嫌な予感程当たりやすい
良い予感と言うのは宛にならないのに、嫌な予感という方が当たりやすいのはなぜであろうか?
SIDEフレイ
仮ギルドが炎上するという騒動があった翌日、フレイは宿屋で目を覚ました。
「う~~~~ん、良く寝たなぁ」
ぐぐっと腕を伸ばし、朝日が入り込んで明るくなった室内でフレイはそうつぶやく。
「おはようなの!」
「今日も良い日でござるな!」
フレイの起床と同時に、フラウたちが体内から飛び出してきた。
中に入っているのが分かってはいるけれども、やはりちょっとびっくりするな。
とりあえず身支度を整え、フレイたちは宿の食堂にて朝食をとることにした。
「んー、にしても今日はどうしようか?」
昨日の時点で、この地のダンジョン「マブロック」について、大体のところは理解できた。
ただ、最奥部まで目指そうとしても、今のフレイたちの戦力を考えるとたどり着くには厳しいように思われた。
精霊、龍魔法と言ったものがあっても、ダンジョンと言うのはそうやすやすと突破させてくれない者であり、これ以上の進軍は無理だと思えたのだ。
ゆえに、今日は皆の意見を聞いて無理そうであれば学園へ帰還し、一応できたダンジョン調査についての書類を提出して終わりにすればいいと考えたのである。
「ふむ、主殿の言わんとしていることは分かるでござる。何はともあれ、今はこのダンジョンを進軍できそうにないでござるからなぁ」
「無理しても良いことはないの!」
皆の意見的には、やはり帰還した方が良いという見解になった。
「それじゃ、学園へ帰還する準備を…‥‥ん?」
そこでふと、フレイは気が付いた。
「ナビリン……さっきから黙ってないか?」
ここまで会話している中で、ナビリンが入っていないことに気が付いたのである。
まぁ、スキルであるナビリンが話さないこともあるだろうと思ったが…‥‥‥
【…‥‥ちょっと不味いですね】
「え?」
ナビリンがぽつりとつぶやいたけど、その声はどこかやばい予感を思わせた。
「不味いって、何が?」
【探知機能感知‥‥‥‥ダンジョン方面から大量のモンスター発生・上昇確認】
‥‥‥‥え?
その言葉に、フレイは固まった。
ダンジョン内にモンスターが湧くのは別に普通である。
大量に湧くのもそのようなトラップがあったりするので別におかしい事ではない。
だがしかし、「上昇確認」という言葉は…‥‥つまり、
「ダンジョンからあふれだそうとしているのか?」
【ザッツライト。しかも規模的に…‥‥『モンスター・カーニバル』ですね】
なぜ英語で返答したのかツッコミを入れないとして、やばいやつが来たようである。
―――――――――
『モンスター・カーニバル』
楽しそうな名称に聞こえるが、その実滅茶苦茶最悪な現象。ダンジョン内で突如発生するものであり、別名『災害現象』とも呼ばれる。
大量のモンスターが発生し、凶暴化するうえに、ダンジョンから飛び出して周辺地域へ襲撃をかける。
発見できた時点ですでに手遅れで有り、早急な避難が求められる。
―――――――――
学園でも習ったが、このような現象は本当に災害規模らしい。
地震…‥‥がこの世界だと火山付近以外では少ないらしいので、恐れられる「地震、雷、火事、親父」ではなく、「雷、火事、親父、モンスター・カーニバル」とまで呼ばれるほどだ。
とにもかくにも、朝っぱらから最悪な現象を察知してしまったようである。
しかも、この現象は発見した時点で手遅れなので‥‥‥‥
「うわぁぁぁぁぁ!!」
「ダンジョンからモンスターが噴き出してきたぞぉぉぉぉぉ!!」
「急いで逃げろぉぉぉ!!モンスター・カーニバルだぁぁぁあ!!」
気が付けば、外には悲鳴が多く上がっており、慌てて見れば洪水のごとく押し寄せるモンスターの群れが、そこにあった。
「って、マジでやばいやつだこれぇぇぇぇ!!」
ここ、ダンジョン「マブロック」は主に火と土のモンスターが多い。
そして、ここでモンスター・カーニバルが起きてしまうと、土のモンスターならまだしも、火のモンスターが大量に出てしまうのだ。
容姿が赤いのが多いし、溶岩流のような光景であった。
「フラウ、ユキカゼ、全力で逃げるぞ!」
「了解なの!」
「流石に多勢に無勢すぎるでござるからな!」
いくら何でも、あれだけ大量のモンスターは流石に分が悪すぎる。
何にせよ、今は逃げるしかないのであった…‥‥‥朝っぱらからついていないというか、ふり切れるのであろうか?
何やら早々から面倒ごとに巻き込まれ、にげる羽目になったようだ。
いくら何でも相手が悪すぎるし、ここは逃げるしかない。
戦って英雄を目指したい阿保ならここで終わるだろうが、流石に今は自分の命が惜しいのであった。
次回に続く!!
…‥‥逃亡する主人公。しかし、逃げ切れるのだろうか?




