VS マグマイバーン
たまには割と真面目な戦闘に挑戦。
フレイたちが正面から接近してくることに、マグマイバーンは気が付いていた。
その接近前に口腔内に空気を取り入れ、マグマを吐き出す用意を行う。
「ブガオァオアァァ!!」
そして、視線の先に影が見えてきたところで、素早く吐き出した。
吐き出されたのは、数百、いや、数千度にも達する煮えたぎったマグマ。
そのマグマに触れれば、どのような生物であろうとも、奇跡がなければ生き伸びる事ができないであろう。
だが、そのマグマの放出から、フレイたちは軌道を見切り、左右にそれぞれ別れることでかわす。
次のマグマ放出までに、隙はある。
「どえっせぇい!!」
気迫と共に、かわした際についでに体を回転させ、その遠心力で大槌を投げ飛ばすリール。
その向かう先はマグマイバーンであったが‥‥‥
がっつ!!
翅を捨て、強靭な手足となった身体を利用して、飛んできた大槌を防ぐ。
だが、投げ飛ばされたのは着弾地点を爆発させる大槌でもあるので、ぶつかった個所に爆炎が生じ、衝撃波で体が一歩、後ずさった。
その一連の間に、フレイは素早くマグマイバーンの後方へ回り込み、腕をユキカゼの氷魔法で瞬時に凍り付かせ、氷のガントレットモドキを形成し、その尻尾をつかんだ。
マグマイバーン自体、高温の体温を持ち、普通に触れるだけでも重度の火傷を負う。
だが、フラウの風の精霊魔法で熱波を飛ばし、氷のガントレットでつかむことで、短時間であれば触れる事が出来たのだ。
ブレス、炎魔法と言う2つの主力が使えないのは辛いが、それでも使えるものであれば使用する。
万が一この方法で触れる事が出来なくても、「自然回復強化」と言うスキルがあるので火傷も素早く治せるだろうし、ボルドのミルクもある。
まぁ、その万が一が起きなかったので、安心しつつ、ガントレットが溶け切る前に「龍の怪力 (プチ)」を発動させ、その巨体をフレイは回し始めた。
足をしっかりと地面につけ、軸足を固定しつつその遠心力に体が負けないように全力で対応する。
一方で、マグマイバーンの方も、投げ飛ばそうとしている意志を感じたのか、抵抗のために振り回されながらもマグマを充填し、頭をフレイの方へ向けようとする。
だが…‥‥これはただ投げ回すだけが目的ではない。
「リール!!」
「わかっているよ!!」
フレイの言葉にリールは答え、投げ飛ばした大槌を再びつかみ直し、フレイの方へ駆け寄る。
攻撃されることが理解できたのか、すぐに頭を彼女の方へ向けるマグマイバーン。
がぱっと大きく口が開かれ、マグマによる赤い光が溢れそうになったが、そのタイミングを逃す者はいない。
【回転停止!!】
「っ!!」
ナビリンの出した合図に、フレイは反応して回転を一気に止めた。
急停止したが、その遠心力はまだ働いている。
だが、投げ飛ばすような真似はせずに、未だにしっぽがつかまれたままだったので、一時的にそマグマイバーンの身体が引っ張られ、ピンと張りつめる。
「グギュ!?」
突然の急停止で伸びた体に驚愕の声を上げたが、そこに大きな隙が産まれた。
いまだに大きくあけられた口の中には、マグマが今か今かと放出の時を待ったまま。
そして、リールは素早くその頭の舌へもぐりこみ、顎へ向けて一気に大槌を振り上げた。
アッパーカットのように顎が上に打ち上げられ、着弾時の爆風でさらに勢いよく口が閉じられる。
強い力で無理やり閉じられたことにより、其の衝撃でマグマイバーンの刃が何本かひびが入り、折れる。
その隙間からマグマが漏れ出し、リールへ降りかかりそうになったが、フラウが素早く風の精霊魔法で彼女を押し出し、マグマから逃れさせた。
直接顎から喰らった一撃に、脳震盪を引き起こし、一瞬意識が飛びかけたマグマイバーン。
と、気が付けばいつの間にか尻尾がつかまれておらず、解けているガントレットが残されたまま。
つかんでいた相手はどこへいったのか?
その答えは、風の精霊魔法で逃れていたリールが持っていた。
雷魔法で一時的に身体を加速させたフレイが、いつの間にか彼女の大槌の上に乗っており、撃ち出される時を待っていた。
そのまま合図と共に、リールは大槌を思いっきり振りかぶり、大槌の一撃でフレイが打ち出される。
雷魔法での加速も加わり、さらに氷の精霊魔法を展開させ、鋭い氷の槍を、いや、巨大な氷の杭と言うべきものを空中に生み出す。
そのままマグマイバーンの真上に飛ぶと、フラウの風の精霊魔法によって軌道修正され、直接その胴体へ向けて落下していく。
風を切る音で、フレイの位置にマグマイバーンは気が付いた。
まだ十分ではないが、それでも人一人ぐらいであれば余裕で溶かせるであろうマグマを、マグマイバーンは真上にいるフレイに向けて撃ち出した。
その熱波に氷の杭が溶けだし、飲み込まれるフレイ。
いくつか火傷が出来てしまうが、この攻撃の機会を逃さない。
攻撃に使えないのであれば、推進力に使ってしまえと言わんばかりに、後方へ向けて炎魔法を撃ち出し、急加速する。
そこへ更に雷魔法を使用して雷撃を纏い、炎からも防御を行う。
迫りくる杭から逃れようと、身体を動かすマグマイバーン。
だが、そこで素早くリールが大槌を投げ飛ばし、足を直撃させて移動手段を奪う。
いくらか体の位置が動いたが、ナビリンの指示によって調整され、綺麗にその体へ溶けかけている巨大な氷の杭が突き刺さる。
辺りへ飛び散るマグマイバーンの血潮。
だが、まだこの程度であれば絶命はせず、最後の抵抗と言わんばかりに頭を動かす。
……けれども、刺さった時点ですでに勝敗は決していた。
マグマイバーンの身体自体、強靭な体ゆえに攻撃が通りにくく、そのマグマによって遠距離でも対応できたであろう。
けれども、その体の内側へ向けられる攻撃はどうなのであろうか。
氷の杭の上に乗ったフレイは、ユキカゼのサポートがありつつ氷の精霊魔法を発動。
溶けていた杭が再び氷結し、内部へ向かって急激に氷のとげが生成されて体の内側から侵食し始める。
そのことに気が付いたときにはすでに遅く、体内のマグマを生み出す部分へ氷が攻め入り、融解、蒸発し、大量の水蒸気が生み出された。
そして、ある程度までは耐えきったが…‥‥所詮、ドラゴンではないマグマイバーン。
体が限界を迎え、爆散し、その生をマグマの花で散らしていくのであった‥‥‥‥
討伐出来たマグマイバーン。
無事とは言えないが、それでも何とか倒せたフレイたち。
実力が足りなければやられていたが、なんとか成長で来ていたらしい。
ひとまずは、この報告も兼ねて一旦帰還することにするのだが‥‥‥
次回に続く!!




