そう簡単に切り捨てられないでしょう
フレイの称号に「行く先々の事件魔」と付けたくなった…‥‥
でもそれだと、あの某頭は子供、身体は大人の探偵と同じなんだよなぁ‥‥‥
SIDEフレイ
修行の目的地へ出向くために、学園を離れて二日経過していた。
「修行の場所まであとどのぐらいかな?」
【ひと月はかかりますね…‥‥まぁ、道中までの道のりで足腰が鍛えられますし、修行後では今よりも早く移動できるでしょう】
「長いの。でも天気がいいから平気なの」
「悪天候の中を進むのは避けたいでござるからなぁ」
横をフヨフヨと漂うフラウの言葉に、ユキカゼが笑いながら答える。
何にせよその通りというか、天候が良いのは旅路として好条件であろう。
モンスターなどもちらほら見かけるが、大体がすぐに対処可能であり、ナビリンの探知機能で奇襲も防げる。
「盗賊とかがでたらちょっとその処理に困るけどね」
【以前もあったように、真夜中に代金を置いて盗賊を持って行ってくれる方がいればいいんですけれどねぇ……はぁ、スキルなので表立って交渉ができないのが、ちょっと残念ですよ】
フレイの言葉に、どことなく残念そうな声を出すナビリン。
ナビリンはスキルであり、フラウたちのような精霊でもないし、思考だけ独立した存在のような物だからな‥‥‥出回りたい欲もあるのだろうけれど、こればかりはしょうがない。
まぁ、解決方法も探って見るのも悪くないかもね。
「それにしても、ここまで平和な旅路っていつ以来かな……」
【…‥‥】
フレイの言葉に、ナビリンは答えなかった。
というよりも、そもそもこれまで平和な旅路があっただろうかと疑問を抱いたのである。
なんとなくだが、経験上無事な旅路はなかったように思え…‥‥そしてすぐに、ナビリンはその考えが的中していることを悟るのであった。
【あ】
「どうしたナビリン?」
【ここより先、北北東500m先で、戦闘を確認。モンスターと人間の争いのようですが、少々劣勢と思われます】
そんな情報を聞いてしまったが…‥‥どうしようか?
「そう言うのに限って、色々と面倒ごとになると経験上学んでいるんだけど…‥‥どうしようかね?」
「うーん、主様の思うままにすればいいの」
「そうでござるな。拙者たちは反対せぬでござる」
フラウたちは決定に従うようだし…‥‥まぁ、相手が面倒ならば、その時はその時かな。
「苦戦しているってことは、それなりに強そうなモンスターなのかもしれないし、自己研鑽に利用できそうだから、救援に向かおうか。ナビリン、案内を頼む」
【了解です】
ナビリンに道案内を頼み、その戦闘をしている地へ向かうのであった…‥‥
―――――――――――――――――
SIDE???
「グルブブ!」
「ゲボブバァァァ!!」
「ちぃっ!!物量で負けているな!!」
「どこから湧き出ているんだこのモンスター共は!!」
現在、ある馬車を守っている騎士たちは必死になって応戦していた。
目の前に群がっているのは、ゴブリン・・・・・ではなく、その上位種の群れ。
「『ゴブリンウォーリアズ』達ってことは、何処かに司令塔の奴がいるはずだ!!そいつをつぶせぇ!!」
たかがゴブリン、されどゴブリン。
一体一体がまだ対処できるほどの弱さだとしても、その物量で押してくるのだ。
しかも、何処かに指揮を取る者がいるのか、統率が高く、的確に攻めてくる。
「急いで姫様達が乗っている馬車を、ここから離れさせろ!!」
「ダメだ、ゴブリンの波で進められねぇ!!」
包囲され、なんとかしのいでいるのだが、このままで物量に負けてしまうのも時間の問題。
なんとしてでも、彼らが守るべき者だけでもこの場から逃さないといけないのだが、どうしようもない。
苦戦し、疲れが見え始めていたその時であった。
「ゴブバァァァ!!」
「ブブブ……」
ぼぉぉぉぉぉぉぅ!!
「「「ゴッブバァァ!?」」」
「なんだ!?」
突如として、ゴブリンたちの群れに、火の塊が突っ込んできた。
いや、正確には‥‥‥火を纏った少年が突っ込んできたのだ。
「なんか困っているようだし、人助けに参上した!!」
そう叫んだかと思うと、その少年から新たに二人の影が飛び出してきた。
「フラウは騎士たちの援護を、ユキカゼは俺と共に殲滅戦を開始だ!!」
「了解なの!!」
「わかったでござる!!」
まだ何者か、把握できていないが、少なくとも自分たちの敵ではないと騎士たちは判断。
色々とツッコミどころがあるが、そんなことよりも今は敵の殲滅あるのみ。
「風の精霊魔法…‥‥『ウインドシールド』!!」
出てきた少女、フラウという名が聞こえた少女が何かそうつぶやくと、騎士たちの周囲に風の膜が貼られる。
「な、なんだこれは!?」
「まさか、精霊魔法か!?」
騎士たちの中には、一応魔法についての知識がある者もおり、瞬時に何か見ぬいて驚愕の表情を見せる。
ゴブリンたちが騎士たちへ隙を突いて襲撃しようとしたが‥‥‥その膜によって、弾き飛ばされた。
ばしぃっ!!
「ギャべェェ!?」
「おお、ゴブリンがはじかれたぞ!!」
「今のうちだ、突撃してふっ飛ばしていけぇぇ!!」
騎士たちのリーダである団長が叫ぶと、士気が向上した騎士たちはゴブリンたちに勇猛果敢に逆襲し始め…‥‥
「我流剣術『氷剣乱舞』!!」
「炎魔法『フレイムウィップ』!!」
ドッガァァァァァァァァン!!
「「「「ギャブゴブァァァァァァ!!」」」」」
……氷の塊がゴブリンたちを無造作に切り裂き、火で出来た鞭が薙ぎ払って、騎士たちが逆襲する前に、全てが片付いてしまったのであった。
「…‥えーっと‥‥‥今、守られた必要あるか?」
「なんだろう、この瞬時に片づけられたやりようのない気持ちは」
「強すぎるというか、相手が可哀想になるレベルだぞ…‥‥」
あまりのあっけなさに、騎士たちはしばし、放心するのであった‥‥‥‥
……騎士たちにフラウが精霊魔法を使う意味がなかった。
というか、先ほどまで押してきていた相手を、こうもあっさりと片付けられ、騎士たちはしばし固まる。
相手が誰であろうと、助けられたことは助けられたのだが・・・・・・自信を無くすなぁ。
次回に続く!!
…‥珍しく襲撃イベントみたいな感じ。でも、こんな都合よくゴブリンって襲ってくるものだろうか?




