守銭奴というか、なんというか
守銭奴ともちがうかなこれ?
うーん、どう言うのが正しいのか迷走し始めたな…‥‥
SIDEフレイ
――――――冒険者育成学園ヘルドーン。
その学園の学園長室にて、フレイたちは学園長に報告していた。
「‥‥‥なるほどぅ。つまり金づるたちごふんげふん、屑野郎たちを、その少年‥‥‥君達が特別推薦枠で入学させようとしているフレイだったかぁ。その子が全滅させて、今こうして縛り上げられているというわけだねぇ」
なにやら本音が出ていたような気がしつつも、学園長とやらは椅子に座りながら、フレイたちの方へ向いた。
その姿は…‥‥なんというか、あれだ。人形劇とかの黒子みたいに全身真っ黒の服装で、頭には黒い袋をかぶっており、目の穴しか開いていないので表情が読めない。
右手にはオウムのような人形を持ち、それで腹話術をして声を出しているけど‥‥‥なんだろう、この不振極まりなさすぎる怪しい人は。
ちなみに、左手の方には黄色いヒトデの人形を持っている。某天空の王子かな?
何にせよ、目の前にいる人形劇の黒子のような人こそ、この学園の学園長セドリッカと言うそうだ。
「しかしねぇ、仮にもこの学園に留年し続けて、微妙な実力を持っている自称『黄金騎士団』、有名な名として『でぶでぶウルトラ饅頭祭り』たちを倒すとは、確かに実力はあるねぇ」
「なんか呼び方が変わっていませんかね?ウルトラと言うのは付いていなかったような」
「ふふふふ、一応他にも『金づる団』、『雑魚軍団』、『盗賊モドキの屑やろう共』、『ストレス発散相手』などとあったからねぇ。混ざったかなぁ?」
そんなにもあったのかよ。と言うか、金づる団って絶対この学園長が付けただろう。
なんとなくこの短い応答だけで、フレイは目の前の人物がどの様な人なのか、大体把握してしまった。
「まぁ、せっかくの金づるたちをそのまま縛るのはどうかなぁ?どうせあと数日後には強制退学が決定していたからぁ、このまま自主退学をしてくれれば楽だったが…‥‥ううむ、もうちょっと金を搾り取りたいな」
学園長は目を縛られているでぶでぶ饅頭祭りのタブゥオン達に向けつつ、そうつぶやく。
オーバーキル気味なのに、さらに金を搾取するのか。いやまぁ、オーバーキルをしたのは自分だが。
とにもかくにも、学園長がパチッと指を鳴らすと、どこからともかく黒づくめのサングラスをあっけた人たちが現れ、でぶでぶ饅頭祭りたちはそのまま連れていかれてしまった。
どうなるかはわからないが…‥‥ただでは済まないだろうな。なんかご愁傷様。
心の中でフレイが手を合わせつつ、本題へ戻る。
「ま、あいつらの処分はこちらでやっておくがぁ‥…確か卒業試験として『春風が吹く』にはダンジョン調査を頼んでいたはずなのに、どうしてここへ報告しに来て、ついでに特別推薦枠としてその少年を選んだのか、詳しい事情を聞きたいねぇ」
再び学園長セドリッカはフレイたちの方へ向いて、そう告げるのであった。
サブローたちが説明をし終え、その説明を聞いた学園長はしばし考えこむようなそぶりを見せた。
「なるほど‥‥‥あのダンジョンにドラゴンがねぇ。その素材って金になりそうだから狩ってこれなかったかなぁ?」
「無理です。流石にあれはわたしたちの手に負えるようなものではありませんでしたからね」
なにやら無茶な要求をした学園長に対して、サブローははっきりと答えた。
「ほほぅ、残念残念だぁ。とはいえ、いることは分かっているのならば、今のうちに何かしらの対応策でも取っておくべきかなぁ?具体的には観光資源にでもなるかもなぁ」
ああ、この学園長、何が何でも稼ぎたいのだろうか。
サブローたちが言っていた「学園長は守銭奴」と言う意味を、フレイはなんとなく理解する、
「それでぇ、ダンジョンへ向かう途中に遭遇・同行してもらったのが、そのフレイって少年かぁ」
フレイの方に目を向けた学園長に対して、その視線に何か探るような物を感じ、思わずフレイは少し後ずさりをした。
【‥‥‥警告、『鑑定』に関するマジックアイテム、もしくは魔法の使用を確認】
(!?)
ナビリンの言葉に、フレイは驚愕する。
「おや?何をしたのかわかったという表情だねぇ。安心しな、君の情報はどうも見れないというか、ものすごいガードがかかっているから見れなかったさぁ」
と、どうやらフレイが気が付いたことを理解したのか、学園長がそう口にした。
「学園長!?いきなり何をやっているんですか?」
「だってぇ、この少年についての君らの話を聞くと、いろいろと面白そうだもぉん。ハイウルフの殲滅など、普通にこの歳で出来なさそうなのにやってくれたということはぁ、それだけ何かやばいスキルか力がるということになるしねぇ。ま、どうもこちらの方が格下だったがゆえに、出来なかったようだけどねぇ」
サブローの言葉に対して、ひょうひょうっと悪びれもせずに学園長は白状した。
【鑑定不能原因、学園長が告げたとおりフレイの方が能力的には格上だったからのようです。ただし、かなりきわどいところにあるため、目の前の人物の鑑定をするのはこちらも難しいと思われます】
ナビリンの言葉を聞き、鑑定返しは難しい様だとフレイは思う。
と言うか、絶対にやったらやったで不味いだろうな。金をせびるとか絶対してきそうだ。
とにもかくにも、この学園長は油断できるような相手ではなさそうだ。
「しかしまぁ、それだけ面白そうな子だと、将来的に稼ぎも大きそうだしねぇ。特別推薦枠で入れてあげれば、卒業後に名を上げて、この学園に入学希望者が増えて、馬鹿共からちょっとだけ融通するふりをして賄賂をもらいつつ、金を搾り取ってあげて世の中の厳しさを教えられそうだよねぇ」
……違った。これ、ただのたちが悪い守銭奴だ。
この学園長はもはや日常茶飯事なのか、サブローたちが頭を抱えるようなそぶりを見せる。
「はぁ、この人はもうずっとこうらしいからなぁ…‥」
「金に関しえいえば天才的ゆえにいろいろやっているらしいけれども……これじゃねぇ」
物凄く苦労していそうな声がしたが、本当に大丈夫なのかこの学園。
何にせよ、とりあえずフレイが特別推薦枠として入学することは問題ないようで、ダンジョンの件も学園長の方で何とかするということになるのであった。
「ああでも、あの自称『黄金騎士団』たちは退学決定だから、今後学園内で会うことはないよぉ。ただまぁ、逆恨みして卒業試験『最弱屑雑魚盗賊団』として出るかもしれないなぁ」
「その前にしかるべきところに引き渡したほうが良いような……」
「いやいやぁ、ある程度懸賞金が付いている方がおいしいからねぇ。捕らえたときに、手間賃を取ることができたりするから、いい小遣い稼ぎ野郎になってくれるならばいいんだよぉ。どうせ雑魚だしぃ」
……ああ、あの饅頭祭り達、完全にこの学園長の金づる決定したな。
将来がどうなるかはわからないが、少なくとも犯罪者となってしまえばこの学園長の思い通りになってしまうのであろう。
なんとなく、この学園長には逆らわないほうが良いなと、フレイは思うのであった。
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SIDE学園長セドリッカ
……フレイたちの退出後、セドリッカは椅子に背を持たれかける。
「にしてもぅ、ダンジョンにドラゴンかぁ。定着していれば不味いけど観光資源になりそうだし、馬鹿をやらかさない限り大丈夫だろうなぁ」
頭の中でどこをどうすれば被害もなく、いかに儲けられるか考えるセドリッカ。
彼、いや彼女なのかは誰もわからないのだが、ただ一つだけ言えるのは、本格的な守銭奴であるということ。
悪い守銭奴と言うわけではないが、儲けられるときは儲けさせてもらう主義なのである。
たとえそれが人であろうとモンスターであろうと、儲けられる対象であれば、隔てなく関わりを持つのが、セドリッカの考えでもあった。
「‥‥‥にしても、あの少年フレイだったかなぁ?あの子、絶対に何か色々と隠しているよねぇ」
儲け話を一旦置いて、学園長は今日来たパーティ「春風が吹く」が推薦枠として連れてきた少年の姿を思い出す。
齢12歳ほどであり、まだ年相応の若さを持つ少年であるがその精神はそれではないことを、セドリッカは見ぬいていた。
かと言って、成熟し切っているわけでもなく、いわばあやふやな状態と言ったところであろうか。
ただ、それでも燃えたぎるような炎のような強さを持つようで、只者ではないと、学園長は判断した。
セドリッカが持つスキル「鑑定」でさえも鑑定不能ということになった事から、鑑定できないような物を付けていたか、もしくはセドリッカ以上の力を持っていたか、どうなのかはわからない。
けれども、一つだけ言えることは…‥‥学園に入れても損はなく、むしろ短い期間で卒業させて、冒険者として一旗揚げさせたら物凄い逸材になりそうだということである。
「くくくくくくぅ、久しぶりにいい人材を見つけたというか、ものすごい儲け話の予感だぁ。あの子が無事に、そして早く卒業できるようにしてみようかなぁ?」
所見の乱用とも言えるかもしれないが、儲けられるのであれば関係ない。
今ここに、守銭奴が本領を発揮させ、よりいい儲け話を作ろうと企み始めるのであった‥‥‥‥
次回から、短い(?)学園生活を始める感じ。
それにしても、なんか目を付けられているなぁ…‥‥この先大丈夫かな?
不安がたっぷりありつつも、次回に続く!!
……なお、学園長は悪人ではないので、一応それなりの分別を付けております。人売るような事や成績操作はそんなにしないけれども…‥‥悪人が相手ならば容赦なく金を搾取する感じです。味方でも金をとります。
…‥‥ただの最低な人じゃないかな?




