調査のための念入りな準備
何事にも準備が必要である。
SIDEフレイ
「えっと、調査のために必要な道具の類は…‥‥とりあえず、メモ帳が必要なのはわかっているんだよな」
卒業試験『ゴルティックス山のふもとにできた新たなダンジョン調査』のために、出発を三日後に控えたフレイは、翌日すぐに準備を始めた。
ダンジョンを調査するために必要なものを探してみると、どうやらメモ帳が第1に挙げられるらしい。
人の記憶だけではあやふやなところがあり、その為にもしっかりとった記録媒体を必要とするようで、それ以外にもいろいろな用途に使えることから…‥‥
「‥‥‥どのメモ帳を使えと?」
「すごい量があるの」
フレイのつぶやきに対して、体の中から出て、一つ一つメモ帳を見ながら、フラウがそうつぶやいた。
用途が多すぎて、メモの専門店という物があったので、そこへ行ってみたのだが…‥‥想像以上に種類が多い。
防水、防火、防爆、インクにじみしないように加工、細工できないように特殊なインク付き、など、様々なものがあった。
まぁ、ダンジョン内部にはたまにマグマや湿地帯、爆発し続ける階層なんて言う物があるらしいので、必要な加工が施されていると思えば良いのだが、どう考えても前世のメモ帳以上に性能が高い。
というか、そんな状況でメモを取るような事はないと思うのだが…‥‥必要なものは必要なのだろう。
「っと、これが一番いいかな」
値段的におもお手頃でかつ、「防水・防火・防爆」の3つが付属されたシンプルなメモ帳をフレイは選んだ。
「他に何が良いかな?」
他にも何か必要なものがないのか考え、こういう時に頼りになるナビリンに、フレイは問いかけた。
【そうですね‥‥‥所持スキルにある「自然回復強化」のおかげで、死ぬようなことがなければ全快しますし、「炎魔法」によって野営時に火を起こすのが楽です。となれば、治療薬や火打石などはなくても良さそうですね】
となると、あとは水や食料の確保となるが…‥‥
「主様、水に関しては任せるの!」
「え?フラウって風の精霊だよね?水とかは出ないんじゃ……」
「大丈夫なの!私達精霊は自然そのものでもあるから、水源を見つけるのは簡単なの!」
えっへんと胸を張るフラウに、フレイは納得した。
風の精霊のフラウでも、水脈を見つける程度ならば簡単にできるそうなので、後はそこを己の力でぶち抜けばいい様だ。
ついでに、食料に関してだが…‥‥フラウは精霊で、一応食べることはできるが、基本的に必要ないそうなので問題なし。
ナビリンもスキルなので食料はいらず、結果としてフレイだけの食料を得ればいいのだが、割とそのへんの獣とかを狩れば解決しそうである。
まぁ、念には念を入れて冒険者用の携帯食料と言うのを購入するが…‥‥あまり大荷物になっても動きにくいので、最低限にしておく。
「こういう時に、某猫ロボポケットみたいなものがあればいいんだけどなぁ‥‥‥」
【あ、スキルにはそのような能力があるそうですね。それを「努力習得」で得られれば解決するのでは?】
「‥‥‥まじか」
まさかリアル四次元○ケットがスキルとしてあったのかよ。
いや、名称が異なるようだが‥‥‥‥手に入れば楽になりそうだし、何とかして機会があれば挑もうとフレイは心に誓うのであった。
【‥‥‥おや?】
ふと、その他にも色々と最低限必要なものを買っていた時に、ふとナビリンがつぶやいたのを聞こえた。
(どうしたの、ナビリン?)
【「探知機能」にて敵意が強い対象を感知。先ほどから後をつけているようです】
(…‥なるほど)
ナビリンの警告するような声に、フレイは理解した。
ナビリンの持つ「探知機能」は何かを探す時に役に立つのだが、他にも「敵意を持った相手」を感知する機能がある。
普通の嫉妬とかならまだしも、実害を及ぼそうとする相手程強く感知するらしく、どうやら近くにその実害を及ぼそうとする輩が潜んでいたらしい。
しかも、その数は十数名ほど…‥‥念のためにその反応を頭の中に開いてみてもらったら、中々やばそうな方々ばかりである。
【ここまでの敵意はどうやら何か妨害目的のために出された可能性あり、卒業試験に出るような輩ではなく、外部から雇われた暴漢たちだと予想できます】
ナビリンの予想は当たっていると思うが‥‥‥なんで俺が狙われるのだろうか?
人様の恨みを買うような事をした覚えなんて…‥‥あ、結構あったかも。
処分されたらしいでぶでぶ饅頭祭りに、入学早々絡んできてたのでたかいたかいをしたやつ、フラウのような美少女が仲間にいることを気に食わないやつ…‥‥など、たくさんいたかもしれない。
その中で、誰かが暴漢を雇っても不思議ではないが…‥‥なかなか面倒な事だ。
【人気のないところにおびき寄せ、戦うことを推奨いたします……が、暴力沙汰になれば面倒な可能性もあるので、一つ提案があります】
(ほう?)
ナビリンが何かを思いついたらしく、その内容をフレイは聞き…‥‥笑って噴き出しかけた。
(よし、それで行くか)
【了解、実行へ移しますので、私の指示に従ってください】
「なんか、すっごい悪い顔をしているように見えるの…‥‥」
フレイの表情を見て、フラウがそうつぶやいたが‥‥‥まぁ、間違ってもいないので否定はしない。
とにもかくにも、人に手を出そうとしたからには‥‥‥‥報いを受けさせないとね。
――――――――――
SIDE雇われた暴漢たち
「おい、あいつらが今回のターゲットなのか?」
「ああ、間違いないだろう」
フレイたちの後方に、こっそりと後をつけている者たちがいた。
彼らは色々あって雇われた暴漢たちであり、今回の目的はいま追跡している少年への暴行である。
ついでに彼の近くにいるという少女も好きにして良いそうであり、面白そうだと思って彼らは受けたのだが‥‥‥実際に見ると、ターゲットはまだ幼さそうな少年であり、その隣には美少女がいた。
年齢さを考えると加減したほうがいいのだろうが、逆に暴漢たちの嗜虐心が沸き上がり、そのうえ好きにできるらしい少女がかなりの上玉だったので、暴漢たちのやる気が上がった。
「どこで襲撃をかけるか?」
「そうだな‥‥‥どうやら都合のいいことに、近道でもする気なのか路地裏へ向かおうとしているな?そkドエやってしまおうか」
ばれないようにこっそりと追跡しつつ、見失わないようにすすむ暴漢たち。
……だが、彼らは気が付かなかった。
自分達にとって都合のいい人気のいない場所にどんどん進んできているのだが、それこそが誘導されているのだという事に。
人気のない場所という事は、ほとんど目撃者がいないという事。
それは暴漢者たちにとっては自分達の悪事を隠しやすくなるという事なのだが、その逆もしかり。
気が付いたときには、そこは既に誰もいないような場所であり、そして暴漢者たちはある事にも気が付いた。
「あれ!?あのターゲット共どこへ行った!?」
いつの間にか姿が消えうせており、暴漢者たちは驚愕した。
先ほどまで、確かにその姿を捕らえていたのに…‥‥この場へ来る前の曲がり角にて、突如として姿を消したのだ。
しかも、そこは高い壁がある行き止まりであり、登って逃げたということなどは考えられない。
「どこへ行きやがったぁ!!」
「さがせぇぇ!!」
見失った事実に驚きつつも、すぐに探そうと辺りを見渡す暴漢者たち。
そして、一歩踏み出したその時であった。
「‥‥‥炎魔法『踊り火』」
「ん?今お前何か言ったか?」
「え?何も言って…‥‥」
しゅぼっつ
「「え?」」
突然、腰回りが発火し、驚愕した暴漢者たち。
悲鳴を上げようとした次の瞬間には火が消えていたが、もっと大事なものが消えていた。
「うぉぉぉぃぃぃ!?」
「ず、ズボンがぁ燃えたぁ!?」
なんと、彼らのはいていたズボンが一気に燃え尽き、あっという間に下半身がさらされてしまったのである。
しかもご丁寧に全員が燃やされており、このまま誰かに見られれば確実に変態扱い間違い無しであった。
そのあまりにもひどい事実を理解し、あっけに取られて硬直した暴漢者たち。
……数分後に、目撃され、口をふさごうと追いかけて、人が多い所へ出てしまった彼らが社会的な死を迎えたのは言うまでもないのであった。
――――――――
SIDEフレイ
「精霊魔法の中で、風魔法で少し空に浮いただけで見失うとは思っていたけれども…‥‥うわぁ、ある意味ひどいことになっているな」
「主様の的確な魔法のコントロールはすごかったけど、直視しなくて良かったよ」
【肉体へのダメージよりも、精神的なダメージの方が効きますからね。現在の技量などを考えたうえでの案でしたが、成功したようです」
路地裏から出て、人込みにさりげなく混じり、社会的な死を迎えた暴漢者たちを見ながらフレイたちはそうつぶやいた。
単純に、フラウの力も借りて精霊魔法で宙に浮いて上に逃げ、そこから炎魔法を使っただけであったが‥‥‥思った以上に効果があり過ぎたようだ。
単純にフルボッコにすることもできたが、それでは意味がなさそうなので、ナビリンの案に乗った今回の撃退方法。
それはそれは、かなり深い心の傷を暴漢者たちに追わせてしまったようだが…‥‥まぁ、気にしないことにするのであった。
……不審者撃退、やりすぎたかな?
まぁ、抵抗されることを考えればこうなる事もわかっていたと思うが‥‥‥いや、わからないか。
何にせよ、まだまだ犠牲者は増えそうだ…‥‥主に相手側で。
次回に続く!!
……なお、他の案もあったが、それは流石にやばいと思って自粛した。むしろ実行されていたら、余計にやばかったかもなぁ。




