短時間のうちに
いや本当に、色々と短い間に起きているなぁ
SIDEフレイ
「~~~~~であるからして、ギルド長フルファングさん、今月の貴方の給料は80%引き決定させますよ?」
「それは勘弁を!!ただでさえ今月はちょっと散財して苦しいのよ!!」
「いいえ、譲歩しません。先ほどの馬鹿冒険者2名をぶちっとやる際にやらかした壁の修繕費に、この模擬戦に置いて出た被害などを考慮する限り、首にしてもおかしくはありませんからね。というか、散財って何をですか?」
「えっと、チンピラ共を倒したついでに破壊した店の修繕費、ギルド長だけど初心を忘れないために討伐依頼を受けて畑を粉砕した賠償金、鞭の試し打ち中に絡んできた馬鹿貴族の子息を真ドMに開花させた謝罪に……」
「同情の余地なし!!全部自己責任です!!」
・・・・・先ほどまで、割とまともに戦っていた相手、この都市のギルド長フルファングが、副ギルド長に説教されている中、フレイたちは正座をさせられ続けていた。
理由としては、その模擬戦で色々とギルドが壊れてしまって、その修繕費などを計算した結果、目が飛び出るほどの物になったらしいからである。
ギルド長に挑まれたから被害者に近いとはいえ、フレイたちもまとめて正座であるのだが……
「あの、すいません、そろそろここから出ても」
「貴方たちもだめですからね?いくらこの戦闘脳筋狂馬鹿に付き合わされた哀れな新人冒険者とは言え、流石にここまで被害を出す前に、色々と対応できたはずですよね?」
「…‥‥ごもっともで」
「うう、足が痺れてきたの」
「主殿の中に避難しておくべきでござった…‥‥外に出ていたがゆえに、まさか捕まるとは」
そろそろ、先ほどの模擬戦が終わってから1時間半ほど経過するのだが、未だに終わる気配が無い。
これだけ長時間正座すると、非常に足が痺れて結構辛い…‥‥
と、悲しみに暮れていた、その時で有った。
「すまん!!緊急依頼を出したい!!」
「んん?……マッソンさん?」
説教されているギルドの中に、突然あの護衛から別れた騎士団長のマッソンが、入って来たのであった。
ただ、その様子はただ事ではなく、着ている鎧のところどころが腐食していたり、ひびが入ったりしていて、ただ事ではない様子であった…‥‥
「…‥‥護衛対象が誘拐された!?」
「ああ、しかも最悪な事になった……」
一応、ここに来るまでの関係者でもあったということで、フレイたちも混ざって話を聞かせてもらったのだが、どうやらこの短時間の間にかなり不味い事態が起きていたらしい。
「なるほどねぇ、その誘拐犯ってのは、多分この間から都市内を騒がせているやつだろうな」
「ギルド長、何か御存じなのでしょうか?」
「ああ、どうも都市内で誘拐などの事件が多発していて、調査していたんだ。鞭でビシバシとしばいてやろうとして、色々と情報を収集していたが…‥‥厄介だね」
話によれば、どうもマッソンさんたちと護衛していた馬車の中にいた対象が誘拐されたらしい。
それも、あの犯罪者を詰所にやるために、説明と責任の両方を兼ねてマッソンさんが言っていた間にである。
部下の騎士が慌ててマッソンさんに助けを求め、攫われた対象の姿を確認し、追い詰めようとしたところで……
「まさかの他の仲間たちが出てきてな、しかも正攻法ではなく毒薬や爆薬などをやられて、応戦していたがその間に見失ってしまったんだ」
このままでは、その護衛対象が危ない。
そう思って、慌てて緊急依頼を出すためにここに駆けてきたそうなのだ。
「護衛対象というと…‥‥あの馬車にいた人ですよね?」
「ああ、そうだ」
となると……顔は見ていないが、その存在は分かっていた対象だから、もしかして…‥‥
(ナビリン、探索可能か?)
【…‥‥少々難しいですね。何やら阻害効果のあるものがあるようで、もやっとした感じにしかわかりません。ですが、それは逆に居場所を知らせているような物なので、ある程度は可能かと思われます】
「……マッソンさん、俺のスキルの中に人を探せそうなものがあります。直接顔を見ませんでしたが、その存在を理解していたのであれば、追跡がある程度可能です」
「何っ!!急いでそれを使って追いかけてくれ!!あのお方に何かがあれば、下手すると騎士団の全員が死刑になる可能性もあり、それどころか非常に不味い事態になるのだ!!」
フレイの言葉に、肩をつかんで揺さぶりながらマッソンはそう叫んだ。
「ちょっと待って、君はまだ冒険者登録中で、正式な者ではないのだが……」
「いや、副ギルド長。彼に任せてみよう」
副ギルド長の言葉をさえぎって、ギルド長フルファングは、先ほどまでの説教での情けない姿ではなく、真面目な姿でそう口に出した。
「良いのでしょうか、ギルド長?」
「ああ。あの模擬戦で実力はある程度まで把握しているし、寄せ集めのものを集めて向かうよりも、実力が確かな君の方が良い。まだ登録が完了していないが、これが成功すればより待遇を向上させることを褒賞に含もう」
なんというか、流石ギルド長と言うべきか、フルファングはフレイの実力を把握し、この事態にすぐに対応できる者だと見抜いていたらしい。
タダの戦闘狂暴れん坊将軍モドキのサディスト女王ではなかったということだろう。
「それでは、緊急依頼としてその護衛対象の保護及び誘拐したやつらの誰かを捕縛か殲滅を出す!急いで向かいたまえ!!」
「はい!!」
ギルド長の言葉を聞き、フレイは駆けだ、
「って、そう言えばその対象の名前を聞いていませんでしたが」
ずごっぅ!!
「そう言えばそうだった!」
・・・・・駆けだす前に、そもそも保護する対象の名前が分からないと色々とダメな事を忘れてました。
早々にして前途多難となったが、大丈夫だろうか・・・・
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SIDE都市マスターングースギルド長:フルファング
フレイたちが駆けだしていった後、ギルド長はすぐに動いた。
「副ギルド長、あの新人が対象へ向かう間に、急いで都市内の各冒険者に通達し、念のために戦力をそろえろ!!」
「ですがギルド長、あの新人に任せて本当に大丈夫なのでしょうか?」
「そのことに関してですが、私から言わせてもらえば多分大丈夫なはずです」
副ギルド長の言葉に対して、騎士団長はそう答えた。
「この都市までの道中で、ちょうど彼の実力を見る機会があり、ここで依頼ができたのは好都合でした。さっさと登録を終えて去っていたのならまだしも、まだいたのは幸運です」
「……ああ、こちらとしても模擬戦で実力は見たし、ある程度なら大丈夫だと確信している。だが、相手はこの都市内で暴れているどこぞやの手の者らしいから、油断は禁物だ。というか騎士団長とやら、措置らも動かねばならないのではないか?」
「そういでばそうでした。こちらではこちらなりに動きます」
そう言い、騎士団長も退出していく。
「…‥‥さてと、後はこれでどうなるのか分からないし、急いでギルド側で準備が終わったら手助けに向かわねば・・・・・あ」
そこでふと、ギルド長はある致命的なことに気が付いた。
「どうしたのですか、ギルド長?」
「・・・・あの新人の彼はさ、自分のスキルで追跡はできるはずだといっていたよね?」
「はい」
「でも、我々はどうやって追跡すればいいのだろうか・・・・」
「・・・・・」
「「全然追いかける手立てがねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
その事実に気が付き、ギルド長と副ギルド長はそう叫ぶのであった………
緊急依頼
「護衛対象だった者を救出し、ついでに誘拐犯共を捕縛or殲滅」
果たして、無事に依頼は達成できるのだろうか…‥‥
次回に続く!!
・・・・・名前も性別も容姿も出ていなかった護衛対象、ようやくその姿をお披露目できそうです。
と言うかこのギルド、本当に大丈夫なのだろうか?実力はあるだろうけれども、非常に不安・・・




