気が付いたときには、遅いのである
この主人公、今までで一番ついていないかもしれない。
SIDEフレイ
…‥‥検査官が星になってから三十分ほど経過し、次はどうやら魔法に関する検査が行われるらしい。
この検査では魔法に必要なスキルやその他のものがあるかなどを調べるそうだが…‥‥
「なんでここまで距離を取られるんだろうか‥‥‥」
【自業自得なのでは?】
フレイのつぶやきに、ナビリンはそう答える。
検査官を吹っ飛ばしたからなぁ‥‥‥‥この魔法に関する検査でも、絶対に何かをやらかすだろうと思われているようで、遠巻きに見られているのである。
いやまぁ、腕力だけならば炎龍帝との生活で身に付けていったものだから、魔法に関しては大丈夫なはずだ。
【‥‥‥龍魔法を使用できますよ?】
(それはノーカンで)
ぽつりとナビリンがつぶやくが、そんな使用方法が分かっていない魔法をカウントするのは間違っていると思う。
ドラゴンのブレスなどが可能になる魔法で、名づけの儀式を経て使用可能になるらしいけれどさ…‥‥ここまでの間に、どう考えて異常なものにしか思えないから、詳細を聞こうとしたけど、怖くて聞けないんだよね。
だから、出来れば別のものができたらいいんだけどなぁ…‥‥
【ま、『鑑定機能』ですでに結果は見えていますから、あとは心しておくだけですよ】
(‥‥‥あ)
ナビリンのその言葉に、俺はふと気が付いた。
そう言われてみれば、使用できるとか言っていたけど、自分に鑑定したことはなく、見ていなかったのだ。
とはいえ、今更見るのは怖いし…‥‥この検査を経て、後でしっかり確認したほうが良いかもな。
うん、「隠蔽」や「黙秘」などといったスキルが合って、自分の状態を隠せていたらそれはそれで嬉しいなぁ。
「次、フレイ!」
「あ、はい」
この魔法に関する検査を担当する検査官に名前を呼ばれ、フレイは前へ出た。
そこにあったのは、物々しい……いや、思いっきり禍々しい紙であった。
どうも説明によれば、この紙は触れた者がもつ能力やスキルと言ったものを開示する『看破紙』と呼ばれるもので、その内容は触れた本人にしか見えないそうだ。
自己申告で記録するようだけど…‥‥まずいものがあったら隠しても良いということなのだろう。
いやな予感がしつつも、その紙が手渡される。
すると、触れた途端にじわじわと、あぶり出しのごとく文字が浮き上がり始めた。
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名前:フレイ
種族:人間(だよね?)
年齢:12歳
性別:男性
所持スキル:「言語翻訳」、「魔力解放」、「龍魔法」、「炎魔法」、「努力取得」、「自然回復強化」、「俊敏」、「龍の怪力 (プチ)」、「炎龍帝のブレス (プチ)」、「炎龍帝の咆哮 (プチ)」、「ナビリン(別枠ゆえに、詳細不明)」
称号:「転生者」、「薄幸傾向」、「炎龍帝の養子・討伐予定者」、「魔人予定者」
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わかっていた部分はあったけれどさ‥‥‥なんか酷いのが混じっているような。
【『鑑定機能』を使用しますか?】
(ああ、詳しく頼む)
こういう時に、素早くナビリンに確認をとれるのはいいが‥‥‥‥詳細を見て、後悔した。
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「炎魔法」:「魔法」のスキルから派生し、火に特化、いや、それ以上の炎に特化したスキル。「火魔法」の上位互換である。ここから別の魔法も扱えるようにはなるが、今はまだ炎に関する魔法しか扱えない。
「自然回復強化」:大怪我を負っても、魔法を使い過ぎて体力や魔力を消費しても、常人よりも圧倒的な回復力をもたらすスキル。常時発動。流石二頭が潰れるなどと言った最悪の事態での回復は不可能に近いが、軽い骨折程度であれば30分で自然治癒する。曲がって繋がる事もなく、正しい状態になる。
「俊敏」:素早さが増すスキル。常時発動。「俊足」の上位のスキルであり、まだまだその上のスキルの存在が確認されている。ただし、まだまだ炎龍帝にはかなわない速度。
「龍の怪力 (プチ)」:人間の身であったが、長い間炎龍帝と過ごす間に自然と身についていたスキル。怪力を誇るが、流石に本家本元のドラゴン並みにはならない。ただし、鋼鉄程度であれば簡単に曲げらう事が可能で、意志によって自然と発動する。
「炎龍帝のブレス (プチ)」:炎龍帝クラスは無理だが、火吹き芸のように見える炎のブレスがはけるようになる。取得原因は炎龍帝との戦闘時に何度も治癒のブレスを喰らったことである。一応、攻撃の炎のブレスだけではなく、治療が可能な治癒のブレスにもなる。
「炎龍帝の咆哮 (プチ)」:炎龍帝より弱いが、軽い威圧を与えることができるスキル。並みのモンスターであれば、動きを止めることが可能。ただし、効かないものもいるので要注意。
「ナビリン(別枠ゆえに、詳細不明)」:ナビゲーションシステム。転生時に今は左遷された女神によって付けられたスキルのような物。あやふやなのは、名付けられた際に明確な意思を持ったために、スキルの定義をやや揺るがしているからである。「探知機能」、「注意警報」、「鑑定能力」などの所持を確認。「鑑定能力」に限っては「鑑定機能」という表示の仕方もある。
「転生者」:どこか違う世界の記憶を持った者に付く称号。ただし、あくまで称号であり、別にものすごい効果があるわけでもない。たまに勘違いをして、国を揺るがす大馬鹿野郎や英雄がいる。
「薄幸傾向」:悲しいほどついていないことが多い人につく称号。この称号が付くと、周囲から同情されやすくなる。
「炎龍帝の養子・討伐予定者」:炎龍帝に育て上げられ、将来的に討伐へ向かうことが運命づけられた者二付く称号。討伐に成功すれば「予定」部分が消去される。
「魔人予定者」:ちょっとアウト、人間やめてきている者につく警告のための称号。やり過ぎれば種族が「人間(?)」から「魔人」へ変化してしまうので、やめたくなければ自重を心掛けるべきである・・・・・が、発覚している時点で遅かったりする。
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……色々とツッコミを入れたいが、まずは一つ言わせてもらおう。
スキルの大半、炎龍帝が原因なんですが。
【炎龍帝との生活は、人間を辞める修行になっていたようです】
(なんでそうなるの!?)
これはひどいというか、何というか…‥‥うん、隠蔽したい。
「努力取得」という、努力によってスキルを獲得できることがあるようだし、今後隠蔽できるようなスキルの取得に励むか。
まぁ、今はとりあえずこの内容を馬鹿正直に言えば大変なのが目に見えている。
ゆえに、フレイは「炎魔法」などまだ一般的な部分は報告したが、まずいものにかんしては報告しないで良いということから、そこは秘匿するのであった。
…‥‥というか、最後の称号が明らかに不吉なんだけど。発覚時には遅いってどういうことなんだよ。
【検査官を星にしたのが良い例ではないですかね?】
ナビリンのそのツッコミは、聞かなかったことにしよう…‥‥
どう考えてもやばいものの目白押しであった。
秘匿はするが‥‥‥‥いつかはバレる。
ゆえに、バレても大丈夫なように、冒険者として精進して、いつでもどうにかできるようにしようと、改めて心掛けるのであった。
次回に続く!!
……さらっと、あの転生させた神についての情報があった。左遷って、やっぱりか…‥‥




