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初・転移先での戦闘

戦闘描写は最初はちょっと稚拙かも

SIDEフレイ


「でやぁぁぁ!!」


 駆け抜ける勢いそのままで、フレイはハイウルフの群れに突っ込む。


ドガァァァン!!

「「「「キャイ―――――ン!?」」」」

「あ、思ったよりもかわいい悲鳴」


 何匹か吹っ飛ばしたが、意外にも子犬のような悲鳴を上げたハイウルフたちに少々罪悪感が湧いた。


 まぁ、人を襲っているので弁明の余地はないけど、なんか意外というか、もう少し狼らしい悲鳴を‥‥‥どんなのだ?



 何はともあれ、突然戦闘に突っこんできたフレイに対して、戦闘をしていた人たちも、ハイウルフたちも驚愕の目を向けた。



「な、何者だ!!」


 戦闘していた人たちの中から、全身が鎧で包まれた重装備の人が叫ぶ。


「見かけたんで手助けに入ってみた者だ!!」


 何者かと言われて、そうそう名乗るようなものでもないので、適当にフレイは叫ぶ。


【明らかに怪しさMAXな口上です】

(言われなくてもわかる)


 ナビリンからの声は、適当に心中で返答しておいて、今はとりあえず戦闘に集中すべきだろう。


……ついでに後でどう説明するかも考えておくか。


【設定、適当に考えましょうか?】

(あ、頼む)




 

(ナビリン、「探知機能」で敵総数の把握を頼む!)

【了解…‥‥約十二頭ほど、うち一頭が群れの長で、他の三倍の強さだと推定】


 すばやくナビリンが「探知機能」で敵の総数を把握し、詳細な位置を頭の中に浮かび上がらせてくれる。


 大体の位置を把握すれば、迂闊に間合いに入り過ぎることもないだろう。



「よし、まずは手ごろなお前から行くぞ!」


 とりあえず、敵の位置的に身近にいたハイウルフの一頭へ向けて、フレイは駆けだす。


【ハイウルフの主な武器は牙や爪、正面からの戦闘には注意を】

(つまり回り込んで攻撃していけばいい話だ!!)


 ナビリンのアドバイスを受けつつ、まずは手ごろな一頭に先制攻撃を仕掛ける。


突進してきたが‥‥‥


「キャリンッツ!?」

「遅い!」


 すばやく後ろへ回り込み、その牙や爪が使われる前に尻尾をつかんでぶん回す。


「そーーーーーーれ!!」


 ぶんっと投げた先には、他のハイウルフたちがおり、直撃していく。


 敵が混乱している間に、すばやく他のハイウルフたちにも攻撃を加える。

 次々と正面までに迫っては背後へ回り込み、バックドロップを決めたり、裏を読んで後ろへ振り向くウルフには、その裏をかいて回り込まないで自ら後ろへ振り返ったところを、蹴り上げたり、いろいろと素手でも可能な体術で攻めたが‥‥‥うん、案外弱いかも。


「グルルルルルルル!!」

「うおっ!?」


 突然、黒い塊がとびかかって来たので、慌てて避けた。


 見れば、ハイウルフの長であるらしい、黒く変色したハイウルフであった。



「うわぁ、相当激怒しているなありゃ‥‥‥」

【長として、群れの壊滅が信じられず、一騎打ちを望んでますね】


 低くうなる黒いハイウルフ……長というだけあって、確かに他のハイウルフたち以上に強そうだ。


……とは言え、比較対象が間違っているかもしれないが、炎龍帝よりは弱い。


「‥‥‥そうだ、ついでにアレの実験もしてみるか」


 炎龍帝との戦闘中に偶然できて、ドラゴンには通用しなかったが…‥‥普通のモンスターであれば、それなりに通用するかもしれない。



 互いに距離を取り、狙いを定める。


 先ほどまで、他に戦闘を行っていた人たちも手を止め、ごくりと唾を飲み込んでみているような気がした。



「グッルルルルルウ!!」


 ばっと飛び掛かり、その鋭い爪や牙を全開にして正面から突撃してくる黒いハイウルフ。


……背後へ回り込めるが、それはあえて俺はせずに、アレの実験をこのウルフで行う。


 

「今だ!!」


 あと数歩、それだけの距離となったところで、素早く俺は動く。


 爪を振り下ろし、開口して牙を出しているウルフの口内へ向けて、手を突き出す。


「『エアボム』!!」


 突き出した手の正面に、加速することによって押し出される空気が一気に圧縮し、一つの小さな空気の塊となる。


 その塊を突き出すようにして、ウルフの口腔内に入れ‥‥‥それで終わりの一手



「グル、」


 何かを入れられたとウルフが気が付いたように声を出したが、時すでに遅し。



ボッカァァァァン!!


 体内で圧縮された空気の塊が膨張し、ウルフの口の中がはじけ飛んだ。


 そのはじけ飛ぶ圧力で、ウルフの顎がはずれ、態勢を空中で崩す。



 その隙に、何の防御もされていない腹に蹴りを入れて‥‥‥それで、ウルフの命は潰えたようであった。


【口腔内爆発の時点で、脳震盪が過度に起きて致命傷でしたけどね】


 ちなみに、この技を炎龍帝に使用した時には、ブレスを吐かれて力づくで押し戻されたことがあったが‥‥‥一応、この程度の相手になら効果はあったようだ。





 とにもかくにも、これでウルフの群れは全滅したようである。


 息絶えて、死屍累々のウルフの光景はちょっと見ていて気持ちのいいものではない。


 というか、やり過ぎた感じがある。



(‥‥‥炎龍帝よりも弱すぎるというか、こちらが力を出し過ぎたというべきか)

【比較対象が、ドラゴンの中でも龍帝として数えられる一頭ですからね‥‥‥対象を何か別のものに変えないと実感がわきにくくなりますよ】

(そういうもんかね?)

【そういうものですよ】



 何にせよ、片付いたことは片付いた。


「うーん、でもちょっとやりすぎたかな?」

「「「これでちょっとかよ!」」」


 と、フレイのつぶやきに、見ていた人たちがツッコミを入れてきた。


 怪我もたいしたことがなさそうで、元気そうなのは良いことであろう。




「いやいやいや、これでちょっとと言えるレベルかよ!!」

「たった一人で、あれだけの群れを殲滅するとは……すごいな」

「やばいやん、あっというまやったやん」

「というか、最後の方でかなりえげつない技を出していなかった?」


 見ると、どうやら戦闘していたのは四人組の人達のようである。


 正確には重装備男性一名、金属製の軽装の防具を身に着けている男性二名、残るはなんというか、魔法使いっぽいローブを着た女性一名といった感じであろうか。


 


 とにもかくにも、この世界に転生して初めて出会った人間たちであろうか…‥‥なんというか、まともそうなので良かった。


 転生早々、ドラゴンの群れの中だったからなぁ‥‥‥。




 それは置いておくとして、この戦闘に乱入したこともあり、落ち着いたところでまずは互に情報を確認しあうことにしたのであった。




 まずは相手方の方から、重装備を着た男性が前に出てきた。


「どこのどなたかは知らないが、助けてくれてありがとう」

「いえ、偶然にも近くを通りかかり、悲鳴が聞こえ、身体が勝手に動いただけです。戦闘に乱入してしまったことはおせっかいだったかもしれませんが‥‥」

「とんでもない!!物凄く助かったよ!!・・・・・ああ、そういえば名乗る事を忘れていたね。わたしたちは冒険者育成学園『ヘルドーン』で、卒業試験を受けている学生パーティ『春風が吹く』だ。わたしがこのパーティの代表、サブローだ」


「‥‥‥冒険者育成学園?」


 え?なにそれ?


 冒険者って、なにかこう、ギルドにただ登録するだけで出来るようなものじゃないのか?



 炎龍帝との生活では、教養として通貨などは学んでいたが…‥‥言われてみれば、冒険者について詳しい話を聞いていなかった。


 何しろ、炎龍帝は血沸き肉躍る戦いを求めていたとはいえ…‥‥そういった類の事は知らなかったようである。


 というか、情報がやや古いらしい。ドラゴンゆえに人間の生活圏外から離れていたせいか、どうも情報のズレがあるのだと、フレイは気が付いた。



「おや?知らないのかい?」

「あー、えっと、はい。なにしろ‥‥」


(ナビリン、どう答えればいいんだろうか?)

【かなり遠い田舎からやって来た、と答えればいいです】



 どう返事したものかと一瞬ためらい、心中で尋ねてみたところそう答えが返って来た。



「‥‥‥自分は、その、かなり遠い田舎からやって来たんです」

「どのぐらいだ?」

「遠く、それこそかなり遠くです。それで、色々と目標もあったので、冒険者になるためにさまよって来たのですが‥‥‥冒険者育成学校って何ですかね?」

「今どき知らないとは‥‥どれだけ遠くから来たんだ?まあいい。助けてくれたこともあるし、手短に説明するならば、そうだな‥‥‥」



 あまり不審に思われなかったようで、サブローさんは説明し始めた。


―――――――――――――

『冒険者育成学園』

冒険者と呼ばれる職業につきたい人が、短期集中で通う学び舎。

冒険者としての模範的な行動や、生活の知恵などを学習するために必要であり、学ぶためには熱意と実力が必要である。

なお、ここで学ばなくとも冒険者になることはできるのだが、技能のあるなしは後々響くため、出来るだけここで学んでいくことが推奨される。

―――――――――――――


「なるほど…‥‥そういう所なのですか」


 確かに、言われてみれば冒険者になりたいとしても、どのようなものなのか詳しく知る必要性がある。


 普通に見ているだけでも学べるそうだが、よりきちんとした冒険者になりたいのであれば通って損はないそうだ。


 しかも、長くて数カ月ほどらしいから、そこまで負担があるわけでもなさそうだ。




「ところであなたは誰?」


 ふと、思い出したかのように魔法使いのような格好をしている女性が尋ねてきた。


「あ、俺の名前はフレイです。冒険者になるために、このたび田舎の方からやって来たのですが‥‥‥どこへ向かえば良いのか、わからない状態で来てしまったもので‥‥」


 まぁ、間違ってもいないことだし、嘘はついていない。



「なるほど…‥‥あれだけの実力があるなら、確かに冒険者になって稼いだりもできるわね」

「うちに欲しいと言いたいが…‥‥よく見れば、まだ幼い少年ではないか」

「だが、それであのウルフの群れを討伐したのだから大したものやん」


 他の人達もうんうんと頷きつつ、ちょっとは納得してくれたらしい。



「でも、今月はもう冒険者になるのは無理だよ」

「え?」


 何でもかんでも、毎回冒険者になりたいがために出てくる人が多いそうなのだが、そのために学園に通って箔を付けようとする人たちがいるそうで、少々学園の方では受け入れが試験形式になって、月ごとに決まった人数しか受け入られないらしい。


 ギルドの方でも、出来れば学園に通って卒業した人がなって欲しいそうで、こちらも登録が少し限られ気味で、今月はちょっと厳しいのではないかということらしい。





……なんてこったい。早々にして、いきなり最悪の現状がでちゃったよ。


 冒険者を目指すのに、すぐにはなれないとは…‥‥人生って残酷である。



ずーんと、フレイはその場に落ち込むのであった。



――――――――――――――――――――

SIDE「春風が吹く」一同


 落ち込むフレイを見て、パーティ「春風が吹く」の一同は相談し始めた。


「何かものすごい落ち込んだのだが‥‥‥」

「田舎から来たと言うし、知らなかったこととはいえ、すぐに冒険者になれないということにショックを受けたのよ」


 サブローの言葉に、パーティ内で魔法を重点的に扱う魔法使いにしてこのメンバー唯一の花形のリアが答える。


「可愛い少年だけど、あの戦闘力はすごいわね…‥‥じゅる」

「おいリア、何故よだれを垂らすやねん」

「可愛い者はめでたくなる。将来はなかなかイケている男性になりそうな人なら、なおさら求めたくなるでしょ?」

「‥‥‥なんもいえないやねん:


 リアの言葉に、呆れたように肩をすくめるのは、軽装備ながら実は結構色々な暗器を持つ、アサシンと呼ばれる部類に入るジョン。


 それに同意するかのようにうなずくのは、このメンバー内では体術をメインにする格闘家ケンタであった。



「あの体術、中々洗練されていたが‥‥‥上過ぎて、ちょっと自分が卒業できるのか不安になって来たな」

「何を言っているやねん、ケンタ」

「何はともあれ、あの少年はわたしたちを助けてくれたのだが‥‥‥それで辛い事実を見せてしまったようで、恩をあだで返してしまったようなものなのだろうか」

「サブロー、お前のそういう所が良く空気を読めないと言われるんだよ」

「なんにせよ、このまま別れるのも忍び難いですし……そうだわ」


 ふと、リアが何かを閃いたかのように手を打った。



「ねぇ、えっとフレイ君でいいかしら?」

「なんでしょうか?」


 リアが問いかけると、落ちこみながらもフレイが答える。


「そんなに冒険者になりたいのなら、少しの間だけ私たちと行動を共にしてくれないかしら?」

「「「「え?」」」」


 リアの出したその提案に、尋ねられたフレイも、メンバーのサブロー、ジョン、ケンタも目を丸くして疑問の声を上げた。


「今、私たちは冒険者育成学園の卒業試験中なのよ。その試験の内容が、この先少し進んだところにある、最近できた小さなダンジョンの調査なんだけれども…‥‥それを手伝ってくれれば、すぐに学園に入れるように手助けをするわ」

「‥‥‥どういうこと?」


 リアの言葉に、半信半疑な目を向けるフレイ。


「実は学園のほうに『特別推薦枠』と言うのがあって、それを利用すれば、入学募集人数を締め切っても入学が出来るのよ」

「特別推薦枠?」

「ええ、卒業予定のパーティが一人だけ推薦できるもの。ゆえに、私たちのパーティは一人だけ、推薦出来て‥‥‥お礼も兼ねてそれをあなたに適用してあげようと思ったのよね。ああ、手伝ってほしいと言うのはさっさと終わらせてその手続きを早くしたいと言うのがあるのよ」

「おい待てリア、そんな話を聞いたことがないのだが…‥‥」


 リアの言葉に、サブローたちはそう声を出した。


「当り前よ。だってこの話って校則第二千九十二条に書いてあるもの。物凄く分厚い校則がかかれた本をよく読んでいたからこそ、覚えていたのよね」

「‥‥‥まじか」

「そう言えば、彼女は本をよく読んでいたな」

「あの下手をすれば鈍器にもなる校則の本を読破していたのか……」



 とにもかくにも、これで問題は特になさそうである。


「で、どうするかしら?話に乗るかしら、乗らないかしら?」

「‥‥‥乗るかな」

「決まりね」


 リアの問いかけに、フレイがうなずき、交渉が成立した。



……このパーティのリーダーはサブローだが、彼にも断らずに交渉したりアが、実はこのパーティの作戦参謀兼学園の裏女番長と呼ばれていた事実を、フレイは知らなかったが、とにもかくにも、しばらくの間フレイは彼等と行動を共にすることになったのであった。

……取り合えず、しばらくパーティ「春風が吹く」とともに行動をすることにしたフレイ。

彼等を手伝って、さっさと冒険者になるという目的の前に、学園に入ってしまおうということになったのは良いのだが…‥‥そう都合よく、事が運ぶわけではない。

その事を知るのは、少し後になってであった‥‥‥

次回に続く!!


……ちなみに、そのあたりに散らばったウルフたちは、丁寧に処理しました。

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