのパーティに加入した場合、己はいらないなと思っていないよな?」
「「…‥‥」」
ケンタのその言葉に、ジョンとサブローに二人は…‥‥目をそらしたのだった。
この日、ケンタは学んだ。
信頼が出来ていたとしても、これとそれとは別ということがあるということを。
後に、この件でからかうことができるのだが…‥‥それはまた、別のお話。
……絆と実力程、天秤にかけにくいのかも。
さてさて、ダンジョン内を調査し続けるフレイたち。
これを終えてしまいたいのだが…‥‥そう簡単には終わってくれないという現実を間もなく見ることになるのであった。
次回に続く!!
「二人とも、なんで目をそむけるのだ?」
「「…‥‥すまん」」
「薄情者ぉぉぉぉぉぉ!」