VS マスターングースギルド長
たまには真面目に戦闘回
でも、ちょっと稚拙かな……
SIDEフレイ
ギルドの地下に設けられていた、特別な空間。
ここはどうやら先代ギルド長が作った場所らしく、冒険者達が自己研鑽しやすいように作られた練習場でもある。
そして今、フレイたちはこの都市の……野次馬たちから聞こえてくることからは、「爆炎鞭の女王」「真サディスト」などと言われているらしいギルド長、フルファングと対峙していた。
「ふふふふ、新人の中でも、学園卒業で、面白そうなのがいると戦いたくなるのよねー。とは言っても、これは意地悪ではないのよ。学園外でのまともな戦闘を身に染みさせるためにやるから…‥‥本気で頂戴ね?」
「本気ですか‥‥‥」
なんというか、見ているだけで怖い雰囲気がある女傑である。
今までの対人戦としては、でぶでぶ饅頭祭りや盗賊、妖刀に憑かれていたユキカゼなどがあったが‥‥‥それらと比べても、かなり上の迫力が漂っていた。
「一応聞いておきますが、精霊に協力してもらうのは良いですよね?」
「ええ、見た感じ、精霊に宿られているようだからその戦い方の方があっているようだし……なんでもいいから、全力でお願いね」
【うわぁ‥‥‥目がやばいですね。と言うか、色々見ぬいているようで…‥‥その上鑑定もできませんし、どうやら相当レベルの高いというか、やばい人です】
【一応、私たちは一旦主様の中に引っ込んだけれども…‥‥これ、大丈夫なの?】
【それでもやるしかあるまい・・・・・・怖いでござるがな】
ナビリンがドン引きしつつ、フラウとユキカゼは不安が隠せないようだ。
何にせよ、挑まれたからにはやるしかないだろうけれども…‥‥これ、手を抜いたらダメな気もするし、本気で行かないとまずいね‥‥‥
「それじゃ、どちらかが『降参』するか、気絶したら試合終了ということで…‥‥いいわね?」
「ええ、それで」
「じゃ、試合…‥‥開始!!」
ドッガァァァン!!!
その開始の合図と共に、素早く詰め寄って拳を叩きつけようとしたフレイの右手に、ギルド長フルファングの鞭がぶつかった。
明らかに鞭ではしないような音がしたが、どうやら最初の一撃は読まれていたようだ。
ばばっと後方へ下がり、フレイは魔法を発動させる。
「炎魔法『フレイムバレット』!!」
「甘いわね、『ウィップストーム』」
大量の火球をを生み出し、フラウの補助が入って加速したものをぶつけるが、フルファングは鞭w高速回転させて、撃ち落としていく。
単なる遠距離攻撃ならば、あの手に持った鞭で対応し、近距離でもある程度対応できるようだ。
「なるほど、一筋縄ではいかない…‥‥ユキカゼ!」
「了解でござるよ!」
ばっとフレイの中からユキカゼが飛び出し、フルファングの後方に素早く回り込む。
「っ!」
「前後からの」
「同時攻撃ならどうでござるか!!」
ユキカゼの動きに気を取られた隙に、フレイもユキカゼもフルファングへ迫る。
いくら鞭と言う範囲の広い武器で有ろうとも、一瞬の認識遅れには対応しにくいはずだ。
そう考えたが…‥‥流石と言うか、ギルド長をだてに勤めていなかったようだ。
「ここでよけれるわね!!」
ギリギリまで引き付けたところで、素早く横へ回避。
このままいけば、フレイもユキカゼも激突しそうだが、ここで彼女が精霊と言う部分が活きてくる。
すぅっ
「!?通過した!?」
「ええ、そうでござるよ!」
フレイの身体をユキカゼが通り抜けた光景に、フルファングが驚愕するが、原理はいたって単純だ。
いつものように、フレイに宿る要領で一旦中に入り込んで、反対側から出ただけだ。
混戦した状態であろうとも、この方法を使えば互いの攻撃には当たらないだろうし、同士討ちの危険性も下がる。
そしてそのまま横に逃げたフルファングの方へ、片足を軸にして無理やり向きを変え、突撃する。
「ついでにフラウも!!」
【了解なの!『ウィンドブースト』!!】
フラウの精霊魔法の補助がかかり、フレイとユキカゼの速度が上昇する。
「「せやぁぁぁぁぁ!!」」
「‥‥‥でも、まだ甘いわ!」
そういうや否や、迫って来たフレイたちの真上に鞭を振るって、天井に突き刺し、一気にフルファングは跳躍して逃れた。
「ちっ、その手があったか!」
「うーむ、避ける技術が高いでござるな」
「あら、それは褒めていると言って良いわね。にしても、精霊と共にしているだけあって、中々の強さね・・・・油断できないわ」
フレイたちの言葉に、フルファングはそう言いつつ正当な評価を下す。
「だけど、まだ終わっていないからどんどん来なさい!!」
「いわれなくても」
「やってやるでござるよ!」
【サポートは万全なの!!】
【ついでに動きの分析完了!ある程度までならば予測できますので、いざとなったら従ってください!!】
互いに全力を尽くし、たかが模擬戦であろうとも、手は抜かなかった。
こういう場でこそ、今の実力が測れるものであり、だからこそ頑張ったのだが………
「…‥‥で、あなた方に聞きますが、何か釈明はあるでしょうかねぇ?」
「……ありません」
「本当にすいません……」
30分後、その場はすごく荒れに荒れまくり、被害はギルド内にまで及んでしまった
全力を出し過ぎたせいで炎龍帝のブレス(プチ)なども使用してしまい、そのうえギルド長の方も手を抜かなかったばかりに、鞭を叩きつけ捲ってあちこち壊し……
とにかく、破壊の限りをギルドは尽くされた。
そして、どうやら外出中だったらしい副ギルド長がやって来て、無理やりこの模擬戦を終了させ、戦っていたフレイたちと、止めずに野次馬と化していた冒険者たち全員に責任があるということで、非常に痛い拳骨を貰ったのであった…‥‥
「さぁ、ギルド長フルファングさん。貴女はまだギルド長としての立場を自覚せずに、やらかしてくれましたねぇ…‥‥ギルドの本部に連絡して、給金を減らしてもらいましょうか」
「そ、それだけはご勘弁を!!」
……なぜだろう、さっきまですごい強者であったギルド長が、まるで蛇に睨まれた蛙のごとく、副ギルド長に叱られている。
【‥‥‥どうやらここでは、副ギルド長の方に権力があるらしいですね】
ナビリンのその言葉は、どうやら的を得ているようであった‥‥‥‥
勝負を挑まれて、受けて、最終的に叱られる。
最初に誘ったのは向こう側なのに、見事に巻き添えのような被害を喰らった。
まぁ、ギルドが爆発四散しかけたのであれば、それもそうか……
次回に続く!!
……と言うか、野次馬たちにも被害が出た模様。
鞭や魔法が飛び交い、巻き添えにならないで済むやつはいるのか?いや、いないだろう。
喜んで自ら行った者もいるようだが…‥‥うん、犠牲になったのだった。




