採れるときに採っておくべし
乳製品って、色々と使い道があるんだよね。
ちょっと挑戦してみたくなるなぁ‥‥‥
SIDEフレイ
上空からナビリンの鑑定で、ミルクが出そうなバッホーンをフレイたちは狙い、素早い急降下で強襲する。
スキル「浮遊」はあくまで浮くようになるものであり、素早い移動はできないが、精霊魔法で補助を行ってある程度は補える。
それに、フラウの補助で細かな魔法の変化や、ユキカゼが時折からだから手や足を出して周囲を蹴ったりして、その反動で動けるのだ。
…‥‥はた目から見れば、身体からにょきっと勢いよく手足が出るのは怖そうだけどね。もう慣れた。
何にせよ、こういう滅多に無さそうなミルク集めはやった方が良いだろう。
氷の精霊魔法を調節して、氷の瓶(特大)を創り出し、その中に入れていけば良い。
【ではまず、右斜め35度、左から23頭目のものからいきましょう】
「わかったよナビリン!」
ナビリンの鑑定で、きちんとミルクを出せるバッホーンを狙うのであった。
「‥‥‥っと、このぐらいでいいかな。これ以上はもう持ち運びにも向かないしね」
だいたい十数頭ほどのミルクを得たところで、フレイたちはミルク集めを終わらせた。
氷の精霊魔法で容れ物は作れるが、それはあくまで保管場所を作るのみ。
だがしかし、時間の経過によって鮮度が失われもするので、一時的に得られる量にも限度があるのだ。
そのため、大体一樽分ぐらいしかフレイたちは集めなかった。
これだけの量でも、鮮度的には数日ほどで消費したほうが良さそうだけどね。
【一応、鮮度の面では抗菌作用もあるため、保存状態がよければひと月は可能です。しかしながら、収納関係のスキルはないために、外に出した状態での保存となります】
「『努力習得』のスキルでほしい所なんだけどな…‥‥」
無限収納とか、アイテムボックスとか、四次元○ケットと、ああいった類のスキルや道具が欲しい所なのだが、まだそうお目にかかれていない。
手に入れる事が出来れば、戦闘に関しても、普段の移動に関しても改善が見込めそうなのだが‥‥‥やはり世の中はそう甘くはない。
何にせよ、これ以上は必要ないので、再び上空に舞い上がって、バッホーンの群れが去るのを待つだけなので、フレイは浮遊のスキルを使用し、去るまで上空で見ていようかと思っていた……その時であった。
「ん?」
【どうかいたしましたか?】
「いや、今一瞬誰かの視線を感じたような気がするんだけど…‥‥気のせいか?」
キョロキョロと見渡すが、人影は見当たらない。
あるとすれば、今もなお行軍中のバッホーンたちだろう。
気のせいかと思いつつも、フレイはその視線に関して違和感を覚えたのであった。
――――――――――――――――――
SIDE???
……フレイの感じた視線、それは別に気のせいではなかった。
ただ単に、「人」ではない存在が見ていただけであり、フレイたちの視界から離れた場所から、その存在が見ていただけなのだ。
「ブルルル……バッフォォン?」
「‥‥‥ああ、そうだ。あれが今回、お前をここに連れてきた目的でもあり、ちょっとした試練のつもりだ」
その存在に対して、その横にいたのは…‥‥人の姿になっていた神龍帝であった。
「ま、ちょっとした爺心というか、あの名付けたフレイと言う少年の成長を見たくなったからと言うのもある」
「バッフォン、バフォ」
「まぁまぁ、そう呆れたように言うなよ。そんな反応だと、お前の爺さんのそのまた爺さんの、さらにそのまた‥‥‥いや、もうご先祖と言った方が良いかもしれないが、ボルドのようになれないぞ。まぁ、お前は雌で純粋なバッホーンでもないがな」
その存在の言葉に対して、神龍帝はそう述べる。
「何にしても、炎龍帝の下で育ち、奴を倒せるような存在にもなるために、まだまだ成長の余地がある者だ。まだ年月はかかるだろうけれども、ちょっとだけ後押しをしてもかまわないだろう?」
「ブバババッホォン……」
「いや、だから呆れるなよ……そのために、わざわざお前をこの世界に連れて来てやったんだからな」
やれやれと言うように、肩をすくめる神龍帝。
「何にしても、今のところは修行地へ向かっているようだが、いかんせんこのペースだと時間がかかるしな。炎龍帝討伐ができるぐらいの猛者であれば戦ってみたくなるし、そこまで成長する手助けをしてやりたい。だが、強者の成長にはさらなる強者が必要だからこそ…‥‥お前を連れてきたんだ」
「ブルバッフォン?」
「そうだ。あいつらは今、ここから見る限りでもあの群れに突撃し、ある程度のミルクを採れた。バッホーンたちはおとなしいほうとはいえ、やはりあの大群にひるまず行った勇気もある。ならばこそ‥‥‥より力を高めてもらいたいのだよ」
「ブルルッツ、ッバフォン!!」
「え?自ら行けって?いやいやいや、まだ力量差があり過ぎて‥‥‥はぁ、こういう時に困るからな。なんにしてもだ、とりあえず逝ってこい」
「ブルモッフハァ!?」
「え?意味が違った言葉?…‥‥気のせいだ」
思いっきり目をそらした神龍帝に、その存在は半目になる。
何にせよ、その存在はしばし考え、神龍帝からの命令を受けることにした。
「ブルルル…‥‥バッフォヒィィン!!」
駆け始めると同時に、身体が中へ浮き、フレイたちの下へ突き進み始める。
空中を走っているのではなく、背中に生えた大きな翼で飛んでいるに過ぎない。
そしてその存在の容姿は、祖先に伝説のバッホーンがいるとはいえ、種族は純粋なものではない。
「‥‥‥さぁ、どう出るかな?炎龍帝の養子にして、転生者よ。目にしっかりと見せてもらおう」
そうつぶやき、神龍帝は自身の姿を消し、見守り始めるのであった…‥‥
……神龍帝が連れてきたその存在。
それは、フレイたちにとってどういうものになるのか。
ただ一つ、言えることとしては確実に争いが待ち受けているのであった。
次回に続く!
……さぁ、空中ショーの始まりだ!!
え?バッホーンの面影はあるかって?一応、祖先ともいえるしあるだろう。多分。




