何やら面倒な話しの予感
正直言って、このサブタイトル。
主人公側のというよりも、後半の方に当たるかも
SIDEフレイ
「ユキカゼ、そっちはもうすべて倒したか?」
「ああ、倒したでござるよ!」
周囲が血の海と化してはいるが、なんとか大量のゴブリンたちの群れを、フレイたちは退けた。
ほっと一息を突いたところで、フラウの方も見る。
「そっちはどうだー!」
「こちらも全員、無事なの!」
ぐっと指を立てるフラウ。
現在、襲われていた人たちを見捨てないで、ついでに苦戦しているようだったので、ある程度ツおい奴がいるかなと思って来たのだが…‥‥ちょっと手ごたえがなさすぎた。
【『ゴブリンウォーリア』、『ゴブリンタンク』などの、ゴブリンの上位種で構成されていた群れのようですね‥‥‥ここまでのものですと、統率をとる『ゴブリンリーダー』もしくは『ゴブリンジェネラル』とかがいるはずなのですが…‥‥あ、どさくさに紛れて切り捨てられてますね】
ナビリンによれば、ユキカゼの方に一体いたようだが…‥‥首をすぱっとやられていつの間にか絶命したらしい。
そのせいか、その時点から統率が取れていなかったようだが…‥‥とにもかくにも、襲われていた人たちに話を聞くとしますかね。
「助太刀感謝する。わたしがこの『白薔薇の乙女』騎士団を率いる団長、マッソンだ」
「俺達は、冒険者になるための登録するギルドを目指すとともに、修行をするための場所も目指している旅の者だ。フレイと申し上げる」
「私は、彼に憑いている風精霊のフラウなの」
「拙者はフラウ同様の身である氷精霊のユキカゼでござる」
なかなか立派そうな馬車を奥にやりつつ、その護衛をしていたらしい人達の代表と、とりあえず話すことになった。
しかし…‥‥騎士団と言えば、まえのでぶでぶ饅頭祭りが自称「黄金騎士団」とか言っていたが、こちらの方が品があるなぁ。
というか、比較すらできないか。…‥‥そういえば、あのでぶでぶ饅頭祭り共ってどうなったんだっけ?
とにもかくにも、話を聞いてみると、どうやらこのマッソンさん含む騎士たちは、現在停車させている馬車に乗車している、とある偉いお方の護衛をしていたらしい。
ここ数日は特に何事もなく、平和な旅路だったそうだが、このあたりに差し掛かると、急にあのゴブリンたちの襲撃を受けたそうなのだ。
「恥ずかしいことだが、その平和さで我々は油断してしまい、判断に少々遅れが生じてしまい、今回のような苦しい戦いになってしまったのだ。そこで、助太刀に入ってくれたことは非常にありがたかった。感謝する」
「いえ、こちらこそ見かけたものですし、困っていたようですからね」
ナビリンが探知したことで見つかったのだし、別に悪人でもないのであれば助けて良いだろう。
これが盗賊とかであればそのままフルボッココースなのだが、まぁ、そんなに簡単に出くわさないよね?
【‥‥‥なんでしょう、その言葉のせいで、遭遇確率が上がったような気がしますね】
ナビリンが何やらボソッとつぶやいたが、聞かないことにした。
「とりあえず、こちらが手助けしたのは良いとして、その護衛している人と言うのは?」
「すまないが、それはお答えできない。ただ、物凄く高貴なお方とだけ考えて欲しい」
馬車の方を見ながら尋ねたフレイに、マッソンは首を振ってそう答えるのであった。
…‥‥そう簡単に言えない人となると、何処かの公爵とかなど高い地位にいる貴族なのであろうか?
お忍びとか、視察、取引などの様々な理由が考えられるが、むやみに詮索しないほうがよさげである。
「わかった、こちらとしても詮索はしない」
「助けてもらった側としてはすまないが、ご理解感謝する」
とにもかくにも、このままここで別れて‥‥‥‥とまではいかないようだ。
フレイたちが駆けつけて救援したとはいえ、負傷者は少なくない。
動けないこともないが、護衛としての防衛能力は全体的に下がってしまうようだ。
そこで、一時的にフレイたちもその護衛の中に加わることにした。
幸いというか、向かう先の途中にその護衛対象の向かう予定の都市があるので、そこまでは一緒に向かえるからだ。
ただ、現在フレイたちは冒険者登録をあの爆破で出来ていないので、フリーの旅人の形で雇われることになる。
…‥‥とは言え、一応冒険者育成学園の卒業証明もできるので、登録時にこの護衛に関しての記録も加算することができるようだ。
「勿論、これは依頼のような形となるので、報酬も約束しよう。しかも時間としては、休息なども含め2日間ほどである」
「ああ、それならばこちらも受けよう。フラウ、ユキカゼもいいな?」
「はい、主様の言うとおりにするの」
「うむ、主殿の判断に異論は出さないでござる」
フラウもユキカゼも文句はないようで、このまま護衛しても問題はない。
「では決まりだな」
とりあえず、2日程度とはいえ護衛依頼を受けるフレイたちであった。
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SIDE『白薔薇の乙女』騎士団団長マッソン
…‥‥夜になり、一旦この場で野宿することが決定した。
護衛対象たちは馬車の中で睡眠をとり、騎士団は交代で夜の見張りをすることになる。
何しろ護衛がいたとしても、真夜中を狙って襲撃をかけてくるモンスターや野党などがいるからだ。
「しかし‥‥‥まさか、まだ年若い少年があれだけの実力を持っているとは驚きだったな」
「ん?どうしたんですか、団長?」
交代の時間となり、見張りをする団長のつぶやきに、同じ時間で見張りをすることになったまだ新米の騎士が尋ねた。
「いや、昼間に救助してもらい、その実力を見込んで臨時的に護衛を頼んだ少年…‥‥フレイと名乗る者の事で、ちょっと思うことがあってな。今は時間を外れているから寝ているようだが…‥あの若さで、あれだけのモンスターたちを良く蹂躙したなと感心しているんだ」
「あ~‥‥‥あのやばい群れの事ですね。確かに、我々が物量差で負けているところに救助してくれたのは良いんですが…‥‥なんであんなに強いんでしょうかね?まだ幼げな少年に見えるし、それに……」
その新米騎士が口を濁したが、団長は彼が何を言いたいのかわかった。
「ああ、精霊を従えていたことか。それも2体、風と氷‥‥‥‥特に氷の方の少女は剣術の嗜みがあるようだ。あれは下手したら、うちの将軍殿が勝負を挑みたがるかもなぁ‥‥‥もしくは弟子にして引き取りたがりそうだ」
「不敬かもしれませんが、あの人息子さんに恵まれていないですからね。いえ、いることはいるのに、性格が屑って…‥‥」
新米騎士のその言葉に、団長は苦笑いをする。
彼らの上司、騎士団のさらに上を束ねる将軍がいるのだが、その将軍は隠居を考えている。
だがしかし、その息子が自分が将軍になってやるのだと言っている割には、色々と問題を起こしまくり、頭が痛い状況なのである。
「とはいえ、あの精霊は少年に従っているようだから無理だとは思うが…‥‥何にせよ、かなり惜しい人材だろう」
昼間の討伐光景を見る限り、相当実力がある事が理解できる。
ただ、惜しむらくはどうも冒険者になるようで、騎士団には入りそうに無いという所であろうか。
「まだ登録していないようですから、勧誘したらどうですか?」
「無理だと思うから、こうつい口に出るのだ」
団長は理解している。
今までいくつもの若者たちを見て、ある程度どのようなものなのか理解できるようになっており、その目で見る限り…‥‥フレイはどう見ても、騎士の器に収まり切らなそうなのだ。
ゆえに、勧誘はすぐさま諦めたが、彼らはいま請け負っている護衛対象の安全のために、彼らを依頼という形で一時的に雇った。
「とはいえ、これで安全という訳でもなさそうだがな」
「どういうことですか、団長?」
「よく聞け。昼間に襲ってきたのはゴブリンウォーリアなどの集団だったよな」
「はい、かなり苦戦しました」
「ただな、あの集団は普通、ああやって正々堂々と襲ってくることはないはずだ」
…‥‥ゴブリンウォーリアしかり、ゴブリンというモンスターは、世の中に知られている中でもメジャーな物ではあるが、彼らは「正々堂々」という形をとることは、まずない。
どこかに隠れ、密かに襲撃をかける。
そういうことに徹するものが多いのだが、まぁそれなりに弱いので知恵を絞った結果ともいえ、卑怯とは言い難い。
だがしかし、昼間に襲ってきた群れは、いくらなんでも無謀すぎるというか、正面から襲って来たのである。
「正面から襲う‥‥‥というよりも、後方から襲う方が彼らの得意分野のはずだ。だがしかし、それとは異なる行動をゴブリン共は行った。その意味が分かるか?」
「えっと…‥‥もしかして、誰かが指示をあらかじめ指定して襲わせていた可能性があるってことですか?」
「誘導してと言った方が正しいかもしれないが…‥‥そういうことだ」
それはつまり、彼らの護衛対象を狙う何者かが起こした犯行の可能性もあると、騎士団長ははっきりと告げた。
「って、何でその話を新米の自分にするのですか?」
「お前の場合、新米ゆえに我々から学ぶために、常に目の届く範囲で置かれている。だがしかし、その範囲外から…‥‥」
そこまで告げられたところで、ようやく新米騎士も悟った。
もしかすると‥‥‥‥考えたくないことだが、現在護衛している騎士たちの中に、誰かそのような行為、裏切りとも呼べるようなことを行っている可能性があると。
「一応、今夜は大丈夫だろう。新しく雇ったあの少年たちを警戒してくるだろうし、昼間の件で平和ボケが吹っ飛んだ。だがな、油断はするなよ?」
「はい!」
びしっと敬礼し、新米騎士は団長の警告に従う。
「ついでにだが‥‥‥‥もう一つ、ちょっとある問題も起きた」
「と言いますと?」
「護衛対象である高貴なお方が…‥‥どうもあの少年たちが気になるようだ。興味を示されると、何かこう不味い予感がする」
「‥‥‥なるほど、では接触しないように気を付けるようにと」
「そういうことだ」
そう告げると、団長ははぁぁっと溜息を吐いた。
裏切りの可能性、馬車の護衛対象の行動の読めなささ‥‥‥‥何かこう、一気に嫌な予感というか、大嵐が来そうな感覚に、震え、胃をしくしくと痛めるのであった‥‥‥‥
一時的に護衛に加わるフレイたち。
何かこう、嫌な予感を騎士団長は感じているようだが…‥‥それは的中してしまう。
というよりも、30%程から100%になってしまったと言うべきか…‥‥
次回に続く!!
……精霊が憑いていることに関してあまり言っていないのは、あまり詮索しないように気を使っていたりする。
というか、大丈夫なのだろうか…‥その団長の上司の息子とやらは。どこかで問題を引き起こしていそう。




