報告ついでに
普通に卒業して終わりという訳でもなさそうだ‥‥‥
SIDEフレイ
「なるほどぅ……モンスター・カーニバルが起きたのであれば、逃げてくれてよかったほうでしょう。あれに真正面から立ち向かうのは、流石に無理ですしぃ、拡散したあとのほうが、倒しやすいので討伐して素材にしやすいのでいい判断でしょうぅ」
ニヤリと笑みを浮かべつつ、机に肘をつけながらセドリッカ学園長はそう述べた。
現在、無事に冒険者育成学園ヘルドーンにフレイたちは帰還し、卒業試験内容であったダンジョン調査と問題を報告しているのである。
「そうですか、ではこれは‥‥‥」
「ええぇ、もちろんモンスター・カーニバルは天災のような物ですし、仕方がないでしょうぅ。ダンジョンとの相性の問題もありましたしぃ、これで試験は完了・合格で大丈夫ですぅ」
ぽんっと卒業試験内容であった報告書に判を押され、卒業できる認定をフレイたちはもらった。
「ただしぃ」
と、ここで学園長がは少し考える様なそぶりを見せる。
「何かあるのでしょうか?」
「途中で盗賊にあったとか、その氷精霊に出会って仲間にするとかいろいろあり過ぎますねぇ……計算してみると、何かしらのアクシデント遭遇率が、例年の一人当たりの卒業生たちのものに比べると、150%以上という結果ですねぇ」
150%以上って‥‥‥普通の人がどれぐらいなのか気になるな。
「となると、冒険者になって活動した際にも同様の事に巻き込まれる可能性が非常に高く…‥‥現状の実力では、少々不安にも思えますねぇ。ダンジョンに挑んだ際にも、自分たちの扱える範囲では少々難しいと思えた個所もあるようですしねぇ」
要するに、学園長が言いたいのは…‥‥今のままフレイたちが活動したとしても、今後予期せぬアクシデントに見舞われる可能性が高く、対応しきれない場合が考えられるようだ。
「そこでぇ、冒険者として活動する前に、ちょっとある人物の元に修行をしに行くことをお勧めしますねぇ」
「ある人物の元ですか?」
「ええ、全員がどうも我流で今の強さを得ているようですがぁ、やはり何かをしっかり学んだ方が良いと思いますしねぇ。その気があれば、紹介状をここで渡しますが…‥‥どうでしょうかねぇ?」
セドリッカ学園長の提案を聞き、フレイたちは考える。
あのダンジョンでも現在の状態では攻略が難しいし、現状炎龍帝に勝てる可能性も低い。
ならば、修行できる機会があるのであれば…‥‥するべきではなかろうか?
「‥‥‥じゃあ、お願いします」
「お、ならこれを持って行ってねぇ」
セドリッカ学園長から紹介状とやらを貰い、フレイたちは退室したのであった‥‥‥‥
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SIDEセドリッカ学園長
「…‥‥ふぅ、これで良かったかもねぇ」
フレイたちの退室後、セドリッカは机の上に置いていた書類の束を眺めていた。
今回、フレイに課した卒業試験時の報告書などもあるのだが‥‥‥それ以外にも、ある書類が紛れていた。
「ダンジョン調査とかはいいけれども‥‥‥‥新たな氷精霊の確保をしたのは驚きだねぇ。だから、目を付けられたのかな?」
今回のダンジョン調査に向けての道中で、フレイが新たに氷精霊を仲間にしていたことは驚いていた。
ユキカゼという名をつけ、どうやら近接戦闘を補ってくれるようだが…‥‥正直な話し、そんなことはどうでもよかった。
精霊が増え、有名になってくれれば学園の名も挙がるだろうし、入学をしようとする生徒たちも増え、必然的に利益となるはずなのだ。
だがしかし、それ故に狙う馬鹿もいる。
そして、その馬鹿に関して考えていたので、学園長の配下の者たちにある程度リストアップしてもらっていたのだが‥‥‥少々厄介な者たちの名が挙がったのだ。
「修行という名目で、彼らの手が届かない場所に一時的にやろうと思っていたが…‥‥こうもあっさり受け入れるとは思わなかったねぇ。まぁ、強さを求めているようだしよかったかもねぇ…‥‥」
実は今回のフレイたちに修行を持ちかけたのは、その厄介な輩たちから一時的に匿うという目的があった。
修行を受けさせる相手はセドリッカ学園長の知り合いでもあり、信頼できる相手。
ついでに、その人物は年中修行相手を募集していたりして、紹介したらちょっとお金が学園長の元に入ってきたりもするので、悪い話しではない。
現状のフレイたちの実力では不安なところもいくつか見られたので、その部分の改善を行い、なおかつ厄介な輩たちから遠ざけ、最終的には学園長も得できる今回の企み。
「ま、将来的な金稼ぎ筆頭になりそうな、未来あふれる若者を守るための投資と考えれば、物凄いお得ですねぇ」
ニヤリと笑みを浮かべ、学園長は頭の中に描く。
まだフレイは年若く、幼げな見た目であるので冒険者になったところで、実力を知らない者達が馬鹿をやらかす可能性もあった。
だが、修行に時間をかけ、成長すれば……馬鹿共もそうは来ないだろうし、フレイたちを狙うような輩も簡単に手出しできなくなるであろう。
ついでに少々、名を上げてくれれば学園も有名になるし、将来を考えるのであれば悪くない選択だ。
そう考えると、自然とセドリッカ学園長は笑みを浮かべ、その狙うであろう輩たちへの対処方法を考え始めるのであった‥‥‥‥
どうも学園長手のひらで動かされているような気もするが、その事に気が付かないフレイたち。
卒業したとしても、今の実力ではまだまだと思えるし、修行はちょうどいいかもしれない。
自分達の実力向上のために、修行を受けることを決めたのであった。
次回に続く!!
……最初の頃は守銭奴と思っていたのに、いつのまにか投資家のような働きになっているような。
なんにせよ、フレイたちにしても学園長にとっても都合がいいので、悪くはない。
まだ若いし、パワーアップを目指すのであれば断る手はないだろう。
……とはいえ、その紹介状の相手ってどんな人物かな?




