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転生、いきなり最悪過ぎだよ!!  作者: 志位斗 茂家波
1章:冒険者になるために
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目指せやゴルティック山道中 その5

戦闘に関して言えば、まだまだ精進する余地があるよなぁ‥‥‥将来的に炎龍帝と戦闘することになるけれども、今のままじゃまだ負けるな。

SIDEフレイ


「…‥‥っ」


 フレイが目を覚ますと、辺りは暗くなっていた。



 どうやら会気絶していた間に時間が立ち、日が沈んでしまったようである。


「あ、気が付いたの?」


 声をかけられて見てみれば、フラウが体から出て実体化し、焚火を起こしているところであった。


 そしてその横には‥‥‥



「…‥‥えっと、何をしているんだ」

「すまなかったでござる…‥‥」


 それはそれは、見事な土下座で謝っている魔精霊レイラの姿があったのだった。








「…‥‥なるほど、あの妖刀爆雷丸とやらに憑かれていてほぼ体の自由が利かなかったのか」

「そうでござるよ‥‥‥おかげで拙者が周囲から鬼神を見るような目を受け、その上いろいろとやらかした惨事のことは全て覚えているがゆえに……物凄く申し訳ないでござるよ」


 土下座からいったん普通に座ってもらい、フレイたちはレイラから事情を聞いた。


 鑑定で見た通り、やはりこの精霊はあの妖刀に取り憑かれた状況にあって、ほぼ乗っ取られていたらしい。


 体の自由は聞かず、それなのに意識がある状態だったそうで、相当辛かったようだ。


「拙者、血を見るのは苦手なのに……あの刀と来たズバズバッとどんどん切り捨て本当につらかったのでござるよ‥‥‥」


 涙を流しつつ、レイラは語った。




 元々、彼女は自由気ままな形を持たないただの精霊だったらしい。


 フラウのように人の姿をとってもおらず、のんびりと宙を漂ったりして気長に過ごしていたらしい。


 ところがある日、彼女が憑いていた器が不慮の事故で壊れてしまい、新たな器を求めて動き、適当に都合が良さそうなものに決めて憑いたところ…‥‥それが妖刀で、自分が憑くどころか反対に取り憑かれてしまったらしいのだ。


 黒髪ポニテの女侍のような姿になったのは、その妖刀の前の持ち主の姿を妖刀自身が与えた物らしく、名前が無かったのでとりあえず自称レイラという形で名前がついていたらしい。


 そして、姿を得て以来、刀が直接彼女を動かしていたそうなのである。なお、この「ござる」口調は刀の前の持ち主が頻繁に使っていたものらしく、完璧に刷り込まれたらしい。



「でも、そんなことをして何が目的だったんだ?」

「‥‥‥それがどうやら、主を求めていたそうでござるよ」


 取り憑かれ、操られている状態だったとはいえ、それなりに妖刀の思考はライラの中に入ったらしい。


 そしてそれを読み解くうちに、妖刀の目的が判明したそうなのだ。



 どうやら妖刀は自身を扱えるような剣豪、それも人を斬りまくるような輩を求めていたそうで、ゆえに旅をしながら理想の主を求めていたそうなのである。



「違法奴隷を扱っていた馬車に乗っていたのは、わざと奴隷となって憑いたところで暴れて、腕を買われて新たな主探しの拠点にしようと考えていたそうでござるが…‥‥まぁ、主探しは建前でござるな、本質は争乱、乱世、戦乱を望み、人を斬ることのみに生きがいを持った奴だったのでござろう」


 名刀だったらしいが、いつしか妖刀になったがゆえに狂ったのであろうか。


 そう考えると悲しい刀だったかもしれないが、人を斬る事に楽しみを覚えてしまったそうなので、もはや救いはなかったのかもしれない。




 そして現在、その妖刀はフレイの放った龍魔法によってこの世から消滅し、レイラもその取り憑かれた呪縛から解放されたようであった。


「かなりの迷惑をかけたことを深くお詫び申し上げるでござる」


 改めて深々と土下座し、謝るレイラ。


「いや、別に良いよ。妖刀に操られていただけならね」


 レイラが悪いのではなく、その妖刀による影響ならば罪はない。


 それに、妖刀に憑かれていたとはいえ、斬っていたのは盗賊のような罪人ばかりらしいし…‥‥あれ?



「ちょっと待てよ、あの馬車って違法奴隷が乗ったやつだったそうだよね?」

「そうでござるが?」

「レイラ以外にも奴隷がいたんじゃ?」

「皆等の前に逃げたでござるよ」


 ほれ、と軽くレイラが目をやったほうを見てみれば、馬車が完膚なきまでに粉々にされて、そこには何も残っていなかったのだった。




「拙者たちが争っている間に、皆素早く斬った馬車から逃げたようでござる。どこかの町や村に逝きつくでござろうが、おそらく大丈夫なはずでござろう」

【周辺に、我々以外の反応はありません。もう皆逃げ出したようですね】

「あ、でも盗賊のお頭だけはしっかり捕まえておいたの!」


 びっとフラウが指さしたほうを見れば、未だに気絶中のスキンヘッドのおっさんが幾重にも縄に縛られて気に括り付けられていたのであった。



「あれはどうしようか‥‥‥」

【放置を推奨いたします。引き渡せばそれなりの額になるかもしれませんが、もはや何の価値もありません】

「うむ、二度と悪さできぬように、先ほど目を覚ました際に戒めとして潰した(・・・)でござるしな。これ以上の刑を望まなくても良いでござろう」

「ぐしゃっと音がしたの!」



…‥‥何やら男としては恐怖の会話内容だった気がするが、何を潰したのかについては考えないほうが幸せかもしれない。


 相手は盗賊だし…‥‥‥子分とかも亡くなったし、もはや再起不能だからこれ以上のオーバーキルはしないほうがよさげである。



 ちなみに、辺りにあった死体とかは火を起こしてきちんと火葬したらしい。

 

 放置しておけばアンデッドになったりするそうだからね…‥‥冥福を祈るか。





 そう考えていると、ふと、フレイはある事に気が付いた。


「あれ?妖刀ってもう壊れたというか、消滅したよね?」

「そうでござるが?」

「アレって一応器になっていたやつだよね。となれば、消滅したということは器が無くなったということになるんじゃ……」

「…‥‥そうでござったぁぁぁぁ!!道理でなんか体調がおかしくて辛いんでござ、ぶっほぅっ!!」

「うわぁぁぁぁ!!なんか吐いて倒れた!?」

「いや、吐いたように見えるだけですの!」


…‥‥精霊は器がないと休むことができず、魔堕ちして魔精霊と化した状態から元の精霊として状態に戻れない。


 どうやら本人(?)も気が付かないうちに相当無理をしていたようで、レイラは倒れたのであった。



「ぐふぅ…‥‥そう言えば、相当無理やり体を動かされていて、休んでいなかったでござる……」

「同族として同情するの‥‥‥」


 倒れてぴくぴくと痙攣するレイラに対して、フラウはそうつぶやく。


 とはいえ、このままにして良いわけもないし…‥‥


「何か器があればいいんだけど…‥‥さっきまで妖刀に宿っていたのなら武器とかの方が慣れているかもしれないけど、ちょうど良いのがないな」


 盗賊や馬車の護衛達は武器を持って居たのだろうけれども、全全部使い物にならない状態で散らばっていた。


 武器を壊して戦力を奪ったりしたのだろうけれど…‥‥これじゃぁちょうど良いのがない。


「あ、そうなの!」


 そこでふと、フラウが何かを思いついたように叫んだ。



「私の時のように、主様が器になれば大丈夫なはずなの!」

「いやまて、それでいいのか?」

【一応、許容量的には爆散しませんのでご安心をしてください】


 フラウの案に不安を覚えたが、ナビリンがすぐに答える。


 一応、人間の体に限界はあるが、ある程度の精霊を宿らせることは可能らしい。


 ならば大丈夫なのかもしれないが‥‥‥



「レイラはそれでいいのか?」

「う、うむ……迷惑をかけた相手に、さらなる迷惑をかけるようで心苦しいでござるが…‥‥一つ問題があるでござる」

「というと?」

「今の拙者の『レイラ』と言う名は、あの妖刀に宿っていた時に付けられた仮初の名でござる。ゆえに、憑かせてもらうには‥‥‥名付けしてほしいでござるが、妖刀によってつけられたその名は避けてほしいのでござる」

「そうか‥‥‥とすればどうしようか」


 『レイラ』という名が嫌なのであれば、異なる名を付ける方が良い。


 妖刀は「爆雷丸」というやつだったし、それを連想させないような、もしくは対抗できるような名前が良いだろう。


 刀に対抗できるようなものとすれば‥‥‥拳銃か?


 いや、いっその事取り憑かれた不運を払えるような、駆逐できるような…‥‥駆逐か。



「だったらさ、『ユキカゼ』という名前ならどうかな?」

「『ユキカゼ』でござるか?」


 駆逐という言葉を聞いて思いついたのが、雪風という駆逐艦。


 確かあれも幸運艦と呼ばれていたはずである…‥‥周囲の運を吸い取っていたとか、そういう微妙な話しもあるそうだが、これならばいいのではなかろうか?


 

「ふむ……それで良いでござる。拙者はこれより『ユキカゼ』と名乗るでござるよ!」


 ぐっと指を立て、気に入ったらしいユキカゼはさっそく休息のため、そのまますっとフレイの中へ入った。



【って、何かいるでござるが!?】

【あ、どうも初めまして。スキルであるナビリンと申します】


 なにやらナビリンの存在を知って驚愕した声が聞こえたが…‥‥別に良いだろう。


 とにもかくにも、ゴルティック山への道中で新たな精霊が加わったのであった。



―――――――

SIDEユキカゼ


…‥‥あの妖刀に取り憑かれてから、どれだけの月日が流れたであろうか。


 人のような姿を得て、操られ続ける毎日であり、血を見てその度に痛ましく思いつつ、自由になれない自分を歯がゆしくも思った。


 だが、今はもうあのおぞましき妖刀はなく、拙者は自由の身になった。


 


 あの妖刀を止めてくれて、そして拙者を自由の身にしてくれて、本当に感謝したいと今の器となった少年に思う。


 憑いている時点で自由なのかという問いもあるだろうが、少なくとも思い通りに動けるだけでも満足なのだ。


 新たにユキカゼという名をもらい受け、このありがたさを拙者は一生忘れないでござろう。



…‥‥あの妖刀には散々な目に遭ったとはいえ、こういう出会いをもたらしてくれたことには感謝をするべきでござろうか。


 主を求めた刀に代わり、拙者が主を得てしまったようなものだが‥‥‥皮肉かもしれぬでござるな。




 そう思いながら、ユキカゼは自身の回復のために眠るのであった‥‥‥‥



新たな精霊ユキカゼが加わった!

さて、それはそうとして当初の目的を忘れてはいけないであろう。

もう間もなくゴルティック山へ到着である!!

次回に続く!!


…‥‥ユキカゼの詳細については、次回載せます。どういう精霊なのか、どんなスキルや称号があるのか、その他もろもろきちんと載せないとね。

盗賊の頭はどうしようか…‥‥まぁ、このまま放置で良いか。誰かが見つけてくれるであろう。

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