人気はあるんだけど
いよいよ春が近づいてきたなぁと、温かくなってきたことを喜ぶ一方で、花粉もひどくなってきたような、もうそろそろ黄砂の時期だったようなと、嫌な気分にもなっている。
SIDEフレイ
今、冒険者育成学園では、学園長セドリッカが設けた男女混合パーティイベントによって、あちこちで色々なパーティが出来ていた。
まぁ、中にはソロのままで行く人がいたりするのだが、それとは別に男女混合にできない人たちがあふれ出してきたのが問題になってきたようで‥‥‥‥
「お願いしますフラウさん!!どうにか俺たちのパーティへ来てください!!」
「むさくるしさ100%には耐えられないんです!!」
「どうか、どうか、おねげぇしますだぁ!!」
見た目は美少女だが、人間ではないフラウに対して、連日学園内の男子生徒たちが土下座して頼み込む光景が増えてきた。
だがしかし、その結果は既に分かり切っていた。
「んー、すいません、私は主様の精霊なので加入できないですの。主様自身もソロでしばらくはやっていくようですので、ごめんなさいですの」
申し訳なさそうにそう答えるフラウに対して、土下座していた男性陣はまるでムンクの叫びのように、絶望の表情を浮かべていた。
はっきり言われてしまうのは辛いだろうけれども、これも現実である。
そもそもフラウはフレイに憑いた風の精霊であり、基本的にフレイ中心で考えるらしく、全ての誘いを優しく、それでいてきっぱりと断り続けていた。
「あー‥‥‥なんか毎回告白と言うか、誘われるねフラウは」
「まぁ、面倒ですけれども別に良いですの。精霊の立場としては憑く相手に尽くせということですので、問題ないのですの」
勧誘現場から戻ってきたフラウに対して、フレイがそう言葉をかけると、彼女ははっきりとそう答えた。
【精霊は元々自由な存在でもありますからね。フレイと言う憑く相手を得た今、他の人間なんぞ目にも入らないという事でしょう】
なかなか辛辣なことをナビリンが言っているが‥‥‥男として彼らを考えると中々同情したくなるような気がした。
ま、この場合、相手は自分達での利用のみを考えていて、フラウ自身の意志を考えていないように見えたから当然とも言うべきか。
一応、精霊魔法をフレイは扱えるようにはなったが、基本的にフラウには自由行動を許している。
フレイ自身に取り憑いている彼女は、いつでもどこでも自由に出入りできるようになっているようで、時たまナビリンと会話もしているようだ。
ただ、ナビリンは「スキル」でもあるので、フラウのように姿はないらしい。あったとしたら、どんな姿なのかは気になるが‥‥‥まぁ、仲良くやれているのであれば問題ないだろう。
とにもかくにも、勧誘はそろそろ面倒くさいと言う意見は一致していた。
「とはいえ、もうすぐ卒業だしなぁ‥‥‥確かあとひと月ほどだったか?」
話題を変えて、フレイはそう口にした。
この学園、冒険者育成をする期間は数カ月ほどであり、数年かけるほどではない。
普通はさっさと数カ月ほどで卒業し、そこから冒険者として活動できるのである。‥‥‥中には数年以上かけて卒業する例がいるらしい。
卒業すらできず、何らかの事情で退学する輩もいるそうだが‥‥‥フレイは残りひと月ほどで卒業できる見込みとなっていた。
齢12歳、けれども精神的に年齢は上であり、卒業後もきちんとして冒険者として生きていく自信がある。
しかし、卒業するには卒業試験があり‥‥‥その内容は受ける時まで分からない。
「出来れば楽な試験が良いんだけどなぁ」
【世の中そう都合よくいきますかね?】
フレイのつぶやきに、ナビリンがどこか絶対に平穏には済まないだろうなと言う思いを感じさせる言葉で答えるのであった。
……真っ向から否定できないのが悲しい。初めての経験をするたびに、何かに巻き込まれているような気がするからなぁ‥‥‥。
―――――――――
SIDEセドリッカ
「ふむふむぅ、そうかそうか、動き出してくれたかぁ」
その頃、学園長室にて、学園長セドリッカは配下たちからの報告を聞き、面白そうにそう言葉を漏らした。
配下たちに探らせていたのは、フレイの身辺。
せっかくこの学園から精霊憑きであり、実力も高く、将来的に高みを目指せそうな冒険者がでるかもしれないのに、その邪魔をする輩がいるのを確認できたので、動向を探っていたのだが…‥‥予想よりも少々早く、その輩たちが動き出したという報告が入ったのだ。
まぁ、精霊の部分で価値を見出している物や、もしくは色々と規格外なところがあるので純粋にその力を狙う所の仕業であろうが‥‥‥‥将来有望な者を潰させるわけにはいかないのである。
「有名になってくれればこの学園のいい広告塔にもなるし、色々と稼げる手段ができるのだし……それを妨害するような馬鹿たちには、きついお仕置きや搾り取れるだけの金をとってあげないとねぇ」
そうつぶやきながら、悪魔ですら恐怖するような笑みを浮かべ、学園長は手早く動き出す。
……とは言っても、学園長がすべてに手を下すわけではない。
流石にそんなことをしたら赤字になる可能性もあるし、出費を最小限にして、なおかつ得るものを大きくなるように、細かな調整を行う。
何にせよ、久しぶりに大儲けできそうな予感に、学園長は笑みを浮かべるのであった。
「なんにせよ、将来有望な者を妨害するなんて、愚の骨頂だよぅ。投資をして、儲けさせてもらうのが良いのに、何でそんな簡単な事を皆やらないのかなぁ?」
思わず疑問の声を漏らしたが、学園長の事をよく知る者たちがそばにいたらツッコミを入れたであろう。
「そうやすやすと、儲けられるようなやつがいるかぁぁぁぁぁ!!」、と。
なお、実は将来的な大投資計画もあるのだが‥‥‥‥それはまた、別のお話である。
‥
そろそろ馬鹿が動き出すようだが、結果が見えてしまっているようだ。
精霊魔法を得たフレイにとっては…‥‥少なくとも苦戦はしないだろうけれども、面倒なことである。
何にせよ、用心して損は無さそうだ。
次回に続く!!
……マスクして、くしゃみして真っ赤に染まる時があったりする。乾燥しているのか、はたまたかみすぎか……鼻水を一瞬で消し去る魔法が欲しいと思う今日この頃であった。




