目指せやゴルティック山道中 その2
旅だって5日目。まだまだ山へ着くまでに騒動があるようで……
SIDEフレイ
ゴルティック山へ目指して5日目。
旅路は今のところ、少々盗賊のような輩に絡まれもしたが、順調と言えるだろう。
今日は天気も…‥‥
ざばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「‥‥‥全然良くないな」
【物凄い大雨なの】
まさかのゲリラ豪雨並みの雨に見舞われ、急きょ近くにあった木の陰にフレイたちは避難していた。
幸いというか、フラウが精霊魔法で風を起こして雨から守ってくれたので濡れていない。
フラウ本人は体の中に入っているので濡れることはなかったが‥‥‥こうやってサポートしてくれるのはかなりありがたいな。
「通り雨のようだけど、すごい雨だな」
【魔法、精霊魔法、龍魔法などによる形跡なし。人為的なものではなく、自然に起きた豪雨と推定】
ナビリンによれば、これは単なる自然の豪雨らしい。
なんでもこの地域では極稀に豪雨となる時があるそうで、その時にフレイたちは訪れてしまっただけのようだ。
「ナビリン、大体どのぐらいでやむと思う?」
【推定、約1時間程度は降りっぱなし。精霊魔法で風を起こして進むことも可能ですが、無理にとパする必要性もないでしょう】
まぁ、やむまで雨宿りしているだけで良さそうだ。
なお、この辺りは水はけも良いそうなので、洪水の危険性もないようだ。
「とはいえ、こうも待っているだけだとひまだな…‥‥しりとりでもするか?」
【賛成なの!】
【こういう時に言い暇つぶしができる遊びがあると便利ですね】
とりあえず、適当にしりとりをしてひまを潰すフレイたち。
…‥‥だが数分後、彼らは思い知った。
ナビリンがこのしりとりという遊びに置いて、最強であったという事を。
考えてみれば、ナビゲーションシステムのような存在であり、保有している言葉の数が、フレイヤフラウが小さな書物だとすれば、ナビリンは分厚い大辞典のごとく大量に持っていたのだ。
「く‥‥‥クイーンスライム!」
【む、虫眼鏡なの!】
【ネクロマンサー】
「さ、サンドワーム!」
【む、む、ムッシュゴブリン!】
「ん、ついてますよ」
【あああああああああ!!】
「今度はフラウか…‥‥これで何回目だっけ?」
【ずっとナビリンが勝っているの…‥‥】
【すいません、手加減できないというか、この手のものでは無敵なので】
全然すいませんというような気持のないような言葉がありつつも、フレイかフラウの負けが続き、なかなかナビリンが負けることがない。
ちょっと悔しくて、そろそろフラウと結託して何とかしてナビリンに「ぎゃふん」と言わせるような事にしたいと考え始めていたその時であった。
【‥‥‥おや?】
ふと、ナビリンが声を上げた。
【探知機能に反応あり。数百メートル先にて、戦闘を確認】
「え?」
どうやら戦闘が離れた場所で起きているらしい。
「盗賊とか、そう言った類のか?」
【反応だけで詳細不明。ただ、妙な感じです】
【というと、どう言うのなの?】
【やけに人が密集しており…‥‥おそらくですが、奴隷商人たちが襲撃を受けているか、もしくは犯罪者の護送中に仲間たちによる襲撃のどちらかと思われます】
…‥‥どっちにしても、関わりたくない類のようだ。
奴隷と言うのはこの世界に制度としてあるようだが、中には犯罪を犯している違法奴隷商人とかがいる様なので、今回の被害者らしい者たちもその可能性がある。
そうじゃないとして、護送しているのであれば犯罪者を箱詰めした状態なので、下手すれば脱走して戦闘がカオスになる可能性が大きい。
何にせよ、関わりたくはないが‥‥‥前者にしろ後者にしろ、人が襲われているような事だしな。
普通ならば助けるが、生憎正義感の塊とかでもないし、義理もないこれに関しては正直やる気がでない。
とはいえ、どっちの可能性にしても後々より面倒そうなことになりかねないので、とりあえずナビリンの指示の元、その場へフレイたちは向かうのであった…‥‥
――――――――――
SIDEとある商人
「ひーはぁぁぁぁ!!襲え襲えぇぇぇ!!」
背後の方で、盗賊たちが色々と声を上げてはいるが、その証人は今、逃げるので必死であった。
幸いというか、囮というべき者たちがぎっしり馬車の中にいたので、盗賊たちはそちらに目がくらみ、商人たちに対してはついで処分しているようなので、今しか逃げる機会がないのだ。
「くそう!せっかくの商品がこうも奪われるとは最悪だ!!」
「まぁ良いだろう。今は自分たちの命が大切だからな!」
商人の仲間の一人が悔しそうな声を上げるが、今は自分の命が最も大事。
商品なんぞ、生きていればまた集める機会があるし、どうせ自分たちがやっていたのは法に物凄く反した違法商売なのは理解しているので、このような仕事をしている以上、一気に儲けを失ってしまうことなど予想が付くことなのだ。
その程度の覚悟では生き残れず、違法であるのならばいつでも自分以外をすべて切り捨てる覚悟が彼らには必要であった。
「ただまぁ、惜しむらくは非常に高値で売れそうな商品もあったのだが‥‥‥あんな奴らに全て奪われるのは悔やまれるな」
「どうせ売ったらそれ以降は関わらないし、ここで去るか、売って出会わなくなるかの違いだ!!遅かれ早かれ、奴らとは顔を合わせなくなるだろうし、今は逃げるしかねぇ!!」
商人たちはごちゃごちゃ言いつつ、それぞれ自分の体を優先して逃げていく。
下手すればあの盗賊たちのせいで足が付くかもしれないが、それならば末端を切り捨てればいい話しなので、どうでもいい。
今はただ、自分たちがいかにして逃げ延びた後に、再びこの商売を起こすのか考えることだけで、頭がいっぱいなのであった…‥‥。
…‥‥しかし、彼らは気が付かなかった。
この事態に関して、見ているのは盗賊たちと逃げている自分の仲間たちだけだと思っていたのだ。
けれども、他にもしっかり目撃している者たちがおり、その者たちは本来隠れて遠い場所からある者たちの監視をしていたのだが‥‥‥運悪く、その商人たちは彼らの目に入ってしまったのだ。
そして、素早く素性が調べ上げられていたのだが…‥‥‥その事実に気が付くことはなく、あっけない終わりを彼らが迎えたのだが、そんなことを今は知る由もなかったのであった。
なんとなく放ってはおけずに、かと言って気乗りもせずに向かったフレイたち。
その場の戦闘状況はさておき、対人戦の良い訓練にはなるかもしれないだろう。
とはいえ、面倒事も詰まっていそうな状況であった。
次回に続く!!
‥‥‥どこで見ているのかわからない。それがある人物の配下たち。こういう時にも儲け話になりそうであるのならば、率先して調べ上げるのです。




