ダンジョンへ向かって
ふぅ、ここから落ち着いてきたし、不定期投稿になるかな。
ただ、基本的に毎日、適当な時間に投稿となるかもね。
SIDEフレイ
「ギギギェェェェェェ!?」
断末魔を上げ、ずぅんっという音を立て、巨大なアリのようなモンスターは息絶えた。
「ふぅ、思った以上に硬かったというか、重かったな」
【モンスターになると、どうやら比重などがいろいろ狂うようですね】
額の汗を拭い、一息を俺は付く。
「いやいやいやいやいや!?」
「ちょっと待つやねん!!」
「ん?どうしたんですか、リアさんにジョンさん」
戦闘が終わって早々に、今一緒にいるパーティ「春風が吹く」の、魔法使いらしいリアさんと、アサシンとか言うジョンさんが思わずと言った感じで叫んだ。
「あなたわかっているの!?そのモンスターって『フレイムアント』よ!!」
「それ普通、素手で殴ったら大やけどになるから、武器で倒さないといかんやつやで!!それなのに、なんでちょっと手が赤くなった程度で済んでいるんや!?」
「‥‥‥焼ける前に殴った」
「「はぁぁぁつ!?」」
フレイの回答に、リアとジョンは大口を開けてあっけに取られるような声を出す。
その横では引きつらせた苦笑いを浮かべるリーダーのサブローと、格闘家のケントがますます落ち込んだ顔になっていた。
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『フレイムアント』
巨大なアリのモンスターだが、その体表は見かけによらず数百度の熱さを纏っている。ゆえに、ただ殴るだけでは大やけど確定であり、武器などを利用して攻撃する必要がある。
なお、アリにしては集団行動をせずに、アリなのに一匹狼のような単独行動を好む。
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……実のところ、炎龍帝との戦闘で培った技術がどうも活きたらしい。
炎龍帝自身それなりの熱量を纏い、普段は生活に不便だからある程度抑えているらしいが、戦闘時には一気に燃え上がるのだ。
その為、まともにやっていては焼死してしまうので、熱を与えられる前に……
「焼ける前に殴って離れさせ、再び殴っては熱が伝わる前に逃げるとやっただけですって」
「いやー、流石にそれは無茶苦茶だろうな‥‥‥」
「格闘家、体術では俺が先輩だと思っていたのに……全く出る意味がねぇ」
説明を聞き、苦笑いを浮かべるサブローであったが、その横では格闘家のプライドが壊されたらしいケンタが、ものすごく暗くなって落ち込んでいた。
……なんか、ケンタさんごめんなさい。でもこれは仕方がない事なんです。
「と言うか、本当は剣とか魔法とかも使ってみたいのですが…‥‥何分、そこまでやったこともないので、扱えていないというか……」
本当のところ、剣だけならまだ扱える。
炎龍帝との戦闘で剣は扱わせてくれたけど…‥‥ものの数分で溶けるからそこまで技術を高められていなかったりするのだ。
「ああ、そうか。それで体術だけが一人前と言うか、それを超えた領域になっているのか」
ぽんっと、納得したよう二手を打つサブロー。
「それで魔法とかで無茶苦茶なものが使えたら、今度はリアの立場が無くな、」
ドゴゥ!!
「げぼばっつ!?」
「余計な事を言わないでよ!!」
…‥‥ジョンが何やら余計なことを言い、魔法使いのリアに杖で殴られて地に沈んだ。
「おい、フレイ‥‥もう手遅れかもしれんが、リアの奴は魔法使いの立場もあるが、棒術のプロでもあってだな、余計なことを言うとああやって地に沈むから気を付けておけ」
「あ、はい。忠告ありがとうございます」
その光景を見ながらサブローさんがそう耳打ちをしてきたが…‥‥目の前に身をもって証明してくれたジョンさんがいるから、そう馬鹿な事は言わないつもりだ。
「ああいうのを反面教師って言うんだろうな‥‥‥」
【単なるお調子者の馬鹿とも言えます】
ナビリン、なかなかきついこと言っていないかい?
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SIDE「春風が吹く」の一同
……フレイがこのパーティに一時的に行動を共にすることになって半日が経過した。
目的地のダンジョンは、ここから後数十分ほどの道のりにあるところだが、それまでに襲い掛かって来たモンスターは、フレイがぼっこぼこにしていくため‥‥‥
「なんか、すごく楽だな‥‥」
思わず、リーダーのサブローはそうつぶやいた。
「そりゃそうやろうな。あのフレイって少年、まだ年若いはずやのにもう猛者と言っておかしくないやもん」
「一体どこの誰に鍛えられたのか‥‥‥はぁ、卒業しても修行したくなった」
サブローのつぶやきにジョンが答え、落ち込むような声でケンタがそうぼやく。
ケンタはこのメンバーの中で近接戦闘特化の戦い方となるのだが、その近接戦闘が現在フレイに一任されてしまっているため、はっきり言って悪いが役に立たない状態となったのである。
「でも落ち込むなよケンタ。あれはあれ、お前はお前で違うからな」
「‥‥‥フレイムアントをさっき素手で殴り倒したこととかか?あそこまでの力だと、もうぶっちゃけ言ってこちらはゴミ、役に立たないただの肥溜めなんだよ……」
「あかん、フレイの奴完全に精神が死んでいるやん」
「そりゃ、自分の唯一のアイデンティティを他人にかっさらわれた感じだからよね」
ジョンの言葉に同意するかのように、リアがうなずいた。
「ん?リア、フレイはどうした」
「今そこで‥‥ほら、今度は遭遇したスライムと戦っているわよ」
「ほぅ、スライム……いやちょっと待て!?スライムなら素手のフレイは危ないんじゃないか!!」
リアの言葉に、サブローは大慌てでそう叫んだ。
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『スライム』
各地に数多く見かけられ、その種類は年々新種が発見され増加し続けている。一般的なスライムは全身がドロドロの液体と固体の中間のような物であり、物理攻撃が効きにくい。モンスターは基本的に体内に魔石と呼ばれるものがあるのだが、スライムに限っては透明なコアと呼ばれる部分があり、そこを破壊しなければ死滅させるのは不可能。基本的に魔法で全身を攻撃してコアもろとも倒すのである。
―――――――
ゆえに、スライムを攻撃する際には魔法を扱わなければいけないが、あのフレイと言う少年は魔法を使っていない。
まだ使えるかどうかわかっていないからなのかもしれないが、なんにせよ使えていない現状ではスライムはそう簡単に倒せる相手ではないのだ。
その為、流石に加勢しようと皆がその方向を向いたところで……
バァァァァァァン!!
「うわぁぁぁ!?スライムが破裂して爆散したぁぁぁぁぁ!?」
「「「「何をやったぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
まさかのスライムの爆発四散に、皆は思わずそう叫んだのであった。
「すいません、スライムはコアを破壊すればいいと聞いたことがあるので、、『エアボム』と言う‥‥‥先ほどハイウルフを倒した際に使った技で、中身から一気に全身をそれで攻撃してみようとしたのですが‥‥」
「ああなるほど、思った以上にスライムの体表が持たず、中身もぶちまけさせる結果になったのか」
「確かに‥‥あの爆発を伴う技は魔法と言っても過言じゃないレベルやもんな。内部爆発をすれば、そりゃスライムも耐え切れへんかったのやろう」
「魔法を扱わずに倒したのはすごいわね‥‥‥」
フレイが謝なりながら説明した内容に、皆が納得と感心をする中、ケンタはますます落ち込んでいくのであった。
「‥‥‥スライムすら楽に倒せない格闘家の俺って、価値があるのだろうか?」
「なんかケンタさん、真っ暗になってません?」
「え?うわぁぁっ物凄い落ち込んでいたぁぁ!!」
フレイの言葉に、ケンタの様子に皆が気が付き、何とか励ますのにいらない時間を使う羽目になったのであった‥‥‥‥
……今さらながら、この格闘家の人いらないような気がしてきた。
なんにせよ、次回ようやく目的地のダンジョンへ到着。
そこで、彼等が出くわすものとは‥‥‥‥
次回に続く!!
……どうにかしてケンタを救えないかな?なんか書いていたら物凄く哀れになって来た。