VS怪力爆裂ハンマー少女
何と言うか、幸薄というよりも女難のような気がしてきたが、気のせいであろうか?
…‥‥いや、気のせいでは無さそうかも。
考えてみたら、フラウの時は追いかけてきたモンスターと、ユキカゼの時は妖刀と…‥‥
SIDEフレイ
ドッゴォォォォン!! バッゴォォォン!!
「こらぁぁぁぁ!!避けるな!!当たらなきゃ意味がねぇだろうがぁぁぁ!!」
「当たったら即死しそうな攻撃を避けて何が悪い!!」
【でも、たぶん死にませんよ?】
「そう言われてもあれは嫌だ!!」
ナビリンのつぶやきに対してツッコミを入れつつ、フレイはリールと言う少女が叩きつけまくるハンマーから逃げていた。
そもそもの話、この迷宮都市にある邸の主の下へ、紹介状を介して修行をさせてもらおうとしていたのに、なぜこんな怪力ハンマー少女に戦闘を挑まれなければいけないのだろうか。
一応、屋敷内での被害を抑えるために庭の方に出たが、それでもずっごんばっごんとリールは攻撃を仕掛けてくる。
しかもどういう訳か、ただのハンマーで攻撃しているわけではなさそうで、叩きつけた瞬間に小さな爆発が起き、破壊力が増しているのだ。
【鑑定結果が出ました。あれはどうやらマジックアイテムの一種ですね】
と、どうやら鑑定機能を用いてナビリンが解析結果を出した。
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【マジックアイテム『爆裂大槌MK=2』】
攻撃を直撃させると同時に、使用者の魔力をほんの少しだけ使用して接触面に爆発を起こさせる凶悪なマジックアイテム。
MK=2となっているのは、オリジナルの爆裂大槌を元に作成されており、その性能を格段に向上させているからである。ただし、魔力の消費量がある分、まだまだ改善の余地はある。
また、爆発させまくると耐久力が落ち、いくら手入れをしても最後には自壊する運命しかない。
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攻撃力の代償に、魔力意を消費し、そのうえ最後には自戒する武器……けれども、脅威なのは変わりない。
「ユキカゼの我流剣術で無効化できそうか?」
【いや無理でござるよ!?接触して爆発されたら、勢いも殺されるでござる!!】
つまり、正面からやっては不利である。
しかも、耐久力が落ち、自壊するのを待てばいいのかと言いたいのに、自壊まではまだまだ時間があるらしい。
ズッゴォォォォン!! ゾバッゴォォン!!
「こらぁぁぁ!!いい加減に観念してオレと戦ええぇぇ!!」
爆裂させ、地面をえぐり取りながらリールはそう叫ぶ。
もうこうなれば、戦うしかないだろう。
とは言え、正面からと言うのも不味そうだし、かと言ってボルド戦でやったような空中爆撃投下も、あの戦いで欠点が見えたので改善するまでは容易く使えない。
ならばどうするか?
「こうなったら、ちょっと魔力消費が大きいがこのスキルを使わせてもらうぞ!!」
逃走から反転し、闘争へ向けフレイはスキルを使用する。
元はユキカゼの持つスキルだが、努力習得で念のために得ておいたもの。
魔力消費が激しいが、あの爆裂大槌とやらに対抗するには、流石に素手では無理だ。
「『ソード・クリエイト』!!」
そう叫び、そのスキルをフレイは使用した。
魔力が放出され、圧縮、構成されていく。
一時的に生み出された魔力の塊の武器で有り、使用後は霧散する、まさにこの一戦限りの一品モノ。
「大槌ならば、パワー重視のこの大剣でやってやるよ!!」
両手で扱わないと触れないような、大きな大剣。
両刃となっているが、ちょっと大きすぎた感じもある。
「でやぁぁぁぁ!!」
もともとフレイは剣術は素人に近い。
けれども、スキル「我流剣術」や「龍の怪力」などで補いきれる。
ドッガギィィィィン!!
ハンマーと大剣、互いの一撃がぶつかり合い、火花や爆発が散る。
「ぐっ!?なんだその武器は!?魔力で固まった武器だと!?」
「ああ、スキルによるものだから、これが終われば霧散するよ!!でも今は戦いを仕掛けてきたそちらに対して、とりあえず全力で相手をさせてもらう!!」
「なるほど!!やる気になってくれたのはうれしいから、こちらもやらせてもらうよ!!」
互に一旦距離を取り、武器を構え直す。
そして再びぶつかり合い、剣と大槌の衝撃波が周囲に伝播する。
ドッガギィィィン!!
ズッガァァァァン!!
ガッゴォォォォォォォン!!
互いの力をまともに殴りつけ合うこの感覚、剣を打撃武器として扱っているような気もするが、気にしない方が良いだろう。
何にせよ、こちらだって怪力を使っているのに、相手もハンマーを軽々と扱えるだけあって、力では勝敗が付きにくい。
しかも戦況としては圧倒的にフレイの方が不利である。
相手も魔力の消費をしているとはいえ、その量はかなり微量らしい。
その反対に、現在使用しているスキルの影響で魔力が滝のように流出し、フレイの魔力量も残りが少なくなってきた。
魔力がなくなればスキルの使用で出ていたこの件も霧散し、しかも反動があるようなのでちょっと不味い。
こうなれば、後わずかな時間の間に一気に押し切るしか‥‥‥
「‥‥‥いや、待てよ?」
考えてみたら、わざわざ馬鹿正直に力比べで対抗する必要性もない。
相手はこの屋敷に勝手に不法侵入してきた少女であり、こちらが手加減するようなこともない。
要は無力化だけを狙えばいいはずだ。
そのことに気が付いたフレイは、一旦素早くリールとの距離を取る。
相手は奪取で追いかけ、再びぶつかり合おうとしたが…‥‥足元がお留守だ。
「ユキカゼ!!氷の精霊魔法で下を狙え!!」
【了解でござるよ!!】
ユキカゼが氷の精霊魔法を使用し、地面が一瞬にして氷漬けになる。
「うわっ!?」
その突然の変化と滑りやすさに、リールは驚き、しかも大槌の重さで重心がずれていたのか、そのまま盛大に滑って転ぶ。
爆裂大槌を手放したところで、素早く距離を詰め……
「拘束してもその怪力が不味いから、気絶させてもらうぞ!!」
がっとその体をつかんで、滑ってきた勢いそのまま……
ドッシィィィィン!!
「ぐえぁぁぁぁあ!?」
…‥‥綺麗なバックドロップを決め、リールは少女らしからぬ断末魔を上げ、そのまま気絶したのであった。
「ふぅ‥‥‥取り合えず、これで良いのかな?」
「ええ、良い事でございます。よくリールお嬢さまを止めていただけました……」
フレイの言葉に、近くで避難していたセバーンが、本当に助かったように感謝の言葉を告げるのであった。
相当苦労していたのかな…‥‥と言うかそもそも、この屋敷の主とこの少女、一体どんな関係だったんだろうか?
どうにかこうにか、暴走爆裂大槌怪力騒がせ少女を撃沈させたフレイ。
とりあえず、何があったのかはセバーンさんから聞くとして、色々と疲れた。
修行もしたいのに、なぜこうも不幸が来るのやら…‥‥
次回に続く!
……そもそもの話、雷魔法で痺れさせても良かったのではなかろうか?
でも、まだ慣れていない魔法でもあるし、加減が難しかったかもしれない。
【と言うか、私出番なかったの…‥‥】




