最悪の転生先
リメイクして気が付いたが、転生前に出会った女神酷いな。
美しい容姿をしていても、その中身が伴わないことってあるんだろうなぁ。
――――――目が覚めると、俺は人間の赤ん坊のようだった。
良かった、転生先が成長すれば人と会話ができるやつでよかった。よくファンタジーとかにあるようなエルフとかならまだしも、オークやゴブリンだったら絶対最悪だろ。
いや、それはそれで案外悪くないかもしれないが‥‥‥どう考えても、お約束的に人にやられる未来が見えるのはちょっとねぇ。
と、考えていた俺はふと気が付いた。
(…‥‥なんでドラゴンが大勢いる中にいるんだよ!)
そう、俺は今まさにドラゴンが大勢いる中にいた。
どう見たって、西洋とか漫画とかアニメで見る様なドラゴンの団体様のど真ん中で、じっと上から見られているんだけど。
どうも周囲の状況から見て、バスケットか何かのかごに入れられている状態で産着を着せられているところを見ると、何者かにこの場に持ってこられたか、もしくは捨てられたのか‥‥・。
(でもこの転生先は最悪じゃん!!)
どう見たって、相手は圧倒的捕食者。
こんな生まれて間もない俺は、ドラゴンたちにとっては生きのいい生肉なんだろうな‥‥‥。
しくしくと心で涙を流し、絶望を味わう。
これで死んだら、またあの女神に会うだろうから、そのときに訴えてやると覚悟を決めた‥‥‥その時であった。
じっと見ていたドラゴンたちが道を開け、誰かが歩いてきた。
「$&$(&$&(&$%?」
見れば、髪の毛が銀髪で黒目の、このドラゴンたちと同種の気配を持つ、青年のような感じだった。
とはいえ、このドラゴンの群れで平然といる時点で、この周囲の者たちよりも圧倒的に強そうだし、人間のように見えるとはいえ、どう考えてもとんでもない存在にしか見えない。
【------『言語翻訳』を発動します】
(ん?)
ふと、何かが頭の中によぎった。
こう、機械的な音声だったような……
「‥‥‥・$&($&$(&、まだ赤子ではないか。しかも、この魔力・・・人間はいったい何を思ってこの赤子を捨てたのであろう」
(!?)
先ほどまで分からない言葉であったが、突然はっきりと聞こえるようになった。
いや、日本語を話しているわけでもなさそうだ。どうも自分が、この言葉を理解できるようになっただけのようである。
(『言語翻訳』とやらのおかげか?)
【Yes、その通りです】
と、疑問に思ったら先ほどの機械音のような声が頭の中に響いた。
いや、機械音というよりもはっきりとした人の声というべきか?
(この声は一体何者なんだ?)
【あの屑女神ごほん、女神さまに設定されて貴方につけられた‥‥‥まぁ、簡単にいえばナビゲーターみたいなものです】
(ナビゲーター?)
【Yes、今後はお好きなように読んでいただいても構いません】
じゃぁ、適当にナビリンとでも名付けるか。
「ん?これは…‥‥」
ふと、俺がナビリンと話していると、何かに気が付いたのか、そばにいた青年がつぶやく。
「‥‥‥なるほど、あの女神の手によって落ちてきたのか」
(おお!?どうもこの人分かってくれているのか!?)
【この方は人ではありません。あの屑女神様よりもはるかに上の存在、この世界とは別の世界にいるはずの『神龍帝』です】
ナビリンいわく、どうもこの目の前の青年は、異世界のドラゴンの中でも、神そのモノともいえるほどとんでもない存在らしい。
なぜこの場にいるのかと言えば、このドラゴン自体が異世界を渡れるそうで、偶然にもこの場に出くわしたのだとか。
……つくづくとんでもないところに転生したというか、不幸中の幸いというべきだろうか。
「ふむ、転生早々こんなドラゴンの巣に放り込まれるとは難儀な奴だな」
どうもこちらの事情を察してくれるのか、同情したような目で見てくれる神龍帝。
話が分かる人(?)の様で、ほっとした。
「とはいえ、生憎わしはこの世界の者とは違うからのぅ…‥‥そうじゃ」
考えこむようにして、ぽんっと手を打って思いついたようなそぶりを見せる。
「おい、この辺りのドラゴン共!この赤子を育てられるものがいたらわしの前に来い!」
(んんん?)
おいちょっと待て、神龍帝さん。もしや貴方、この辺りのドラゴンに俺の世話をさせる気なのか?
と、ツッコミを入れられるわけもなく、少し経って周辺にいたドラゴンのうち、ひときわ真っ赤に燃えるように紅いドラゴンが前に進み出てきた。
「ほう、この世界での‥‥‥炎龍帝か。まさかおぬしが来るとは思わなかったわ」
炎龍帝と呼ばれたそのドラゴンは確かにその名にふさわしいほど美しい紅い輝きを放つ見た目をしていて、周辺のドラゴンよりも圧倒的な威圧感を放っていた。
「わたしめでよければ、異界のドラゴンの中でもひときわ強大な貴方様の命令に従い、その赤子を責任もって育て上げましょう。‥‥‥しかし、その赤子は貴方様のような方が気に掛けるほどのものでしょうか?」
「ああ、それほどのものになると思う。だが、このまま見捨てればそれこそ損失というか、もったいない。何よりも…‥‥お主としては、いや、この世界のドラゴンとしては、己の血沸き肉躍るほどの実力を持った者を欲するだろう?」
頭を下げながら尋ねる炎龍帝というドラゴンに対して、ニヤリと笑みを浮かべながら神龍帝がそう答えた。
「なるほど‥‥‥強者が欲しければ、育て上げて見るべきと?」
「そういうことだ」
神龍帝の言葉に、炎龍帝ははっと気が付かされたような表情になる。
……何やら物騒な会話をしているけど、嫌な予感がする。
「ならば、命に代えてでもこの赤子を育て上げましょう。そして強靭に育て上げ、血沸き肉躍るような強者にしたてましょう」
神龍帝に深々と頭を下げ、炎龍帝はそう告げるのであった。
とりあえず俺はドラゴンに育てられるようだが、ものすごく嫌な予感が的中したらしい。
強者にするとか言うが‥‥‥ああ、これはスパルタ教育されるな。
転生早々、どうやら絶望の味を俺は知ってしまったようだ。畜生、泣きたいけど赤子だからおぎゃぁおぎゃかとしか言えな……ん?待てよ?
赤子=世話必要=授乳、おむつ替えなどがあるってことに‥‥‥生前の年齢がいくつだったかはわからないけれども、とりあえず現在の精神年齢でやられたらきついんだが!?
というか、俺無事に生き延びれるのかよ?
人生、早々にしてハードモード突入。
果たして、彼はこの状況に耐えて生き延びることができるのだろうか?
……良く転生物とかで、主人公がある程度成長してから記憶が戻る事があるのは、この最初の赤ちゃん時代が関係しているのかな?精神的にそのままだと辛い感じもするからなぁ。
あ、神龍帝は作者の作品からのゲスト的な存在です。時系列的にはかなり年月が経っているし、別世界的な感じだが‥‥‥色々と関わりを持たせたい。主に厄介事の方面でね。